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首輪と鎖だけが残されていた。
――ええっ?
無意識のうちに庭を見渡していた木藤が、あるものに目を止めた。
それは首輪のそばに落ちていた。
二つあるそれは手にとってみると、表面がねちゃねちゃした小さく柔らかい球体だった。
――なんだ、これは?
しばらく見ていた木藤の全身に衝撃が走った。
――こっ、これは……。
それはどう見ても、見慣れた金剛の二つの目玉だったのだ。
通報を受けて若い警官がやって来た。
警官は木藤から事務的に一通りの話を聞いた後、言った。
「そうですか。わかりました。これから署に帰り、対応します」
そして帰って行った。
木藤はその頼りない後ろ姿を見て、思った。
犬一匹のことで、どうせ何もしないのだろう、と。
ゆかりが仕事から帰ってくると、玄関でこよりが待っていて、ゆかりに抱きついてきた。
まだ三歳にもならない甘えたい盛りの女の子だが、玄関で母親を待っているのは珍しかった。
「どうしたの、こより」
ゆかりがそう聞くと、こよりが言った。
「おばけが、いたの」




