黒狼と白兎
更新遅れてすみません。さて、狼さんと兎さんご対面です。
「・・・ん・・・何・・・・?」
寝てからどれくらい経ったのか、ふわふわしたものが顔にあたって重い瞼を持ち上げた。
そして、驚きのあまり勢い良く飛び上がってしまった。
「?!!う・・・・兎?!何でこんな所に?!!」
目の前には新雪のように真っ白な兎が一匹、ちょこんと座っていた。
半狼になって変わったこと・・・・・
動物と話せるようになった。
身体能力が狼並みになって、夜目が利くようになった。
反射神経が良くなって僅かな気配でも察知できるようになった。
半狼になっても変わってないこと・・・・・
食べ物。
昼行性であること。
一度寝るとなかなか起きないこと。
・・・・故に、一度寝てしまった私は兎がいることに気が付かなかった。
でも、どうして兎なんかが・・・?
この森に住んでいるのは私だけ。
たまに来る動物だって、空を自由に飛ぶ鳥くらい。
狐や熊、まして兎なんては見たことがなかった。
「あなた・・・どうして此処にいるの?」
動物と話せることを活かし、私は兎に問うた。
けれど、答えが返ってこない。
「・・・・・」
暫く沈黙が続いた。
「何か話したら良いじゃない!!・・・もう、知らない!!」
沈黙に耐えられなくなった私は、兎にそう言い捨てて森の奥へと足を向けた。
サク・・・サク・・・サク・・・
私とは違う、地面を踏む音に振り替えると、さっきの兎が行儀良く座って此方を見ていた。
まさか・・・
私は無言で前を向き、再び歩き始めた。
サク・・・・サク、サク、サク・・・
つ・・・付いてきてる?!
何で?!
恐る恐る後ろを振り向くと、さっきと同じ距離に同じ体勢で座っている。
なんか・・・気まずい!
う~・・・
変な空気に堪えられなくなり、少し足早に歩いてみた。
けれど・・・
サクサクサクサク・・・・サクサク・・・・・
私の速さに合わせて兎も付いてくる。
「何なの、いったい!!付いてこないで!」
振り向きながらそう言い放つと、兎は真っ白な耳をペタンと伏せた。
その行動に罪悪感が生じて、それ以上は何も言わなかった。
どうせ、暫くしたら消えるだろうし・・・・
そう自分に言い聞かせ、歩を進めるけれど相変わらず付いてくる。
もう、勝手にして・・・
兎一匹にむきになるのもどうかと思って、私は諦めて自分の家がある所に戻ることにした。
‡‡‡‡‡‡
暫く歩いて、私はあることに気がついた。
「シーモの葉・・・切らしてたんだった」
シーモの葉は、パンとかケーキとか焼きりんごとかに使う香辛料のことで、この森にはわんさか生えているんだけど、王都では珍しい植物だ。
今日はアップルパイを作ろうかと思っていたんだけど・・・
む~・・・どうしようかな・・・
私は立ち止まって後ろにいる兎をチラリと見た。
兎は首を傾げながらスカイブルーの瞳を此方に向けてくる。
行くか・・・
私は近くにある小道に向かって歩いて行った。
小道と言っても、背の高い草が生えていて人ひとりがやっと通れるかというほど狭いから、普通の人間から見たら獣道だ。
けれど、私にとってこの森は庭みたいなもの。
私は特に苦労せずに目的地まで辿り着いた。
勿論、白兎も一緒に・・・・