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3話

今自分の聞いたことが頭の中で何度も繰り返されているが全く意味が分からない。


「あなたの役目としてはとりあえず歌わなくてもすぐ向かわなくても大丈夫だと思うんだ。もう一度座って話をきいては・・・もらえないだろうか?」

あ、またその顔・・・。犬が飼い主に向けてキュンキュン鳴くときに向けるようなどこか哀れっぽく感じてしまう表情である。



とりあえず言われるがまま席についてしまった。流されたわけでは決してない、・・・たぶん。




「説明が悪くてすまなかった。説明を続けさせてほしいんだが、現状の話だったか・・・。結界のことは今話した通りだ。細かいことはまた質問してくれれば説明する。あなたをさらってから今1時間と少し経っている。先ほど説明したことは置手紙として残してきた中に書かれていることだ。ほかに書いてあるのは魔族には攻撃の意思はなく和平を結びたいと考えていること。魔族の住むこの国への侵攻を目的としたすべての攻撃をやめること。魔族、そして魔族と関わりを持った者への迫害をやめることなどが書かれている。条件は最終的には細かい部分は話し合いによって決めたいむねも書いている。」




魔族が和平?

攻撃の意思がない・・・?



まるでそれじゃあ人間がなんの害もない魔族に向かって一方的に攻撃を仕掛けているようじゃない。それも人間の方が侵攻している?



「・・・・・・」

つい口を動かしてしまった。空気だけが漏れぱくぱくと口を動かした私に驚いたように彼が目を見張る。


「声が・・・?まさか歌えるのに話すことができないのか?」


ゆっくりとうなずく。


「なぜ?歌うときには声が出るのに話せないなど。・・・魔力を通すことでのどへ負荷がかかっているのか?・・・いや、今はそんな場合じゃないな。文字は書けるか?紙と書くものを持ってくるから少し待っていろ」

文字が書けるということと取りに行くことへまたうなずくとあっという間に彼は飛び出して行ってしまった。



「待たせた!これでいいだろうか」

紙の束にインクとペンをテーブルに置いてくれる。



『ありがとうございます』

さらさらと書けば覗き込んでいた彼は「いや、そんな感謝されることじゃない」と慌てたように顔の前で手を振っている。



なんとなく現実だと認めたくなくて聞き流していたが、さっきこの人自分のこと魔王とか言ってたよね?魔王ってこう・・・なんか牙とか羽根とか角とか生えてて化け物みたいな恐ろしい生き物なんだと思ってたんだけど。というか人間はみんなそう思っていると思う。歴史を学ぶ書物なんかに書かれている魔王は子供向けだろうと大人向けだろうと、総じて夢に出てきても当分トラウマになりそうな化け物だったし。



もし今が、例えば魔法で変化しているとか本当の姿でないとしても、言動や行動が魔王というべきイメージとは著しく異なっている。本当にこれ・・・魔王?私だまされてる?



『あなたが魔王なんですか?』

「あぁ、そうだ。今現在魔界の中で魔力が多く扱いに長けているのは私なんだ」



誇らしげに言ってもいいし、偉そうに言ってもいい。


でも彼はどこか恥かしそうである。うーん・・・やっぱり魔王っぽくない。と、そんなことは置いておいて気になっていることを聞かないと。



『迫害とはなんのことですか?』

「人間は魔族と関わりをもった人間を迫害しているだろう?基本的に処刑しているし、疑いのあるものは結界から追い出している。結界から追い出されるということはどのみち処刑と大差ないだろう」



人間がそんなことをしているなんて聞いたことがない・・・。

魔族は邪悪な考えを持ち容姿は醜悪極まりなく常に虎視眈々と人間を隷属させる機会を窺っている。1時間以上結界を張ってから次の結界が張るまでに間があくと効果は完全に消失し、魔族の侵入を許せば数多の人間は殺され残りは奴隷とされてしまう。これが私が幼少期からずっと言われ続けられた真実だ。

だからこそ私はあんな生活をもう10年以上続けているのに。



この自分を魔王だとかいう男は私をだましてどうしようというの?という疑いで9割は占められている。でも残り1割がもし本当だったらとささやく。



自分は記憶もない幼少期に次代巫女姫として王城に連れてこられてからただの一度も世界を見たことなどないのだ。何を根拠に真実を見極めればいいんだろう。




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