危機と異世界人
ここからはそれぞれの視点で物語をかけていけたらと思います
まずは主人公の修達編です
グダグダ感が否めない……
どれくらいの間落ちていたのか
不意に世界が急に光を取り戻したかのように辺りが明るくなった
「いてっ!! 」
明るくなったかと思った瞬間不意に体が投げ飛ばされ、地面に落下した
投げ飛ばされたというよりは不意に重力を取り戻したと形容した方が適切かもしれない
「…………」
自分が落ちた、もとい落とされた穴のあるであろうところを見やると既に穴はなく周りを見回すと地平線が見えるほどの広大な草原が広がっていた
「いや、ここどこだよ。てか、これからどーすんだよ。」
あまりに突然だったため現状を理解することもあまりできないでいた
ふと隣を見やると不幸中の幸いというか持っていた、というか側に置いていた荷物も一緒に落とされたらしく隣にバッグが落ちている
「んー……まぁ、これがありゃ当分死にゃしねえし、大丈夫か。うん。とりあえず面倒だから修に任せっかな……」
(おい修! 聞こえてんだろ? まぁ、そーゆーわけだからあと頼むわ。)
(えー、そんなぁ……ひどいですよぉ……)
「あ……はぁ……まぁ、なんとなくわかってましたけどね……とりあえず、荷物の中身の確認でもしておききますか……他にすることもないですし。」
もう気付いてる方もいるとは思いますが、実は僕二重人格ってやつなんですよねぇ……
しかもどっちが外に出ていても中の方の意識はあるし記憶も共有されてるし心の中で対話できるし……
なんてゆーか、こう、ねぇ? プライバシー? のようなものはなかったんですかねぇ……
(誰に説明してんだよ、鬱陶しいな。てか今更何言ってんだよ? )
(ただの独り言ですよぅ……はぁ……)
まぁ、こんな感じで全部考えてること筒抜けなんですよね……
あ、そうそう今表に出てる僕が修で中にいる喧嘩腰で偉そうなのが修です
(お前死ぬか? あ? てゆーか、何言ってんだよ? )
(君は僕なんで君が僕を殺すのは無理ですよ。何って、ただの自己紹介ですよ? )
(……チッ! てか、誰にだよ? )
(まぁ、そんなのはいいじゃないですか)
(あぁ?! )
はぁ、無視無視……
さて、気を取り直して、バッグの中身でも見ますかね
マッチ、ライター等の火気類に菓子パンやスナック菓子、水4Lに寝袋、財布にカードといった金銭類にサバイバルナイフ、十徳ナイフに缶詰数種、コンパスに筆記具、簡易マップ、メモ帳、ハンカチタオルテイッシュ手ぬぐい着替え2日分……いや、よくこれだけのものを詰め込めましたね……
えーっと、これ準備したの誰でしたっけ……?
あ、僕と楓ですね……
家のお爺様の思いつきで急遽合宿と称したサバイバルキャンプをすることには異論を唱えたかったですが今ではそれが幸いしてますね……
たまにはいいことするんですね、あの爺様も……
それに、懐にはケータイや懐中時計、携帯音楽プレーヤー、ソーラーパネル式の簡易充電器等もありますし、まぁ、当分困らないでしょう
しにもしないでしょうし、まぁ大丈夫ですね
(そういえば、楓や聖那はどうなったでしょうか……? )
(あいつらのことだから死んではねぇだろ。ま、どうせそのうち会えるさ。)
(んー……それもそうですね。些か淡白な気もしますがまぁ現状どうしようもないことなので仕方ないですね。)
さて、と
とりあえず歩きますか
いつまでもここで立ち止まっていてもきりないですし
手あたり次第闇雲に歩き回るのもただ疲れるだけなのでとりあえず北に進んでみましょう!
えーっと、コンパスは……っと? あれぇ?
なんでこんなに針がぐるぐる回ってるんですかねぇ……?
(イカレたな)
(……やっぱりですか……まぁ、期待はしてなかったですよ。えぇ、してませんでしたとも……グスン……)
(思いっきりしてたんじゃねぇかよ!! )
(とりあえず、歩きましょう)
右も左もわからないのでとりあえず感を頼りに適当に歩いてみましょう
そのうち街かなんかにつくでしょうし
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……おかしいですねぇ……
もうかなり歩いてると思うんですけど……
街どころか叢以外何も見えないのはなぜなんです……?
