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2話

経験のない目覚め。誰かに乱暴に起こされるわけではなく自発的に意識が浮上するなんていつぶりの経験だろう・・・ってどういうこと?!寝坊?

「っ!!!」

バサッと布団を跳ねのけるように飛び起きる。が、飛び起きたところで固まった。



ここはどこでしょうか?




・・・・右を見て、左を見て、天井を見たところでここがいわゆる天蓋つきのベッドの中だと気付く。


しかし異様なのはそこではない。天蓋から今跳ねあげたシーツに至るまで全部黒。



こんなもので寝るのは魔族だけである。



「早いな・・・。もう目覚めたのか?」

突然聞こえた声にびくりと肩をすくませる。全身に緊張が走る。


「きっかり1時間だな。さすがの姫巫女といったところか」

ベッドを包み込むように垂れ下がっていた天蓋をゆっくりと上げて顔を覗かせたのは、眠りに落ちる直前に見た黒づくめの人物。


魔族?!


とっさに歌おうと口を開くとそれまでからは全く予想できない素早さでのしかかられ口をふさがれた。支えていた腕がなくなったせいで明かりを取り込んでいた隙間もなくなり薄暗い空間になる。




「歌うのは待ってくれ。まずは話を聞いてくれないか?こちらは危害を加えるつもりはないんだ!こんな状態で言っても説得力はないが・・・その命は保障するから頼む」


「・・・」

「話を聞いた上で納得できなければすぐにあの塔に返すから頼む」


髪も目も服も暗いせいか結構な男前だと思うのだが陰気な雰囲気を纏っているのに、どことなく哀愁の漂った目でこちらを見てくる。

正直まだ心臓は早鐘のように鳴っているし、なんだか薄暗い空間は身の危険も覚えるし、何一つ信用する材料などないのだがどう考えても人の国とは思えない今の状況を考えると、ここで結界を展開するよりまずは話を聞くべきな気もする。なによりここで死ぬわけにもいかないし。



ぐるぐると頭の中をいろいろな理由が駆け回ったが最後の決め手は抑え込まれた体とふさがれた口に込められた力が、抵抗して外すには難しいのに痛みを感じさせない明らかに手加減していると思われるものだったから。




伝わりやすい様にコクリと首を縦に動かす。




「いいか、手を離すけど暴れないでくれよ?離すぞ?」

もう一度コクリとうなずくとそっと手が離される。歌わないことを確認するようにゆっくりと見つめあったままのしかかっていた体も解放される。



「いきなり乱暴してすまなかった。こんなところでは落ち着いて話もできないだろう?こちらに席に移動したいんだが」

暗くなっていた原因の天蓋を今度は大きく開いて指し示す先には確かに椅子が用意されている。



またコクリと慎重にうなずく。まずは彼からギシリとベッドを鳴らしながら床に降りる。自分が不用意に近づくことを避けるように、天蓋を紐で柱に止めると自分から椅子のもとまで歩いて自分が座るであろう席を引いてくれる。



その様子は警戒心を抱かせない様に必死に考えながらふるまっているように見える。これが手慣れた様子ならまた緊張感を高めたのだろうが、椅子を引くにしろなんにしろどこかぎこちなさが滲んでいる。



とはいえ、もちろん演技である可能性もあるので緊張感は緩めず、ゆっくりと自分もベッドから降りる。



自分が椅子に近づけば今度は1メートルほど後ろに下がる。


何をしているの?と疑問に思いつつもひかれた椅子に浅く腰掛けると、私の向かい側に座るにしてはかなり大回りな動作で迂回すると自分も席に着いた。



そこまでを見てやっと距離を詰めない様に気を付けてくれたことがわかる。気持ちはありがたいがどこか間抜けなその動作になんとリアクションしたらいいのかキョトンとしてしまった。



「まずは混乱していると思うから現状を説明させてほしい。あなたがいるこの場所は魔界の中央に位置する魔王の住む城、ツウェンベルグだ。勝手にさらってきたことをまず謝罪する。それと人間の国の現状だが心配しなくていい」

「っっ!!」

そうだった!私が1時間以上歌わなければあっという間に氷点下まで落ち込んでしまうのに!!

慌てて立ち上がりとにかくいかないとと視界の端に見えることを確認していた扉に向かって走ろうとしたところで目の前に彼が立ちふさがる。


人間では到底できないであろうそのあまりにも早い動きに驚き今立ち上がったばかりの椅子に向かって1歩後ずさる。

「待って!違うんだ。心配しなくていい。君の代わりに私の力を込めた結界石を置いてきたんだ。君が維持していたのと同じ範囲で気温を保つように作用する結界を張るんだ。魔族を撃退する力はないが魔王である私の名前で結界の切れる1週間先まで決して人間の国に立ち入ることは許さないと言ってある。もちろん魔法を打ち込むような真似もさせない」


どういうことかさっぱりわからない。


私をさらい結界を張らせない利点など考えるまでもなく、魔族が人間の国に侵攻するためだろう。


「あなたをさらったのは交渉のための人質にするためだ。でもその直後から結界が消滅すると弱い者から交渉までの短い間に死にゆくのは目に見えているだろう?だから国としての意見をまとめる期間として1週間の猶予を与えたんだ。それが私の置いてきた結界石の意味だ」


この人は何を言っているのだろう?魔族は隙あらば侵攻し人間をかつてのように奴隷としてこき使おうと狙っている敵ではなかっただろうか?




今晩中にもう1話いけたらいきます・・・。間に合わなければ3話は明日!

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