練習No.1
海と空の間を埋めるかのように、雲の裂け目から光の筋が三本、水彩画絵の具で描いた絵のように見えた。
車窓から見える風景は、動きを止めることなく、めまぐるしく風景を変えさせる。
暗雲漂う灰色の雲は、風に吹かれ、竜の鱗がうねっている様に見えた。
車内から覗ける風景に彼は、郷の友を思い出していた。見える風景に故郷のことなど、一切関係していなかったが、過ぎ行く時間は名残惜しさを感じさせ、気分を感傷に浸させた。
頬杖していた彼に小さな振動が伝わる。目の前の色が黒一色に変わり、窓に寂しそうな表情をしている自分がいることに気が付いた。瞳には涙で潤んでいた。