「たぶん計画がある」
午前三時に啓示と共に目覚めた。
何がきっかけだったか分からない。たぶん寝てる間も働き続ける脳。たぶん純粋な絶望。たぶんただの運。
でもベッドで飛び起きた。心臓がドキドキして、思った:
トラックは俺のものじゃない。
シンプル。明白。
会社のものだ。山田運送の。俺は仕事で使ってるだけ。
別のを頼める。
隣で、ユキが寝ながら動いた。何か理解できないことを呟いてる。
彼女を見た。リラックスした顔。枕の上のボサボサの髪。
これ解決できる、と思った。クソ、解決できるんだ。
何週間ぶりかに、希望に似た何かを感じた。
残りの夜を計画に費やした。
理由なしに「別のトラックが欲しい」とは言えない。中村さんは千個も質問する。
理由が必要だった。信憑性のある何か。
車両の個人的問題?いや、曖昧すぎる。
操作系に馴染めない?三年後にバカげてる。
快適性の問題?たぶん。「このシートで腰が痛い」なら通るかも。
ああ。それだ。健康問題。誰がそれに反論できる?
六時、目覚ましが鳴った時、既に起きてて着替えてた。
ユキが寝室のドアから驚いて見た。
「もう準備したの?すごく早いじゃない」
「シフト前に中村さんと話さないと。仕事のこと」
「大丈夫?」
「ああ。むしろ、解決できそう...いくつか」
彼女は微笑んだ。安心して。「良かった。嬉しいわ。今朝はもっと...穏やかに見えるもの」
計画があるから、と思った。そして上手くいく。上手くいかないと。
キスして出た。
中村さんは七時に既にオフィスにいた。いつものように、書類とコーヒーに埋もれてる。
ドアをノックした。
「田中さん?入って入って。大丈夫か?」
「はい。あの...お願いがあるんです」
「言ってみて」
深呼吸した。
「トラックを変えたいんです」
中村が書類から顔を上げた。驚いて。
「変える?お前の日野?」
「はい」
「なんで?」
来た。落ち着け。
「快適性の問題で...シートが腰に問題を起こしてるんです。深刻じゃないですが、長いシフトの後に痛みが。別のモデルの方が姿勢に良いかと」
中村が数秒見つめた。
それから引き出しを開けてファイルを取り出した。
「見てみよう...利用可能な代替車両は...」
心臓がドキドキした。上手くいく。上手くいってる。
何枚かめくった。
それから止まった。
「んー。田中さん、これ見て」
パソコンのモニターを俺に向けた。
エクセルの表だった。車両登録 - 山田運送
運転手の名前の列。トラックモデルの列。それから...「事故記録」という列。
リストを目で追った。
山本博 - 日野500 (2017) - 軽微な事故3件 佐藤武 - いすゞギガ (2018) - 事故2件(ミラー破損、側面の傷) 木村優希 - 三菱ふそう (2016) - 軽微な事故4件
そして俺の名前。
田中健二 - 日野プロフィア (2019) - 事故0件
ゼロ。
中村が画面を指差した。
「見ろ、田中さん。お前のは一番新しいトラックだ。お前に割り当ててるのはお前だけが完璧な記録だから。他は全員小さな事故があった。大したことじゃないが、それでも損害。お前は?七年間。ゼロだ」
「分かりますが——」
「他の利用可能なトラックは古い。既に小さな問題があるやつもある。最高の車両をお前が一番相応しいのに、どうして他の誰かに渡せる?」
ダメだ。ダメだ。こんな風に終われない。
「でも俺の腰が——」
「シートを交換できる。鈴木さんが人間工学的なのを取り付けられる。最大二日。それでいいか?」
クソ。
「俺は...本当に別の車両が良くて...」
中村が眉をひそめた。
「田中さん、他に何かあるか?トラックの問題で俺に言ってないこと?」
言え。今がチャンスだ。全部言え。
でも何を言える?
「憑依されてます」?「人を殺してます」?
