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weirds of underground

【weird】


 1、(形)異様な、気味の悪い、この世のものでない

 2、(形)[口語]変な、奇妙な


 3、(名)[古風用法]運命

 ――くそっ、くそっ、くそっ、くそッ!



「ふざけんなッ、ふざけんなよぉぉぉぉぉぉぉおッ!」



 一体なんだ、なんなんだよっ!?

 なんで俺が――こんな目にっ!



「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」



 止まるな、止まるな、止まるな!

 止まったら――死ぬッ!

 足を動かせ、もっと、もっと早くっ!



「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はっ――」



 ――うわっ。

 つま先に、何かの硬い感触がした――。

 おいおい、嘘だろ……? こんなところでつまづくなんて――最悪だぁっ!

 高速で地面が近づいてくる――そのまま顔面から激突した。鼻と目元に激痛が走る――!



「うがっ……がっ!?」

 あまりの痛みに思わず叫びそうになった瞬間、再び顔が地面に叩きつけられた。開きかけの口の中に泥が一気に浸入してきて、怖ろしいほどの吐き気を催した。だが、頭が動かないせいで上手く吐き出すことすらできない。雨に濡れたコンクリートと鉄の匂いが、俺の鼻腔をじわじわと満たしていく。

 目が開けない。まぶたに裏に、強い閃光が走っている。

 ――そして、後頭部に痛みを伴った激しい違和感を感じる。

 ……靴?




「――てめーだな? 最近ここを荒らしてた、恥知らずな悪ガキ君は」




 ――悪魔の声。

 脊髄を突き刺すような、冷たく鋭い音。

 背筋が凍る。痛みと恐怖のせいで、上手く呼吸ができない。



「あ? そうなんだろ? なんとか言ってみろよ。ほれほれ」

 言葉こそ軽い調子ではあるが、俺の頭にかかる重さは秒単位で重くなってきていた。石や砂利が顔の皮膚に食い込んできて、まだ痛みが増幅していく――

「がっ、ぐっ、かはっ!」

「ん? なんだ、喋れねーのか? おお、まあそりゃそうか、俺が踏んでるんだし。しゃあねえな、まったく」

 自分勝手な言葉を言い終えると同時に、頭にかかっていた負荷がとれる。

 反射的に頭を上げた瞬間――今度は、顔の左側から衝撃が襲ってきた。

 一瞬、思考が完全に停止する。

 どうやら、横顔を思いっきり蹴られたらしい。頬が熱い。どろどろした血の味がする。

「くははっ! おぉい、もしもーし? 聞こえてるー?」

 痛みに悶絶する暇もなく、髪の毛を強引に上へと引っ張られる。抵抗する間もなく、体が上へとのけぞる。左目が開けられない。首筋がぴりぴりと痛んだ。口の中を砂利が暴れまわり、うまく噛み合わない歯ががたがたと音を立てた。

 ――こ、こここ殺される……っ!

「おーい、返事くらいしろよー。聞こえてんのかーって言ってんだけどなー。まさかさっきの蹴りで鼓膜でも破れたかぁ? けっ、情けねえ野郎だな! 俺がわざわざこんな薄汚ねえところまで追ってきた甲斐がねえだろうがっ、あぁ!?」

「ひっ、ひぃぃっ!」

 ようやくまともに動くようになった喉からは、実に男気のない悲鳴しか漏れなかった。

「くくっ、ははははっ! なんだぁ? ちったあいい声で鳴けんじゃねえか! それでいいんだよ、それで! ……ま、そのついでに、お前が知ってるいろんな情報を俺に詳しくお聞かせしてくれると尚更嬉しいんだが、なぁ……?」



 ぞわぞわっ、と鳥肌がたった。体中が悪寒と恐怖で満たされる。

 なんなんだ……? なんなんだよ、こいつ! 俺がっ、俺が一体何をしたっていうんだっ!



「……気にいらねぇ」

「へぶっ!」

 つかまれていた髪の毛をいきなり放され、不意打ちをくらった俺は再度地面に顔を叩きつけることになった。ゆるやかだった鼻血があふれるように流れてきているのが、嫌でも分かる。皮膚の内側で気味の悪い感触がした。

「気にいらねぇなぁ、その反抗的な態度。口に出さなくてもわかるんだぜ? たとえば、ここの筋肉にちょっと力が入ってるとか――」

「いだっ! いだだだだだっ!」

「ここの筋肉が、ぴくぴく痙攣してたりとか――なぁっ!」

「いっ――いだぁぁあっ! ぐあぁぁっ――」

 ――やばい、意識が――飛ぶ。

 ふわりとした感覚が、頭の中を襲った。

 目の前が、じわじわと真白に染まっていく――



「――おっと。危ねえ危ねえ」

 ……しかし、気を失うところまではいかなかった。

 失神寸前のところで、痛みが一気に無くなってしまったのだ。

「な……なん、で……?」

「わりぃな。まだまだ気を失ってもらうには早いんだよ。さ、喋ってもらおうか? 洗いざらい全部な」

「ぜ、全部、って……」

 足音がする。痛みのせいでまだ開きづらい目を必死にこじ開けて前を見ると、誰かの足が綺麗な線を描いて空へと伸びていた。



 錯覚だと、思った。



 ――鎖まみれの、ブーツ?



「ああ全部だ。お前の知ってること、全部だよ。クソガキ」

 まさか――こいつ?

 そう思った瞬間、また髪を掴まれて頭を強制的に上げさせられた。目の前に、黒い悪魔の歪んだ顔が見える――。




 紅い唇。

 切れ長の鋭い目。

 そして――長く艶やかな黒髪。

 記憶の断片と重なる、あの秀麗で可憐な表情。

「あ――あんた、もしかして――?」




「ああ。女で悪いか?」




 長細い目が猫のように光り――俺を狙っている。

 獲物だ。ライオンと鹿のような、救われない関係。

 ――下剋上など許されるわけのない、絶対的な上下関係。

「さて、そろそろ話してもらおうか。てめえの知ってることを、一つ残らず――な」




 刃物のような牙が、月光を受けて輝く。

 黒く輝く瞳の中に、来たる死を見出す。

 その姿はまるで――獣だった。




「うっ――うわあああああああああああああああああああああっ!」

 空気を切り裂くほどの絶叫が、辺り一面にこだました。

 そしてまた一人――哀れな羊の命は、終わりを告げる。






 ――全身の骨をことごとく折られた青年の死体が見つかったのは、その翌日、明け方のことだった。

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