大分疲弊してきましたし日も傾いてきましたしこの辺で野営でもしますかね……!?
(おい! 修! )
(分かってますよ! ほんと、ここどこなんですかねぇ……)
野営の為に寝袋をだそうとバッグを下ろした時殺気のようなものが背筋を履い、反射的に後方を振り向きました
すると、なんとまぁ日本では絶滅したはずの狼がいるじゃないですか
しかも二匹も
恐らく夫婦かなんかなんでしょうねぇ……
おっと、そんな事考えている場合ではなかったですね……
(修……どうしましょう? 僕狼と闘ったことなんてないですよ? )
(俺もねぇわ!! とりあえず、逃げろ! )
(……どうやって? どう考えてもこれ向こうに部がありすぎますよね。死にますよ、これ。)
(とりあえず、火炊いとけ! んで、それ牽制にして走れ!! )
(……修、お願いしますね! )
「ぼけぇぇ!!! だー!! もうどうなってもしらねぇからなぁ!!! 」
(そんなふうに叫びながらも作業しちゃう修は流石だと思いますよ。)
とりあえず、アホ修は置いといてさっさと持っていた紙を捻り簡易松明を作るとそれにライターで火をつけ狼のいる方へ投げた
(さぁ! ダッシュです!! )
「てめぇがいうなぁ!!! 」
思わず口に出しながら俺はバッグを引っつかみ全力で逆方向へ走り出した
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「だぁぁぁ! しつけぇ!! 」
どれぐらい走っただろうか
修はこれでもかという程全力で草原を走り続けていた
道らしき道もなくただ永遠と続く草草草
流れゆく景色は緑一色で何も変わらない
時間どころか方角も距離もわからずただひたすらに走る
(おい! 修! どうする?! これじゃいたちごっこだ! いっそ死ぬの覚悟で闘うか? )
(やー、それはないでしょ。流石に勝てないし。あ、そういや缶詰ありましたよね? 肉のやつ。あれ、投げ捨てましょう。)
(どーやってあけんだよ!! もう俺走るだけで精一杯だぞ?! )
(じゃ、手だけ意識手放してください。僕が開けます。)
(……いやいや、やったことねぇよ。そんな芸当。)
(まぁ、背に腹は変えられないじゃないですか。とりあえず、頑張ってみてください! )
(どうなってもしらねぇからな!!)
(僕達なら大丈夫ですよ。)
いや、そんな自信どっから湧いてくるんだよ……
俺は半ば呆れつつも手の意識だけを手放す
難しいと思っていたがなんてことはなくすぐにできた
“後は修がなんとかしてくれる”
そう自分に言い聞かせ俺はただひたすらに走り続けた
(よしっ! いきますよぉーー!! えいっ! )
変に力の抜ける言葉を修が吐いたと思ったとき後方で缶が地面にあたる軽やかな音が聞こえると俺たちの後ろを追っていた狼が不意にそちらへ意識を飛ばした
そして、そちらの方が美味しいと判断したのかもうこちらには見向きもせずただひたすらに缶詰を貪っていた
俺達はその機を逃さず脱兎のごとく一目散に逃げる
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「……も、無理……流石に、疲れた……」
狼が見えなくなりそれでも更に数分は走り続けようやっと安全だと思えたので修はその場に寝そべった
(お疲れ様です。なんとかうまく行きましたね!)
