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それを斜め上から見下ろす形になるのだが、高いところから見ても木々の陰となって、遊歩道が見えるのはその一部である。


そこを誰かが歩いているのだ。


遊歩道だから誰かが歩いていても、少しもおかしくはない。


現に下谷はそんなものは何度となく見ている。


ただ今回は歩いている人物とその行動が、下谷の興味を引いた。


歩いているのは女一人。


神城だ。


二十ヶ月近く妊娠していたということで、下谷の近所では一番の有名人である。


下谷も一度だけ見かけたことがあるが、美人であることとそれ以上に、誰かが言っていたがそこに皮膚や筋肉があるとはとても思えないほどに固まった顔が強く印象に残った女だった。


下谷が見ていると、神城が不意に立ち止まり、両手を前方に広げて空を見上げた。


遠目なのでよくわからなかったが、何かに話しかけているように下谷には見えた。


もちろん神城が見上げている方向には空しかなく、誰かがいるわけがない。


下谷も思わず神城が見ているほうを見たが、やはり空しかなかった。


なのに神城は、ずっと空に向かって話しかけているのだ。


その姿はまるで、舞台で歌うオペラ歌手のようにも見える。


そして神城の表情はと言うと、これも遠目なのではっきりと見たとは言い切れないが、いつもの完璧なまでの無表情とは違い、喜びとか幸せと言ったものに満ち溢れているように見えた。


――いったい、何をやっているんだ、あの女は。


神城はずいぶんと長い間そうしていたが、やがて手を下ろした。


そしてくるりと反転すると、もと来た道を引き返して行った。

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