「いえ」最終的に言った。「問題ありません」
「じゃあ新しいシートで解決するはずだ。いいな?」
何ができる?強く主張したら変に見える。疑われる。
「...分かりました。ありがとうございます」
「どういたしまして。すぐ鈴木さんに言っとく。今日は普通にシフトやってくれ」
重い足でオフィスを出た。
計画失敗。
でも...他を試せるかも。
その夜、シフトの後、鈴木さんのところに行った。
「健二君!中村さんからシートのこと聞いたよ。明日注文する、いいな?」
「ありがとうございます。あの、鈴木さん...もう一つ」
「何?」
「最近...変な音がしてて。エンジンから。何か...分からないけど、不規則な唸り」
鈴木が眉を上げた。
「音?どんな音?」
「こう...吠えるような。振動とか。いつもじゃないけど、時々」
「んー。変だな。二週間前にチェックして完璧だったのに。でももう一回見よう、確実な方が良い」
鈴木について停めてある俺のトラックまで行った。
ボンネットを開けた。懐中電灯をつけた。エンジンをチェックした。
沈黙。
それから笑った。
「健二君、冗談だろ?」
「何ですか?」
「このエンジン完璧だぞ。見ろよ!綺麗、オイルまみれ、全てのパーツが新品同様。問題なんて一つもない。むしろ、工場から出たばかりみたいだ」
「でも俺は聞いた——」
「近くの別のトラックだったんじゃないか?ラジオとか?」
「いや、道路で俺一人で——」
鈴木が変な笑顔で見た。面白がってるのと混乱してるの間。
「健二君...褒めてほしいのか?」
「え?」
「このトラックのメンテ、超上手いよ。最高だ。でも褒められるために問題を作る必要ないぞ、な?」
何?いや、俺は——
「本当に、完璧だ。その調子で頼むぞ!」
肩を叩いて口笛吹きながら去った。
そこに立ち尽くして、トラックを見た。
駐車場の光の下でエンジンが輝いてた。
綺麗すぎる。完璧すぎる。
普通じゃない、と思った。三年使用後のエンジンはこんな風に残らない。
でも鈴木は何も変だと気づかなかった。
彼にとってはただ...よくメンテされたトラック。
翌日、決意して仕事に戻った。
問題があると納得させられないなら...自分で作る。
夜まで待った。デポが空っぽの時。セキュリティライトと沈黙だけ。
レンチを持ってトラックに近づいた。
心臓がドキドキした。バカみたいに感じた。夜の犯罪者。
でもやらないと。
ボンネットを開けた。
何を壊せば修理に時間がかかる?
タイミングベルト。ああ。それが壊れたら、トラックは動けない。新しいのを注文するのに何日もかかる。
震える手で、ベルトを切った。
パチン。
音が沈黙に響いた。
完了。
明朝始動しない。修理してる間に別のトラックをくれるはずだ。
ついに。
最終的な解決策じゃないが何かだ。
ボンネットを閉めて急いで去った。
翌朝早く着いた。不安で。
中村が入口で会った。
「田中さん!残念だが小さな問題がある」
やった!上手くいってる!
「お前のトラックが夜間に技術的故障を起こした」
やった!
「でも鈴木さんが既に作業してて、一時間で準備できるって。だから七時じゃなく九時のシフトができる。いいか?」
...何?
「一...一時間?」
「ああ!鈴木は超速い。もうほとんど終わってる」
でも...でも俺がベルトを切った。どうやって——
駐車場に走った。
鈴木がボンネットの下で陽気に口笛吹いてた。
「あ、健二君!これ見て!」
ベルトを見せた。
新品だった。ただの新品じゃない——完璧だった。ピカピカ。まだ新鮮なゴムの匂いがする。
「変だろ?ベルトが壊れてた。でも倉庫に完璧な予備があったんだ!あったことすら覚えてなかった。信じられない運!お前の日野にぴったりのモデル。あと十分で準備完了だ」
運。
満足そうに仕事をしながらボンネットを閉める鈴木を見た。
完璧なベルト。真新しい。ちょうど正しいやつ。誰も持ってたと覚えてない。
普段パーツを注文するのに何週間もかかる倉庫に。
氷のように冷たい考えが脳裏を横切った。
もしエンジンを壊してたら?倉庫に新しいエンジンが見つかる?完璧な、正確なサイズの、誰も持ってたと覚えてないやつが?