(あぁ、まぁな……まさかあんなことできるとは思わなかったが、良しとしよう。)
(あははっ! そうですね。)
(……しっかし、ここはどこなんだ? )
(日本でないのはたしkッ!! )
「ちぃっ! 今度はなんだよ!! 」
疲れきっていて気付けなかったのかかなり近くに何者かの気配を感じた二人
悪態をつきながらとっさに起き上がった修は急いでその気配から距離を取る
「おぉ! すごいな! なんで私の気配がわかったんだ? 一応気配消しておいたんだがな……? 」
気配のした方向を見やると黒い影が佇んでいた
「人? なのか? 」
「あぁ、そうだよ。あぁ、そんなに警戒しなくてもいい私は君たちの敵ではないからね。」
声色から察するに恐らく女だろう
「それは、本当なのか? どうやって信じろと? 」
「ふむ、そうだな……では、これなんかはどうだろう? 」
いきなり現れた女が不意に腕を振り翳すと何も無いところから突如として目の前に何かがこぼれ落ちた
それは先程俺達を襲った狼に酷似していた。
「それは……」
「そうだ、お前を襲った魔物だよ。」
「魔物? 」
「あぁ、固有名をグラス・ウルフという。つまりただの狼だ。」
「…………」
女は軽くそういうとまたも手を翳す
「これを見れば納得するか? 」
女がそう言うと目の前にまたも何かが現れた
それは重力に従い地面に落下すると金物特有の乾いた音を響かせて転がった
「これは……ッ!! 」
「お前が逃げる際に使ったモノだ。うまかったぞ。」
いや、食ったのかよ……
どうやら味方というのは嘘ではないようだ
「それで? 俺達に何か用か? 」
「? まぁ、そんなところだよ。とりあえず、ついてきな。」
女はそう言うと突如何も無い空間に穴を開けた
そしてなんの躊躇いもなくその穴に入って行った
(どうするの? ついて行くの? )
(そうするしかないだろうな……)
覚悟を決めその穴に入ると抜けた先はライトが煌々と灯った部屋だった
「いや、ほんとなんなの? 夢? 夢なの? 」
あまりに突飛な事だらけなのでもはや夢としか思えない
「残念ながら夢じゃないぞ。すべて現実だ。」
先程の女と同じ声がしたのでそちらに目をやると
「いや、お前誰だよ!? 」
美女がいた
金髪碧眼、ボンキュッボン……あ、耳尖ってる
え、何人?
「さっきから一緒にいただろう? そういや、自己紹介がまだだったな。私はティア。魔道士だ。あと、エルフ族だから耳が尖ってるんだよ。」
「…………は? 」
(え、この人何言ってるんですか? )
「おいこら、そんな目で見るな。事実だ。因みに、お前の事はある程度分かるぞ。異世界人よ。」
「……ッ!! なぜ、それがわかる? 」
「簡単だよ。この世界の者で魔道士、魔術、魔物を知らぬ者は赤子を除いてはおらん。その時点でこの世界の者でないことはほぼ確実だ。それに……リジャーのヤツが異世界人を召喚するやらなんたら言ってたからな。それらを踏まえれば、お前は異世界人だとわかる。して、異世界人よ。お前の名は何という? 」
女はシニカルな笑を浮かべると俺達にそう問いかけてきた
「ははっ! まじかよ……」
「まじだ。」
「あー……俺の名は修だ。」
「宜しくな。修とやら。」
「おぅ。で、だ。実はもう一人紹介したい奴がいるんだよ。」
そう言って俺は意識を修に渡した
すると、今まで緋色だった眼は色を蒼に変えた
訝しむ様な目をしていたティアが驚愕の表情となる
「……はじめましてティアさん。僕は七瀬 修です。」
「ほぅ……なかなか、酔狂なことをするじゃないか。うん! 気に入った! お前、いや、お前ら私の弟子になれ。この世界のことや生き方から何からすべて叩き込んでやるよ。因みに拒否権はないからな。付いて来な。」
ティアは満面の笑みでそういうと徐に立ち上がり二階へと続く階段を上った
階段を上って突き当たりの奥の部屋の扉を開くと
「今日からここがお前らの部屋な。」
その部屋はパッと見十畳は有りそうな大きめの部屋だった
いや、かなり大きかった
「こんなに大きな部屋……いいんですか? 」
「何、気にするな。外に出て見りゃ分かるが、ここはかなり広いんだ。それに、住んでるのは今は私だけだしな。もともと、この部屋は使われていない。」
「……そうですか。では、御言葉に甘えさせてもらいますね。有難う御座います。」
「いいってことよ。んじゃま、とりあえず荷物置いたら外に出てきな。色々と見てやるよ」
ティアはシニカルな笑みを浮かべながらそう言うと階段を降り外へ出てしまった
修達も荷物を部屋へ運ぶとティアを追い外へと出て行った