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超復活!

勇者と魔王の戦いにより、ヒューマンの国家・カントー王国は滅んだ。


ブラックホール光線によって大地は不毛の荒野となっている。

それでもカントー王国の国民は全滅したわけではない。

生存者の苦難は続いた。

都市部では死者の肉体はゾンビとなり、生存者を襲い出したのだ。


わずかに生き延びた人々は難民となり、近隣の国家へと流れていく。

隣国を目指し荒野を逃げ惑う人々の行列を、魔物の大群が狙っている。

進行方向にいる魔物の群れに気づいた難民達は、諦めたように立ちすくんでしまった。


「ゴブリンキングが率いているのニャ。オーガ、オークもいるニャ。雑魚ゴブリンは1000くらいいるニャ」


ネコミミ少女・アヤセが、自慢の視力で魔物の群れを観察している。

荒野を見下ろす切り立った崖のような丘の上に、シャル、アヤセ、エミリアは立っていた。


アヤセが語ったように、眼下には無数の魔物がいる。


「じゃあ、私がエリア魔法で一発かますから、その後をテキトーにお願いね」


前に出たエミリアが叫ぶ。


「ワールドフィアーバインド!」


急激に周囲が薄暗くなった。景色が色を失うようにモノトーンに変化する。


魔物達は、自身をかばうように腕を組んでガタガタと震え始める。

雑魚ゴブリン達は、失神して倒れていった。


闇属性のエリア状態異常魔法である。

かけられた者は、強烈な恐怖心に囚われる。

追加の金縛り効果によって逃げ出すことも不可能だ。

弱い者は、その場で気を失い倒れてしまう。


「ちょ。エミリア、やりすぎよ! 難民の皆さんも倒れちゃってる!」


「範囲全部を燃やし尽くすよりマシでしょ。気にしない気にしない」


「そんニャことより、キングやオーガには効いてないみたいニャ。シャルの出番ニャ!」


エミリアの知覚範囲内に存在する、すべての生物に魔法が襲いかかった。

難民となったヒューマン族の人間も同様である。

勇者の加護を受けているシャルやアヤセに闇魔法が効くことはない。

上位魔物の一部にも効果が薄いようだ。


「任せて!」


シャルは、三脚を立てたバレットM82ライフルをうつ伏せに横たわって構える。

スコープで狙ったのは、一体のオーガだ。


銃口から爆音が響きわたる。

銃の強い反動がストックを通して、シャルの身体にも伝わっていく。

姿勢安定のために大股に開いた太腿と、丸見えのパンツに包まれた尻が激しく揺れる。


プルプル、プルプル、と。


プルプルが終わる前に、数百メートル離れた場所のオーガの頭部が破裂して消し飛んだ。


「続けていくわよ!」


バーン、プルプル。バーン、プルプル。バーン、プルプル。


「ご主人様が来たニャ! シャルのプルプルはもういいニャ」


キャリキャリとキャタピラの音を轟かせて10式戦車が現れる。

戦車砲塔の車長用ハッチからは、勇者アキラが上半身を出していた。

鼻をほじる勇者を乗せた戦車は、全速力で魔物の群れに突っ込んでいく。


「グギャー!!」


シャルの狙撃を唯一耐えたゴブリンキングが、勇者を指して何かを叫んでいる。


ドーン!


