「確信している、終わった。たぶん」
月曜日の朝。晴天。
トラックに乗り込んだ。
口笛を吹きながら。
バカな歌。陽気な。
エンジンをかけた。
唸った。
「おはよう、友よ!」とダッシュボードに言った。
まるでトラックが答えられるかのように。
まるで俺たちが……友達かのように。
笑った。
軽い笑い。屈託ない。
車庫から出た。
山本が奇妙な目で見た。
「田中さん……大丈夫か?」
「大丈夫?完璧だ!いい日だろ?」
「え……ああ……」
「じゃあ行くぞ!世界が待ってる!」
離れた。
口笛を吹き続けながら。
山本がそこに残った。
困惑した表情で。
でもどうでもよかった。
何もかもどうでもよかった。
家は空っぽだった。
一週間。
ユキが出て行った。
哲也を連れて。
スーツケース一つ。バッグ二つ。
そして去った。
どこに行ったか言わずに。
番号も残さずに。
メモだけ。
「もう無理。ごめんなさい。」
四つの言葉。
結婚の終わり。
家族の終わり。
全ての……終わり。
そして俺は?
俺は笑った。
メモを読んで笑った。
だって何ができる?
泣く?もう何ヶ月もやった。
懇願?意味がない。
だから笑った。
そして笑い続けた。
だってもう……自分の人生を受け入れるしかない。
配送は簡単だった。
東京-横浜。往復。
歌いながら運転した。
ラジオで聞いた歌。
歌詞を覚えてなかった。
だから作った。
「ラララ……トラックが行く……ラララ……誰かが死ぬ……ラララー!」
また笑った。
バカな歌。
でも面白い。
途中で歩道に男の子を見た。
十八、たぶん十九歳。
リュック。アニメのロゴ入りパーカー。ヘッドフォン。
そして手には……ライトノベル。
トラックが跳ねた。
わずかに。
いつものように。
そして俺は……
俺は男の子を見て微笑んだ。
広い笑み。
「見ろよ!」と声に出して言った。「完全にファンタジー世界に没入してる!なんて馬鹿だ!」
笑った。
大声で。
「あははははは!何が待ってるか知らないな!たぶん明日だぞ、友よ!たぶん明日はお前の番だ!」
また笑った。
世界で一番面白いことだった。
男の子は聞こえなかった。
読み続けた。
幸せな奴。
馬鹿で物語に没頭できる幸せな奴。
俺は……
俺はすでに物語の中にいた。
そして結局面白くなっていた。
運転を続けた。
普通のことを考えながら。
野球の試合。もう会えない哲也。ユキのカレー。
普通のこと。
普通の人が考えること。
俺は……
俺はもう普通じゃなかった。
何ヶ月も。
たぶん何年も。
でもいい、全部いい。
だって今日は……
今日終わる。
時計を見た。
11時38分。
あと五分。
微笑んだ。
鶴見の踏切が遠くに現れた。
二百メートル。
心臓がもっと強く鳴り始めた。
でも口笛を吹き続けた。
同じバカな歌。
ラララ。
11時40分。
百メートル。
哲也のことを考えた。
彼の笑顔。
たぶんいつか……
たぶんいつか許してくれる。
そこにいなかったこと。
……不在だったこと。
たぶんだめだろう。
関係ない。
もう何も関係ない。
11時42分。
赤信号が点滅し始めた。
チンチンチンチン
五十メートル。
遮断機が下がり始めた。
減速した。
誰でもするように。
これからすることをしようとしてない普通の人がするように。
三十メートル。
トラックが止まろうとした。
従順に。
静かに。
疑ってない。疑えない。
二十メートル。
遮断機が半分。
十メートル。
ほぼ閉じた。
そして……
全力で加速した。
エンジンが轟音で爆発した。
機械的じゃない。
怒り狂って。
トラックが理解した。
遅すぎた。
衝突。
遮断機が粉砕された。
木がどこにでも。プラスチック。金属。
そしてトラック—トラックが—線路の上にいた。
動けない。
止まった。
まさに俺が望んだ場所に。
誰かが叫ぶのが聞こえた。
ドアを開けた。
飛び出した。
アスファルトで転がった。
痛み。肩。背中。膝……でも立ち上がった。
走った。
十メートル。二十。三十。
そして振り返った。
トラックがそこにあった。
線路の上で動けない。
エンジンが唸った。必死に。無力に。
動こうとしていた。
でも車輪が挟まっていた。
逃げられない。
そして遠くで……
ホーーーーン。
列車の警笛。
どんどん近づく。
見た。
そして微笑んだ。
人生で一番広い笑み。
「やった」と囁いた。
列車が現れた。
眩しいライト。
緊急ブレーキ。
でも速すぎる。
重すぎる。
遅すぎる。
ホーーーーン。
三秒。
二。
一—
ドーーーーン。
衝撃は……恐ろしく、美しかった。
これまで聞いた中で最も美しい音。
金属と金属。
爆発。
トラック—悪魔、門、怪物—が持ち上げられた。
投げられた。
破壊された。
コンテナが外れた。飛んだ。激突した。
赤いキャビンが潰された。くしゃくしゃに。何もかも。
残骸。
煙を上げる残骸だけ。
列車が部分的に脱線した。
でも止まった。
煙。埃。火。
そして俺は……
俺は膝をついた。
そして笑い始めた。
狂人のように笑った。
完全に頭がおかしくなった人のように。
「あはははははは!」
涙が流れた。
トラック—悪魔、門、あのクソが—破壊された。
悪魔が、門が、あのクソが……数百トンの時速500キロの列車に勝てると思ったか?
煙を上げる残骸に。見た。そして微笑んだ。「これがテクノロジーだ、クソ野郎!」
「あはははは!やったぞ!」
純粋な、狂った、錯乱した喜び。
「やったぞ!」
空に向かって叫んだ。
道に。
煙を上げる残骸に。
「やったぞ、クソみたいな門!クソ悪魔!」
立ち上がった。
よろめきながら。
「最後に勝ったのは俺だ!俺だああああ!」
また笑った。
また。
また。
喉と腹が痛くなるまで。
もう息ができなくなるまで。
そしてまた倒れた。
アスファルトに座って。
残骸から三十メートル。
見ながら。
死んだトラックを見ながら。
やっと死んだ。
「終わった、」と囁いた。「終わったんだ。」
そしてまた笑った。
静かに。
疲れた子供のように。
「終わった。」
群衆が集まり始めた。
家から。店から。
叫び声。パニック。
「消防を呼べ!」
「列車に誰かいるのか?!」
「何が起きたんだ?!」
サイレン。
どんどん近づく。
俺は座ったまま。
見ながら。
ただ見ながら。
その素晴らしい光景の一秒一秒を味わいながら。
誰かが大丈夫か聞いた。
答えなかった。
別の誰かが立たせようとした。
無視した。
だって俺は……
俺はやっと自由だった。
何ヶ月も経って。
全ての後。
自由。
どれくらい時間が経ったかわからない。
五分。十分。二十分。
救急車が来た。消防。警察。
そして……
それから声が聞こえた。
後ろから。
「田中健二。」
声は奇妙に馴染みがあった。
この声を知っている。
振り返った。
ゆっくり。
そして見た……
佐藤武。
同僚。
友達。
手に拳銃を持っていた。
俺に向けて。
「動くな。」
彼を見た。
そして笑った。
また。
だってこれは……馬鹿げていた。
全部馬鹿げていた。
「佐藤さん!」と言った。「どうしたんだ?」
「俺の名前は石川涼。スコットランドