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吾輩は犬?である  作者: 加藤
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ポチ、りばあす する

犬って何でも口に咥えますよね

 うむ。気分が悪い。猛烈に悪い。そふぁーの上で吾輩は苦難に苛まれていた。朝に食べた丸くて小さい粒上の肉ではない美味しい何かを吐いてしまいそうだ。

 というより吐いた。吐いている。よく下僕が着ている服に掛かってしまった。だから何だと言う訳でも無いが。

 近くで寝そべっていた母上が何事かと此方を見たが、そっぽを向いてしまった。それはないだろう母上。家族の危機だと言うのに。

 すると野太く大きい声が聞こえた。やかましく足音を鳴らしながら近づいてくる。間違いなく下僕だろう。

 下僕は吾輩を持ち上げ、何事か喚きだした。ええいやかましい。頭にぐわんぐわんと響くは。

 心配しているのか知らんが、高い臭いうるさいで迷惑である。吾輩より服の心配でもしてるがいい。

 下僕が体をとんとんとんとん軽く叩いてくるせいで、二度目のりばあすが目前に迫っている吾輩に救世主が現れた。すなわち主人である。

 主人は目に見えて狼狽えている下僕の頭頂部を背伸びをして一発はたくと、下僕から吾輩を引き取った。あれよあれよと言う間に吾輩は籠に入れられ、主人は服を着替え出掛ける準備を整えた

 流石は吾輩の主人である。最近ふくよかになってきたとはいえ、俊敏な動きは健在である模様。所で主人。狭いのだが。動きづらいのだが。

 散歩に行くなら出してほしい。というより気分が悪いので寝かして欲しい。何処に連れて行くのだ主人。

 ええい下僕。情けない面で覗いてくるな。余計に気分が悪くなるであろう。


 吾輩が連れて来られたのは、どうにも獣の匂いが充満している白い建物であった。見覚えがある。吾輩はここに来た事ある。

 そう、忌まわしき記憶。生まれて初めて恐怖を覚えた存在の住処。ここは卑劣で変態的な男により毎日吾輩の仲間が辱めを受けている場所である。

 というより自称愛犬家の住処であった。何でも、自称愛犬家の職業はジュウイというものであり、吾輩の母君もよく世話になっていたらしい。

 

 あるいは妹達と会えるのではという期待もしたが、それは淡い期待であった。吾輩は到着するや否や妙に硬くて高い台に乗せられた。そしてなんと、いきなり自称愛犬家が吾輩の体を弄り始めたのだ!

  自称愛犬家は吾輩の予感通り、獣に欲情する倒錯的な性癖の持ち主。

 すなわち変態であったのだ。

  いや何、種族を超えた愛、というのは素晴らしい。別種の生物と絆を紡ぐ物語は常に心を震わせる。それが犬と人の話なら尚よい。

 だがしかし尻の穴に指を突っ込むのは如何なものかお主!

 尻の穴に指が!指が!右手で腹をゆっくりと撫でながら左手の指を尻の穴の中で動かすでない!



 吾輩が初めてここに連れてこられた時もそうであった。

 まだ物の通りも分からぬ幼き頃だ。

 吾輩は優しき母君と頼りになる兄君、可愛らしい妹達、そして敬愛すべき主人。ついでに下僕と共に、温かく、恐ろしいもの等何もない世界で生きていた。

 しかし、吾輩達は突然ここに連れて来られた。それまで一度も外に出たことすらなかったのにである。

 突如見知らぬ場所に連れて来られた吾輩達は当然困惑した。


  ごしゅじんこわいでござるどこですかここだっこしてでござる。


 といった具合でござった。いや吾輩ではないぞ?妹達の様子である。吾輩は困惑しながらも毅然としていたとも。

 うむ。なにせ吾輩と違い怖くて仕方がないであろう下僕を励ますため、腕に抱かれてやっていたのだからな!

 ふふ、なにせ下僕ときたら、泣きそうな顔をしながら吾輩達を見つめていたのだ。仕方なしに。仕方なしに腕に抱かれてやっていたのだ。

 だがそんな吾輩すら泣き喚かざる負えないモノが待っていたのだ。


 まずは二匹の兄君が連れて行かれた。兄君達は男らしく、文句も言わず白衣を着た変態に抱かれ、主人と共に部屋の奥へと連れて行かれた。

 吾輩と妹達と下僕が不安になりながらも何事かと待っていた。

 だが心配はしておらなんだ。まず主人がついている。

 そして兄者達は二匹共に、幼いばかりにして勇猛なおのこであったからだ。

 長兄は無尽蔵の体力と健脚を誇る。屋敷の中を走り回り、追いすがる吾輩や下僕に追いつかれたことなど一度もない。尚主人には息をのむ間もなく首根っこを引っ掴まれるが。

 次兄は犬らしからぬ聡明さの持ち主である。ちり紙を振りまき、追ってくる下僕をこけさせるという罠を使いこなせる程だ。主人には常に先回りをされ、飯という名の聡明なる罠にかかってしまうが。

 無論主人は相当なる能力の持ち主である為、兄君達が叶わぬのも無理はない。

 ゆえに心配はしておらなんだ、しかし。


 奥から。兄君達が消えた部屋の奥から聞こえてきたのだ。


 天にも届かんとばかりの悲鳴が、である。この声が兄君達のものであると悟のには時間を有した。

 げにおそろしき悲鳴であった。聞いている吾輩達は、心細さに身を寄せ合った。


 悲鳴が止み、一瞬の静寂の後に帰ってきた兄君達は、変わり果てていた。

 嵐もかくやとばかりの溌剌さは無くなり、身魂を使い果たしたかのように項垂れて主人に抱きかかえられて戻ってきたのだ。

 何があったのだと聞いても返ってくるのは沈痛な無言ばかりであった。長兄の獅子をも思わせる気高き体毛はしょぼくれ、次兄の高級絨毯のような毛の艶は埃まみれになっていた。脱走を試み物陰に潜んだものの、哀れ主人に確保されてしまったのであろう。その姿が部屋の奥で行われた惨劇を雄弁に語っていたとも言える。


 そして次に連れて行かれたのは妹達であった。

 そう。吾輩は苦難のトリを任されることになったのである。








過剰表現?

思い出して頂きたい。初めて歯医者に行った時のことを。

耳に響くドリルの音。そして幼子の痛々しい悲鳴。そしてドリルがあなたの口のもっとも敏感な所を

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