10式戦車の主砲の一撃で、ゴブリンキングは木っ端微塵に吹っ飛んだ。


そのまま戦車は魔物の群れに突入した。

エミリアの魔法によって身動きできない魔物達をキャタピラが踏み潰していく。

縦横無尽、機敏に動き回る10式戦車。


「グギャ」「ギギャ!」「ブヒー!」「ンゴ!」「パッパ」


飛散する四肢、飛び散る臓物、阿鼻叫喚の魔物達が全滅するのは時間の問題だろう。


戦車上の勇者はアクビをしていた。

そんな勇者アキラ(中身は浮遊霊のおっさん)を、スコープ越しに見つめるシャル。


「お、大人になったら、あんなこと、みんなやってるのかしら……」


どうやら、アキラとの夜を思い出したらしい。

何を思い浮かべたのか、シャルの顔は赤面している。


「わ、わたしに言われても分からないニャ! わたしはまだ子供ニャ! なのに、あんニャことや、こんニャことを……」


同じく赤面するアヤセは、瞳を潤ませていた。ネコミミを怯えるように伏せている。


「そうね。あんなの聞いたことがないわ。私の母でも経験がないはず」


「エミリアのお母さんでも?!」


「ええ、きっとアレやコレは、別の文化だわ。失われた古代文明の秘技なのかも……」


そういうエミリアも赤面している。

だが、身体に張り付くようにピッタリなドレスの胸元に、ぽっちり浮き出ている小さな突起。

腰は小さくモゾモゾと揺れ動いている。


「神の恩恵によって得られた超振動スキルを、あんなことに使うなんて……」


「エミリア! 発情しニャいで!」

「そ、そうよ! 不潔だわ!」


「あら、アキラさんとのイチャイチャが不潔ですって。そんなに怖いなら、今夜から私が一人で受け持ってもいいのよ?」


「そ、それは……」

「そんなの、ずるいニャ!」


毎日のように、知らなかった大人の扉を無理矢理に開かれる。シャルもアヤセも怯えていた。

だが、だからと言って大切なアキラの独占をエミリアに許す気などないのであった。


睨み合う3人の少女達。

少女達は話し合った結果、夜のイチャイチャは順番に一人ずつ行うことになったのであった。


いつのまにか、魔物達は全滅していた。

勇者に手を振りながら去って行く難民たち。

勇者は一人、夕日を眺めていた。


難民達の旅の安全を願いながらシャルは言った。


「それにしても。なんで、こんな場所に魔物のスタンピートなんか起きたのかしら?」






「魔王侵攻に合わせて、『ドキ!ポロリもあるよ。処女だらけの水泳大会』で勇者をおびき寄せる作戦はうまく行ったのだな?」


玉座に座る髭面のジジイが言った。

ジジイの見下ろす先には、片手をついて跪く男がいる。

鎧で身を包んだ、その男が短く答えた。


「はっ!」


「カントー王国は壊滅。その上、魔王の死も確認されたとは、これ以上の成果はないぞ」


「はっ!」


「水泳大会に使う湖周辺の魔物を、軍を使ってまで追い払った価値があったというもの」


「はっ! しかし、追い払った魔物の中に、キングへと進化途中のゴブリンがいたとのことです。大丈夫でしょうか?」


「ふん! キングとなってスタンピートを起こすのは、所詮他国の領地よ。気にするでないわ!」


どうやら、この男達が原因で、スタンピートが起こったようである。


髭面の男は、滅んだカントー王国と対立していたカンサイ帝国の王であった。

同じヒューマン族の国家でありながら、卑怯にも謀略でカントー国を滅ぼしたのである。


「アルメイダ将軍、アキラは? それで、カンストの勇者はどうなったのです?」


ジジイ改め、ジジー王の側に控えていた青年が、鎧男に問うた。

鎧の男・アルメイダ将軍は答える。


「勇者・ジャック殿。貴殿の望みは叶った。スーン王国は、魔王のブラックホール光線に薙ぎ払われ、無人の荒野となっている。例え、最強と噂されたカンストの勇者であっても、無事では済むまい」


「ジャックよ。これで、次回の勇者ワールドカップの優勝は貴様の物だ!」


ジジー王は高らかに笑った。

だが、カンサイ帝国の勇者・ジャックの表情は暗い。

ジャックは、誰にも聞こえないように呟いた。


「カンストの勇者・アキラが、ランキング3位程度の魔王に負けるとは思えない。アキラ、俺と戦わずに死ぬなど、許さないからな。信じているぞ、お前の超復活を!」






夜の荒野に10式戦車が佇んでいた。


「オークの肉は食いあきたな」

「ご主人様、食べ過ぎだニャ」


10式戦車は、全長9.42m、全幅3.24m、全高2,32mである。乗員は3名。

世界的にもコンパクトな戦車であった。

だが、10式戦車の内部は、戦車精霊・ヒトマルの能力によって空間拡張されている。


二十畳程度の広さのリビングダイニングキッチン。

その壁には、複数の扉があり、アキラやシャルたちの個人部屋につながっている。

風呂やトイレの扉もあり、戦車の操縦席や砲塔へと繋がる扉もあった。


快適に拡張されたリビングのソファーでくつろぐアキラ。

かいがいしく世話を焼くアヤセは、食器の片付けを始める。

エミリアは、食事を終えたアキラの横に座ってもたれかかった。


ソファーの上で尻をずらして、エミリアから逃げるアキラ。


「え? あ、アキラさん? 大丈夫? おっぱい揉まないの?」


「あ、あーそういうのね。うん。なんか、今日はいいかな」


魔王を倒してから一週間。

特に目的もなく、常にエミリアの胸を揉んでいたアキラだったのだが……


「そんなデカイだけの乳、ご主人様にいつまでも揉んでもらえるわけがニャいわ! ご主人様は、わたしの小ぶりなお尻が大好きニャの!」


片付けを終えたミニスカネコミミメイドが、身軽にアキラに向かってジャンプする。


アキラはソファから立ち上がって、アヤセから逃げていた。


「あ、あれ? ニャんで?」


扉が閉まる音と共に、シャルがバスルームから出てくる。

出るトコロはしっかり出ているスリムな肢体をバスタオルに包んでいた。


「あ、アキラ、今夜からその。一人ずつイチャイチャしようってことになって。今夜は私なの」


シャルは濡れた金髪の先を弄っている。その顔は羞恥心で赤面していた。

腕を胸の前で組み、Dカップの谷間がバスタオルからはみ出している。


「あー、そうなんだ。へー」


「うん。優しくしてね」


照れるシャルの視線から目をそらすアキラ。


「あれ? アキラ、私一人じゃダメだった?」


「いやいや、違うんだ。なんかさ。そういうの、もういいかなって」


「「「え?!」」」


シャル、アヤセ、エミリアは、3人揃って言葉を失っていた。


アキラには、勇者の無限の体力がある。

その上、神の恩恵「超復活」によって、何度でも復活するのだ!

それが、少女たちにどれほどの負担となっていたか計り知れない。


だが、アキラの精神を司る「浮遊霊のおっさん」は違った。

おっさんは生前、AVマニアのドスケベであったが、致命的な欠陥があった。

それは、生前の嫁との夫婦仲を壊し、離婚にもつながる最大の理由となった欠陥である。


そう、浮遊霊のおっさんは、飽きやすい。


最初こそは、ドスケベが炸裂し無駄に頑張るのだが、その内に飽きてしまい淡白な本性が顔を出してしまう。

嫁との離婚の原因は、セッ◯スレスだったのだ!

初期に無駄に頑張るから、さらに罪は重いといえよう。


「わ、私じゃ、ダメだって言うの!?」


シャルは泣きながら走って自室へと閉じこもった。

おっさんは思う『そういうこと言い出されると面倒なんだよねぇ』と。


「あんまりニャ……」


「シャ、シャルがダメでも、わ、私なら大丈夫よね?」


「え? なんの話? さぁ、今日はもう寝ようか。あー疲れたなぁ。スタンピートって大変だよね」


アキラは10式戦車の砲塔でアクビをかいていただけである。


自室へと歩いていくアキラを、アヤセとエミリアは呆然と見送るのだった。



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