俺と六月の吸血鬼
私にお気に入りをしてくださった皆さんにおくります。
人生、何があるかわからない。
その事を猛烈に感じている今日この頃である。
はじめまして。俺は青葉雅史。
今年高校1年になった至って普通の男子高校生である。成績は中の上くらい。身長だって平均並みの171㎝。強いて言うなら、少しばかりのつり目ってくらいだ。
特別なことなんて、何もないって思ってた。
そう。思ってた、のだ。
人生を甘く見ていた俺への仕返しなのか、俺は高校入学早々、見てはいけない場面に遭遇してしまった。
えっ?現代日本で吸血鬼とか本気ですか?マジっすか?やばくないですか?(主に俺の生命的なへんで)
いや、当時は恐怖のほうが勝ってて、今みたいな冗談をかますことが出来なかったんだけど。後になると自分で「そんなアホな」って分析しちゃうというか・・・。
あー・・・で。
結局、巻き添えで吸血鬼に血を提供する人間として目をつけられてしまった。
うっわ。何て人生の入り口だ。
何か?この先、生涯に渡って俺は吸血鬼の贄、けってーい。てか?!
そうして俺の人生は終わった。
完。
俺は空に向かって、そう呟いた。
「先程から何をぶつぶつ呟いていらっしゃるの、貴方は。」
青空を仰ぎつつ、学校の屋上で寝転んでいた俺に影が差した。
美しい女性の声音。
俺がちらりと目線だけを影の先へと向けると、世に言われるお嬢様を体現しましたとも言うべき美少女が、その麗しい顏をうろん気にしかめながらこちらを見ていた。
しかも黒髪美人。
大和撫子って言われてて、うちの学校のマドンナ的存在。てか、マドンナ。一見すると儚げな少女。
背中まで垂れている黒髪は、天使の輪っかまでできている見事なストレート。白くほっそりした肢体は、日に当たると溶けてしまいそうなほどに儚さを感じさせる。男女問わず魅了してしまう姿。
そして俺は納得した。
この一見か弱そうな美少女が、俺を恐怖させたあの吸血鬼だったのか、と。
「そりゃ、男女問わず魅了するわな。吸血鬼だったんだから。」
ぼんやりと俺は呟いた。
この三週間ほどで見慣れた美少女は、やや目をすがめて俺を睨んだ。(本気の睨みではないので、怖くはないのがわかる俺。泣くぞー。)
「ですから、何を仰っているのかしら?わたくしより先に寛ぐなど、貴方、大層な御身分ですのねぇ。」
「はぁ?校内でそんなこと言われても・・・。公共の場だぞ?あんたの方が変なこと言ってるって自覚した方がいいんでない?」
「・・・・・・。」
あ、今眉間のとこピクッてなったな。
余計なこと言った。
「あー・・・今のは失言。忘れてください。さぁて。そろそろ教室帰ろっと!」
「お待ちなさい。」
俺の悪い癖。
余計な一言、言うなよ雅史。
てな感じか。あのときだって余計な一言から、吸血鬼の贄、何てことになってしまったのに。懲りない口だ。
俺は立ち上がって、彼女と向かい合った。そろそろ態度を少しでも改めないとマジ怒りが来る。イタイノイヤ。ボウリョクハンタイ。
「はい。何ですか、紅さん。」
彼女、紅礼亜。(くれない れあ、と読む。)
俺と同じく1年にして、政治家の娘って噂のある吸血鬼だ。
性格は割りと乱暴。
嫌いなものは、パックのトマトジュースだ。意外だった。
パックのトマトジュース嫌いな紅さんがニヤリと怪しげな笑みを浮かべて宣った。
「わたくしに意見なさる貴方は面白いですわ。やはり、しばらく飽きなくて済みそうですわね。」
・・・変なもの好きの紅さんと分かり合う日がこないことを祈ります。
そんな俺と吸血鬼少女の、六月始めの屋上でのことでありました。
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