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邪神復活!

「邪神を復活させ、その力で世界を征服するのが彼らの目的なのです」


美少女神官が語ったのは、栄えた街を支配する男たちの陰謀であった。


美少女神官改め、聖女・シェリル。フェアリー族。

16歳。身長154cm。ボブカットの薄いピンク髪。

彼女にためにあつらえた真っ白な神官服は、Cカップの膨らみを立体的に描いている。

フェアリー族とは、天使の羽と形容されるほどに肩甲骨が美しい種族であった。


「天使の羽のように、肩甲骨が健康的に綺麗なカタチをしている種族なんだよ」


ヒトマルの説明を聞いているアキラ(の中のおっさん)。

それ、肩甲骨が綺麗なだけの『普通の人間』じゃないの? と少しだけ思った。

そのうちに、鎖骨が綺麗なだけの種族とかも出てきそうだ、と。


アキラは、おっさんらしいお節介と下心で、彼女の過去を聞き出した。


孤児として、教会で育てられたシェリル。

信仰深い彼女に、ある日、特別な能力が目覚めた。

神を声を聞く『神託』である。

そうして、彼女は教会内で特別な存在へとなっていったのだ。


教会の人々は彼女をこう呼んでいる、『聖女』と。



「邪神を復活させるには、千人の乙女を犠牲にしなければなりません」


「乙女というと処女ですね?」


「はい」


シェリルは頰を赤らめて答えた。

おっさんのセクハラ的な視線は、勇者アキラの容貌によって美化されている。


「わ、私の警護を受け持っていた女性武装神官たちも、彼らの誘惑に拐かされ行方不明となってしまいました」


「だから、君は、ここに一人でやってきたのか? と、いうことは、君が無事なのは?」


「わ、私は、神とつながっております。敵も容易に手を出せないのです。乙女でなくなれば、神託を失ってしまうそうですから、その、私もまだ……」


聖女と呼ばれ大切に育てられてきたシェリルは、ただの思春期の少女であった。

「この危機から世界を救えるのは、勇者・アキラだけ」と、神から聞かされている。

その神に選ばれた若き勇者が、決意のこもった熱い視線を自分に向けているのだ。


シェリルは、今まで知らなかった胸の高鳴りを感じずにはいられなかった。


勇者・アキラの精神を司る『浮遊霊のおっさん』は、新たな美少女の出現に心を踊らせている。

無限の体力と超復活によって、「思いつく限りの全て」をシャルたちを相手に実行できた。

すでに望む事などない、と枯れきった心。

それを潤すように神官コスプレの美少女が現れたのだ。


おっさんは、今まで知らなかった胸の高鳴りを感じずにはいられなかった。


熱く見つめ合う2人。

アキラは、いきなりシェリルの手を取って、撫でるように優しく握った。


ビクッ「あっ」ジュン


シャリルは、見開いた目で驚き戸惑っている。


「おじさん、今、湿っぽい音がしたけど、なんの音だろ?」


「ヒトマル、ハウス!」


アキラが召喚キャンセルコマンドを叫ぶと、ヒトマルの姿が一瞬にして消失した。


「これで邪魔者は消えた」


シェリルの手を取ったまま、正座していた彼女にアキラは迫っていく。


「い、いけません……」

「キスだけ、キスだけだから」

「神に捧げた身が……」

「先っちょだけ、先っちょだけだから」

「神よ、神よ、どうか、お許しください……」

「いいから、いいから」


「あぁ、今にもシャルロット様たちが、なのに……」


「へ? 今、なんて?」






図書館に造られた巨大なドーム状の地下空間。


その中心には、謎の液体が満たされた半透明の膜の中の『邪神の幼体』が吊り下げられている。

手足を抱えるように丸く身を縮めているが、幼体の全長は8mにも及ぶ。

膜には太い血管があり、その血管の先にはパイプが繋がっていた。


血管は、パイプから送られる液体を呼吸するように吸収している。



「我が一族の伝説に『世界を7日間で焼き尽くす』と語られし者。


邪神・ケルベロス、またの名を『地獄の番犬』の目覚めは近い!」



イヌミミ族の賢者・ギンガが邪悪に笑っている。幼い容貌に隠していた陰キャな素顔だった。

それに答えたのは、イタリア族の勇者・ロッキーだ。


「これで、千人の処女が揃ったな」


ドーム内には、邪神の幼体を囲むように、千人の女性が座らされていた。

全員、後ろ手に縛られ、足首も縛られている。


そして、ギンガたちの目の前に、シャル、アヤセ、エミリアが同じように拘束されていた。


「病的な処女厨が連れ歩いていた女たちです。これ以上の生贄はないでしょう」


「奴が生きていれば、処女を犠牲にする、この計画の障害になったのは間違いないはずだ」


「カンストの勇者が生きている間に、この街で住人の信頼を築くことができたのです。おかげで、たやすく処女を千人も集めることができたのですから」


多脚族の魔王・サカキが、不満そうに声をあげる。


「ふん。貴様らが臆病なだけだ。カンストの勇者など、我が血祭りにあげていただろう!」


「お前は、カンストの強さを知らないから、そんなことが言えるんだ!」


「15歳にして初出場の勇者ワールドカップを制した少年。一度くらいは話をしたかったな。同じ若き天才の一人として」


ギンガは天才の孤独を表情に滲ませている。


「しかし、こんないい女を死なせるのは勿体ないな。こいつが処女じゃなきゃ、俺がもらっちまうのに」


勇者・ロッキーが、そう言いながらシャルを見る。

シャルは、あわてて目をそらした。


「ですね。僕も、こんな可愛いメイドさんと仲良くなりたかった。処女だったのが残念です」


賢者・ギンガも、そう言いながらアヤセを見る。

アヤセは、あわてて目をそらした。


「珍しいことだ。お主らと意見が合うとはな。カンストは不具か、同性愛者だったのではないか? 見ろ、この半魔人を。これほどの女が処女のままなど考えられん」


魔王・サカキも、そう言いながらエミリアを見る。

エミリアは、あわてて目をそらした。


誘惑に負けてしまったシャルたちは、チョロすぎる自分を悔いていた。


最後に残された女のプライドが「私たちは開通済みよ!」の一言を黙らせている。

女の悦びに目覚めたばかりの、迂闊すぎる自分たち。

「お前、中古かよ」の一言が、現在の彼女たちを、あまりにも傷つけてしまうのだった。


彼女たちの女心を理解できる男は、この世界に存在しているのだろうか。







「そういうことは、先に言いなさいよ!」


アキラは戦車から飛び出した。


「ご、ごめんなさい。頭が真っ白になってしまって」


乱れた神官服の胸元を庇いながら、シェリルは呟いた。


「すぐに戻る。ちゃちゃっと片付けて帰るから、続きはその後で」


「は、はい!」


「シャインウィング!」


アキラの背中から光の翼が現れる。

小さくかがんだあと、弾けるように飛び出して、アキラの姿は宙へと消えていった。


「す、すごい。カッコいい」


シェリルは、潤んだ瞳で小指を噛みながら言うのだった。

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