プロローグ
はじめまして
初投稿です
プロローグだけ第三者視点です
某月某所
今は使われていないであろう倉庫らしきところで一人の細身の男が十数人の男に囲まれている
「あのー……僕に何か用ですか?」
細身の男は綺麗な蒼い目に怯えの色を浮かべ周りの男たちにおずおずと尋ねる
「“何か”だと?! そんなもんてめぇの胸に聞きやがれ!」
それを聞いた男の1人が声を荒らげる
(そう言われてもあなたがたと会うのは初めてのはずなんですけどねぇ……)
細身の男は不思議そうな顔をし、首を傾げる
「なんだぁ? そのツラは!!」
一人の男が拳を振りかぶる
「わっ! ちょっと、いきなり何するんですか!」
細身の男はその拳を辛うじて躱すと慌てて後ずさる
「へぇ…… よくよけれたな」
相手の男が獰猛な笑みを浮かべながら感心する
反対に細身の男はゆっくりと目を閉じていく
(ほんとはあんまりしたくないんですけどねぇ……まぁ、致し方なし、ってことで)
「……?」
獰猛な笑みを浮かべた男が訝しむように細身の男を見る
(お願いしますね、“修”)
「チッ! 何がしてぇかわかんねぇが、おめぇら! やっちまえ!!」
その声を合図に男たちが一斉に殴りかかる
「オラァァァ!! 」
一人の男の拳が細身の男にあたろうとしたその時、細身の男は閉じていた目を見開いた
その目は赤く紅く染まっていた
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駅へと続く商店街を一人の細身の男が歩いている
すると後ろからその男のもとへ駆ける一人の女がいた
「修ちゃーん! 修ちゃんってば!! 無視しないでよ! 」
修と呼ばれた男はゆっくりと振り返ると
「俺は“修”だ! それと楓 、“修ちゃん”はヤメロ! 恥ずかしい!」
楓と呼んだ女に不満を言う
「なんだ、“修ちゃん”の方か。紛らわしい……いいじゃない。昔からそうなんだし……今更変えられないよ? 」
楓は修の不満を長年そうだったからと一蹴する
楓と修は家が近いのと親同士が仲が良かったのもあって幼少の頃より一緒にいる
所謂“幼馴染み”というやつである
「その“修ちゃん”ってのもヤメロ! 」
「えー、なんでよ? 呼び方なんて私の自由でしょ? ……てゆーか、“修ちゃん”が出てるってことはまた喧嘩したの? 」
駅までの道のりを並んで歩きながら楓は修に問いかける
「るっせぇなぁ……いいだろ、別に。売られたから仕方なく、だよ。それに、投げただけだから多分怪我はしてねぇよ。あと、修が弱いのが悪い」
「もー、前もそんな事言って相手の人入院させたじゃない! 少しは喧嘩をしない、ってことを覚えてよ! あと、修ちゃんは弱いんじゃなくて優しいの! 」
修は少し気だるげに答える
そんな風に修と楓はいつもの口論とも言えぬ柔らかい口喧嘩の様なものをしながら駅へ並んで歩く
そんな時ほんの一瞬、ほんの少し淡く薄く楓の足元が光ったのに仲良く駅への道のりを歩いていく二人は気づかなかった……
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駅でも未だに口論? を続けている二人に一つの男が近寄る
その男は“そうじゃないのはわかっているが楽しそうだからとりあえず弄っとこう”という感じのニュアンスで話しかけてくる
「よっ! おふたりさん。まーた夫婦喧嘩か? 」
「「違うわっ!」」
「いい加減そのネタに飽きろよ、バカ聖那」
「うわっ、修の方かよ……」
修にバカを頭につけられ呼ばれた男、聖那は軽い調子で謝ると二人の輪の中に入り楽しそうに談笑する
聖那は高校に入ってからの付き合いなのだが修の家がやっている道場の門下生ということと聖那の気さくで人当たりがいいという聖那自信の性格もあって二人とは“親友”とまで呼べる仲になっていた
そういえば言い忘れていたが修の家は割と、いやかなり大きめの道場を経営していて空手や剣道、柔道など武道、武術という類いのものは大体全てを教えていた
修や楓は幼少の頃よりそこの門下生で今では殆ど全てにおいて師範代を務めることが出来る程洗練されていた
三人は仲良く談笑をし続け、そろそろ電車の着く時間が近付いてきたのか周囲の喧騒も次第に大きくなり人が疎らだったホームは人でひしめき合うようになっていった
そんな時、不意にホームのある一点から強烈でかなり大規模の光が発された
その一点とは、楽しく談笑する三人組の男女の内の紅一点を務める女の子の足元……つまり、楓の足元である
不意に発された楓を一瞬で包み込むと次第に光度を落とし徐々に落ち着いていった
急な閃光に眩ませていた目を開けた修と聖那の眼前には、もう笑顔で笑っていた楓の姿は無かった
「「楓っ?! 」」
残された二人は楓の姿を探して視線を左右に忙しなく動かすがどの方角を見ても楓の姿はない
「くそっ! おい聖那! お前は向k……え? 」
「なっ……ッ!! 修!! 」
二人が楓を目だけではなく身体すべてを使いホームをくまなく探そうとしていた矢先修の足元に不意に黒い円が現れた
いや、ただの黒い円ではない
黒く染まった範囲だけ足元が消え修は重力によって円の中、もとい眼下の世界へと落ちて行った
世で言う“落とし穴”にはまって……
「わぁぁぁぁぁ……」
修は悲鳴をあげながら徐々に闇の中へと落ちて行った
周りにいた人々や目の前の聖那はその光景をただ、黙ってみているしかなかった……
三人が飛ばされた(落とされた)場所はそれぞれバラバラですので次回からはそれぞれの視点で物語をかけていけたらと思います