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飯田の妻が去ると、岩崎はすぐさま別のことに、気を取られた。
なにせ今日は日華利が遊びに来るのだから。
北山が山から帰ってくると、やけに目つきの鋭い男が家の前に立っていた。
明らかに北山が帰ってくるのを、そこで待っていたようだ。
――この人は、確か……。
思い出した。
隣のブロックの木藤と言う男だ。
聞いた話によると、飼っていた秋田犬が目玉だけを残していなくなったとか。
北山は、自分が脳裏に浮かべた目玉、という単語に反応した。
――目玉? ……目玉。
目玉に関して、何か大切なことを忘れているような、そんな気がして仕方がなかった。
北山が考えていると、木藤が近づき声をかけてきた。
「こんばんは」
「こんばんは」
「今日も猪狩りですか?」
「ええ、そうですけど」
「ここのところ、毎日行ってますね」
「ええ」
――なんだ、こいつは。いったい何故そんなことを知っている。
「ところで」
「なんですか?」
「山の中で何か見ませんでしたか?」
「何かとは?」
「でかいやつです」
「でかいやつ?」




