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極悪非道の勇者さま  作者: 甲斐のTORA
1/2

魔王を倒す勇者と立ち上がる少年

まだ完結してもないのに違う話を投稿してすみません!!


こっちはホント不定期に投稿するので気長にお待ち頂けると有り難いです。


勇者って今じゃありがちな話だけど一風変わったものに仕上げられるよう頑張りますっ♪

「グアァァァッ!!」

人成らざる者から断末魔の叫び声が豪奢な城中に響いた。

禍々しい趣味の悪い部屋だったのが恐怖をさらに引き立てた、のかもしれない。常人なら。

激しい攻防の末、人成らざる者、大魔王エガレスに一太刀加えた勇者ユリヤは1ミリ足りとも恐怖を感じなかった。

彼の持つ魔を討つ聖剣レプリカの剣身には、ベットリと紫色の血が付き、止めの一撃だったと容易に分かった。

しかしエガレスは崩れ落ちず、

「我が体に一撃見舞うとは……がはっ。だがこれで終わりと思うなよ。第二第三の魔王が貴様を


「はい、チュドーン」


エガレスは最後まで話すことなく、奇怪なボイスと共に事切れた。


「何がしたいの?魔王……忘れた。魔王A。斬られたら斬られたでさっさとくたばればいいのに」


平淡な表情で顔色一つ変えず剣を振ったユリヤ。飛び散った紫の血がグロテスクに部屋を彩る。


「ま、やられ役にはやられ役の仕事があるのかな?」


訊いておきながら自己完結したユリヤは、労いの言葉を一つ掛けて部屋を後にした。カーテンの後ろに隠れていた子どもを見落として。



大魔王エガレスの城は、主を失っても静寂を破ることはなかった。部屋の各所に忍んでいたエガレスの配下達が一人残らず皆殺しにされていたからだ。

屍が折り重なる道をユリヤはなんの感慨もなく歩く。

死物はいつも嫌な臭いがする。でも嫌いではない。それだけ自分が魔物を殺してきた証になるのだから。


城外に出ると、乾いた海風がユリヤの肩まである長い黒髪を揺らす。

エガレスの城はヴァース大陸から遠く離れた島に位置している。なぜ大陸を離れた島に建設したのか?昔迫害を受けた故の事なのかは今や知る由もない。


「さ、血生臭いゴミを燃やそう」


ポツリと呟くと、ユリヤは左手を右に構えた剣に向け、


「体内のマナに問う。紅き激情の炎を表出し、刃を変質させよ。」


スペルを唱えると、聖剣レプリカの銀色の刀身が消え、燃え盛る炎が噴出してきた。

炎の全長はおよそ二メートルと、一般の刀とは大いに異なっていた。

ヂリヂリと空気によってさらに燃え上がる炎剣に、面倒くさそうな顔をしたユリヤは剣を上段に構え直し、振り下ろした。


降り下ろした瞬間炎剣は揺らめきながらさらに刀身を伸ばし、城の端から端までを一刀両断した。

炎は切り口から全域に渡ってみるみるうちに城を黒焦げにした。

全てが燃え散るのを視認したユリヤはパチンと指を鳴らし、一瞬にして炎を消してのける。


「また服に臭い付いちまったか。ま、洗濯したらなんとかなるか」


勇者に相応しくないシンプルな青のレーザージャケットを羽織ったユリヤは、再び自己完結してその場を発った。


子どもは、すんでのところで地下室に身を潜めたおかげで一命を取り留めた。

炎が止むのを確認してから慎重に地上に出ると――

子どもは唖然とした。島いっぱいに建設されていたあの城は見るも無惨な姿に変容していたからだった。

焦土と化している、と表現すれば一番的確だろうか。全てが焼け焦げて、そこに何が存在していたか、生活していた自分ですら分からないほどだった。

立ち尽くして辺りを眺めている中、月の光に反射して輝く物が見えた。


手に取ると、それはロケットだった。

血よりもっと赤いルビーを中心においたシンプルなもの。

不自然にひとつだけ残っていた産物に、子どもは見覚えがあった。


五年前、子どもが病に伏していた頃に今まで一度も言葉を交わしたことのなかったエガレスが一言、


「これでお前の病気は治る」


と言って授けられた物だった。

しかしエガレス配下の医師に、決して治ることのない不治の病だと宣告を受けていた。それにより子ども自身気休めとしてくれたんだなぁと思い込んでいたのだが、翌日きれいさっぱり完治していたのだ。

あれからエガレスに何度もロケットの意味を訪ねていたのだが、遂にその答えを聞けることはなかった。


不思議な力があるロケットの記憶が思い起こされた時、子どもの頬には涙が伝っていた。


「うぅ……」


それを皮切りに、


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!」


咆哮を上げた。

焦げた大地に、森に、空に、それは響き渡った……。


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