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おっさん、ブチ切れる。

栄えた街の灯りが、夜の空から星の光を奪っている。

薄雲がさしたような濃いグレーの夜空を、一筋の光が線を引いて流れて行った。


「ん? 流れ星か?」


白スーツのヤクザが空を見上げて呟いた。


突然、天空に眩く輝く小さな太陽が現れる。

光は勢いを増していく。


「な、なんだ、あれは!?」

「アニキ、め、目がやられました!」







アキラは、栄えた街の上空を旋回していた。


「シェリルが言っていた図書館はアレっぽいな」


人差し指を眉間に当て、念じながら図書館を凝視する。

アキラの視界に赤外線画像のような人影が、3人分浮き上がった。


勇者・アキラのスキル『ストーカー』は、マーキング済みの女の居場所を決して見逃さない。


「あそこか。深さも問題ないな」


勇者・アキラのスキルや必殺技を、浮遊霊のおっさんはすべて受け継いでいた。

脳内にバックアップされていたアキラの記憶と一緒に。


懐から出したサングラスをかけるアキラ。

そして、叫んだ。


「シャイニングブレード!」


アキラの右掌に握られていた剣が、眩い光を激しく放ち始める。

おっさんはアキラの失敗から学んでいた。

シャイニングブレードを使うには、サングラスが必要だったのだ。


「行くぞ! シャイニングアタック!!」







夜空を真昼のように照らした小さな太陽は、天空から高速で落下を始めた。


「くっ、何が起こっていやがるんだ?!」


下から見上げるヤクザには分かりにくいが、光はこちらに向かっているように感じていた。


「お前ら、逃げろ!」


ヤクザにだけは見えている。彼もサングラスをつけていたのだ。


「む、無理だ。目を開けられねぇ」

「これが神の怒りか!?」

「ええい。うろたえるでないわ!」


ヤクザの周囲には、魔王・サカキの手下どもだけではなく、勇者・ロッキーのパーティー、賢者・ギンガの弟子たちが集まっている。

邪神復活を邪魔する者が現れた時のために、図書館玄関前の広場で警備を行っていたのだ。


ヤクザは限界を悟った。すでに、逃げるタイミングも失っている。

高速で距離を縮めた光によって、あたり一面が真っ白になっていた。


「これまでか……」


図書館の屋根の上、激突寸前の小さな太陽から、空間を斬り裂くように、より強い十字の閃光が現れ広がっていく。


「くっそ」


ヤクザは、十字の閃光に斬り裂かれる。

図書館の建物、警備をしていた全ての仲間たちが光に分解されるように消失していった。

そして、ヤクザの姿も意識もろともに融けていく。


「ボス、逃げて……」







「この女たちは、全員が邪神に肉体ごと吸収されるんだったな?」


勇者・ロッキーは、瞬きする程度の時間だけ、逡巡を相貌に表してしまう。


「ええ。このような残虐非道、勇者として抵抗を感じていたりします?」


ロッキーの迷いを感じ取った賢者・ギンガが問うた。


「ふっ。すまん。今更だな。神に選ばれた勇者が、神に反逆の狼煙をあげるんだ。すでに俺に戻る場所などありはしない」


ロッキーは、迷いを振り払うように力強く語った。


「ふん。貴様こそ、人でありながら神々を超えようとする者の頂点のひとり・賢者ではないか。同じ人間を犠牲にすることに、抵抗はあろうというもの」


魔王・サカキの言葉に、ギンガは答える。


「人間の進化に犠牲は付き物です。小惑星の衝突で失われる以前の世界では、『神々は死んだ』と言われていた。神や魔神など、必要ないんですよ」


「ふん。我も同感だな。神と魔神の争いに巻き込まれるのは、もう十分だ。この世界をもう一度白紙に戻してやろうではないか」


「ああ、こんな哀しい世界は終わった方がいい。もう一度、世界を人の手に取り戻そう」


ロッキーたちは、薄膜の中で眠る邪神へと視線を向けた。


伝承では、ケルベロスは、神々ごと世界を七日間で焼き払った後、再び眠りにつくのだという。


彼らには、世界に絶望する理由がある。

今更、それを詳細に語ることに意味を感じる者はいない。


イケメンなのに短小包茎。魔術学院での便所飯。瘴気で誤魔化しているワキガ。


世界を滅ぼす理由は十分だった。




「ねぇ? もしも、もしもだよ。この中に処女じゃない女の子が紛れていたら、どうなるの?」


シャルは、ロッキーたちから目線をそらしながら聞いた。

それにギンガが答える。


「残念だけど不発だね。何も起こらない。でも、全員調べてある。大丈夫さ」

「し、調べるってどうやって?」

「綿密な身辺調査と、聞き取りだね」


「そうだ。君たちは処女厨のパーティーだったし、そこの女の子たちは神官だからな」


ロッキーが武装神官の少女を指差した。

一人の神官が反論する。


「むろん、私たちは処女です。ですが、あなたたちの目論見を神が許すはずはありません!」


その神官は、他の神官たちに同意を求めて目線を向ける。

応えるように頷く神官少女たち。

だが、なぜか、ある神官だけは、慌てて目をそらしていた。


それを見たシャルは思った。こいつらの計画は、何度やっても成功しないだろう。

よく見ると、神官以外にも、困ったような表情の女性が何人も見受けられる。


なぜ、非処女であることを、中古であることを申告できないのか?

本当に世界を恨む資格を持っているのは、彼女たちの方なのかもしれない。


彼女たちの女心を理解できる男は、この世界に存在しているのだろうか。




その時、石造りの天井が、大きく十字の光に斬り裂かれる。

溢れ出た光は、ドーム内を白く染めていった。


「な、なんだ?!」


崩れ落ちようとする天井の石材は、光に包まれ融けるように消滅していく。


光が消えていくと同時に、巨大な縦穴があらわになっていった。

その縦穴は、図書館のあった地上から、ドームの床まで続いている。



「ふぅ。ギリギリで女の子たちを巻き込まないように、威力を制御できたぜ」


吊り下げていたワイヤーが切れ、床に横たわる邪神。

その邪神の膨らんだ膜の上に、カンストの勇者・アキラが立っていた。


「お、お前は?!」

「バカな!」

「す、凄まじきパワー。これがカンストの勇者か……」


膜から降りたアキラは、ロッキーたちを無視して、シャルたちの元に歩んでいく。


「アキラ! 来てくれたのね!」

「ご主人様!」

「アキラさん! 嬉しい!」


歓喜の声を上げるシャルたちだが、すぐにアキラの不満そうな顔に気づいて黙ってしまう。


「お前ら、浮気しただろ?」


後ろ手に縛られ三角座りの3人は、プルプルと首を横に振っている。


アキラはシャルの足首を持ち、尻を上にしてひっくり返した。

マンぐり状態の股間に鼻をつけて嗅ぎ始める。


「きゃー。やめてー!」

「次!」

「いニャー!」

「次!」

「せ、せめて拘束を解いてから……」


アキラから解放されたシャルたちは、身を寄せ合って震えている。


3人の股間を嗅いで納得したのか、アキラはロッキーたちを振り返って言った。


「俺の女に手を出しやがって、絶対に許さねー! ボッコボコにしてやる!!」


アキラの言葉は、浮遊霊のおっさんが、生前に言いたかったセリフだった。




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