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5話

結局筆談で説得し、なんとかレイドは仕事に戻すことに成功した。転移室という部屋に移動し魔法によって連れてこられた場所は遠目には至って普通の町に見えた。

そこには人の笑顔があって、元気に走り回る子供たち。それだけならあちこちの村でも見られる光景。でも絶対に人間の国にはない物があった。魔族と一緒に笑い合う人の姿。




この村は魔族と人間が当たり前のように一緒に暮らす村だった。




『なんで?どうしてここには人と魔族が一緒に暮らしているの?』

「ここに暮らしているのはもともとは800年前に出て行かなかった者たちだった。その後増えていったのは人間の国にはいられず逃げたり追い出された者たちなんだ。レイのように魔力が強く黒に近い色を纏っていて殺されかけたものや魔族と恋仲になってここに逃げ延びたものもいる。他には魔族と人間のハーフとして生まれた子供や先祖がえりで人間なのに魔族のような容姿や魔力を持って生まれた者もここに数多く暮らしている。ただ最も多くは上がり続ける税金を支払えず村を逃げた者や処罰として追い出された者たちだ。特に結界の端に近い村になればなるほど、氷の刻というんだったか。あの気温の下がる時間の影響を強く受け、食物などが育ちにくい。それなのに税は平等にかけられている。むしろ端になれば端になるほど碌な官吏がいないせいで私腹を肥やすために税を上乗せして徴収したりしているらしい」



そんなことをしているなんてもちろん聞いたこともない。それ以前に私のあの国での生活では聞く暇もなかったけどそれが知らないなんの言い訳になるんだろう。




「もちろんここにも税はある。魔族のすべてにそれは支払う義務があるがその魔族ごとに抱える資源やできることも違う。それぞれに適正と思われる税がかけられているが、人間には一定量の労働で支払ってもらっている。魔力の少ない者ばかりだし何か資源を生み出せるわけでもないからほかの魔族と同じ税はかけられないからな」



『どれくらいの労働?』

「内容は農作業や町の整備など様々だがだいたい朝から夕方程度の時間だな。週に1日から2日の休みだが、体の不自由なものや病気がちな者は負担の少ない作業で日数自体少なくしている。だいたいはそれぞれの村で安全に少しでも豊かに暮らせるように割り振られているんだ」

『800年前とは違うの?』

「・・・800年前も今とそう変わらない。もちろん人間が出て行って村の規模が小さくなっているから税の内容も違うが、記録を見る限り個々への負担はそう変わらないだろう」



『じゃあなんで人間は逃げ出したの』

「記録によればとしか言えないが、魔王にだいだい伝えられている魔力を溜める結界石を盗んだものは労働を拒みその・・・働かずに暮らしたい、魔力のある者なら自分たちよりも簡単にできるのだからすべてやればいいと言っていたそうだ。その当時の魔王城には手順さえ踏めば、人間でも魔族でも難なく入れた。彼らはその望みのために石を盗み出したが、自分たちには使わなかった」


続く言葉はさらに今までの自分を根底から突き崩された。


「その娘は当時8歳。男たちに脅しつけられての無理やりのことだったらしいが、それが初代巫女姫ルクレシア。偶然か狙ったのかはわからないが、願った文言が人間の最も魔力が強いこの娘にずっと守れるだけの力をだったせいなのか、その娘の魔力が衰えると次の娘に、次の娘にと引き継がれ続けているんだ」



『じゃあ今の王族は、あんなに偉そうなあいつらは、ただ働くのを拒んだバカな盗人の末裔?』

私の皮肉った言い方に困ったように眉を下げる。

「・・・そういうことになる。魔石を盗んだせいで人間は他の魔族たちから怒りをかった。もともと自分たちよりも圧倒的に強い魔族に大なり小なり恐怖は根強くあったんだ。そこにその事件があり、このままここにいれば魔族に殺されるだけだ。こんないつ殺されるともしれない場所にいなくても魔族の庇護などもういらない。自由になれるんだとあおり、大部分が国を出た」






「私の言葉だけで信用できなければ、遠慮なく好きな者を呼び止めて話を聞こう」


目の前の光景はとうてい信じがたいもの。でも歩けど歩けどそれは現実として私に真実を突きつける。ただひたすらに周囲を見ながら歩き回った。






『もういいです。信じます』

「帰ろう。王城に。・・・あなたには辛かっただろう?」

彼の手がそっと近づいて頬を撫でる。その指は濡れている?自分で頬を触って初めて気づいた。服にまで滴り落ちるほど泣きながら歩いていた。




私はいったいなんだったんだろう。

人間を守れるのは自分しかいないんだからと劣悪な生活にもずっと涙をこらえて耐えてきた。

毎日が辛くて辛くて泣きながら歌い続けた日もある。

熱を出して意識も朦朧とする中歌い続けた日もある。

倒れそうになれば水をかけられ、眠気に負けそうな時は鞭を振るわれていたこともある。



それでもここまで耐えていたのは巫女姫としての誇りと守らなければという使命感だけだったのに。




巫女姫なんてただの偶像だったのだ。王族が人族を支配し楽をするためだけの。




説明ばかりになってしまってすみません。わかりにくいところや疑問点があれば教えてください!重い話は次で終わる予定です。もう少しお付き合いください;;

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