もしトラック全体を爆破してたら、外に停めてある同じ新しいトラックが見つかる?
ゆっくり車両の側面に近づいた。
昨夜つけた傷。
なかった。
金属は完璧。ピカピカ。塗りたてみたいに。むしろ——前より輝いてた。
ダメだ。
震える手で、ミラーに向かった。
引き裂いたミラー。手の中で壊れるのを感じた。
そこにあった。完璧に取り付けられてる。ひび割れなし。傷なし。完璧な角度。
ダメだ。
「健二君?大丈夫?」
鈴木が心配そうに見てた。首を傾けて。
「側面...」口ごもった。「傷が...深い傷が...」
「どんな傷?」鈴木が近づいて、車体に手を走らせた。「何も見えないぞ。このトラック完璧だ!マジで、健二君、どうやってるか分からないがすごい状態を保ってる」
「でも俺...昨夜...」
止まった。
何が言える?「俺が破壊工作した」?
鈴木が変な表情で見た。混乱してるのと軽く警戒してるの間。
「健二君...本当に大丈夫?誰かと話した方がいいんじゃないか。最近すごく...ピリピリしてるみたいで」
答えなかった。
トラックを見た。
ただ修理するんじゃない。
必要なものを...見つけるんだ。
誰も覚えてないベルト。
消える傷。
勝手にくっつくパーツ。
まるで意志があるみたいに。まるで機能し続けたいみたいに。
まるで...
トラックの冷たい側面に寄りかかった。足がほとんど支えられない。
生きてる何かに手を置いてるみたいだった。
冷たい、金属的。
でも生きてる。
「健二君、本当に、調子悪いなら中村さんに言って——」
「大丈夫です」囁いた。
嘘だった。
全然大丈夫じゃなかった。
その後の数日は悪夢だった。
また試した。何度も。
ヘッドライトを壊した。翌日完璧——そして鈴木が「偶然」倉庫の隅に「忘れられてた」同じヘッドライトを見つけた。
電気ケーブルを切った。翌朝機能してた。鈴木:「まあ、接触が緩んでたんだろ。今は完璧だ!」
シートにオイルをこぼした。翌日シートは真っ新、新品同様。誰が掃除したか誰も知らない。
毎回。
毎回毎回。
トラックが勝つ。
そして一週間後、全員が変な目で俺を見始めた。
山本が避ける。鈴木が俺を見ると囁きながら中村と話す。
頭がおかしいと思ってる。
いや、もっと悪い——わざとやってると思ってる。
一週間の失敗した試みの後、絶望してた。
ノックせずに中村のオフィスに入った。
「トラックに問題があります!」
「田中さん——」
「本当です!何かおかしいんです!エンジン、ブレーキ、全部!」
「鈴木が昨日チェックした。完璧だ。むしろ、工場から出た時より良い状態だ」
「違います!そんなはずない!何か...何かがおかしいんです!お願いします、別のトラックをください!」
中村が立ち上がった。心配そうに。
「田中さん、座れ」
「座りたくない!別の——」
「田中!」
黙った。
中村が深くため息をついた。
「聞け。ストレスを抱えてるのは分かってる。奥さんが先週電話してきた。心配してる。眠ってない、酒を飲んでる——今までしなかったのに——変だって」
ユキが電話した?ここに?
「何て言えばいいか分からなかった」続けた。「でも今分かる。疲弊してる。休息が必要だ」
「いえ、俺は——」
「一週間休暇をやる。有給で。家にいろ。休め。戻ってきたら、落ち着いて話そう」
「休暇なんていらない!ただ——」
中村が真っ直ぐ目を見た。
「田中さん。お前は最高の運転手だ。お前に多く投資してきた。でもこのまま続けたら、医者に診せる。お前のためにな」
メッセージは明確だった。
黙るか精神科医か。
沈黙した。
「よし」中村が優しく言った。「一週間取れ。自分のことを考えろ。家族のことを」
オフィスを出た。
山本が廊下で止めた。
「よう、健二。大丈夫?」
「ああ」
「鈴木がトラックについて文句ばっかり言ってるって。でも完璧だろ?むしろ、一番良いやつだ」
「...そう」
「じゃあ何が問題?」
答えなかった。
山本が声を落として、近づいた。
「な、金のことなら...分かる。たくさん働いてる、もっと貰うべきだ。でももっと良い頼み方があるんじゃないか、な?」
金?
「そうじゃ——」
「いやいや、分かる分かる。俺も昇給欲しいよ。でもお前は賢い。その調子で、いつか中村も折れるって!」
笑いながら去った。
全員が思ってる...昇給のために芝居してるって。
その夜、帰る前に中村が呼んだ。
「田中さん、ちょっと」
ため息ついて彼のオフィスに戻った。
「聞け。言ったこと考えた。そしてお前が正しい」
「...どういう意味ですか?」
「もっと貰うべきだ。七年間完璧。欠勤なし。遅刻なし。事故ゼロ。他全員の模範だ」
どこに行くつもりだ?
引き出しを開けて書類を取り出した。
「昇給をやる。月一万五千円増し。今月から遡及」
反応を待って見た。
「これは...すごくありがたいですが——」
「お前は相応しい。正直、もっと早くすべきだった。これ取るために...茶番をやらなきゃいけなくて申し訳ない」
茶番?
「でも今は」もっと厳しい口調で続けた。「トラックが壊れてるって言い訳でふざけるのはやめろ、いいな?完璧だ。お前も知ってる。俺も知ってる。鈴木も知ってる。欲しいものを手に入れた。だからもう終わりだ」
書類を差し出した。
「ここにサインしろ」
見た。昇給は本物だった。白黒で書かれてる。
拒否したら頭おかしく見える。恩知らず。疑われる。
サインしたら...閉じ込められる。永遠に。
ペンを取る時、手が震えてた。
サインした。
「素晴らしい!」中村が笑った。「じゃあ一週間後に。それと田中さん?本当に休め。必要だぞ」
書類を持ってオフィスを出た。
山本が見て親指を立てた。
「やると思ってたよ!天才!」
弱々しく笑った。
車に乗った。
バックミラーでデポを見た。
俺のトラックがそこにあった。停止してる。待ってる。
完璧。完璧すぎる。
いつも完璧すぎる。
逃げられない、と気づいた。
試した。失敗した。
トラックが勝つ。いつも。
パーツを見つける。修理する。メンテする。
仕事を続けたい。
そして俺は...
俺はあれと一緒に閉じ込められてる。
永遠に。
ハンドルに頭を預けた。
そして何年ぶりか分からないが、初めて、泣いた。
家に帰ると、ユキが強く抱きしめた。
「聞いたわ!昇給!健二、すごく誇りに思う!」
「ありがとう」囁いた。
「それに一週間の休暇!やっと一緒に時間過ごせるわね!どこか行く?それとも家でゆっくりリラックスする?」
「ああ。何でもいい」
彼女がキスした。
「解決できると思ってたわ。ストレスだけだって言ったでしょ?」
「ああ。正しかった」
その夜、ユキが幸せに隣で眠ってる間、起きたままだった。
たぶん計画がある、と思ってた。
たぶん解決できる。
たぶん逃げられる。
間違ってた。
全部。
時々、完璧な解決策こそが完璧な罠だ。そして俺?俺はその中に留まる契約にサインしたばかりだ。




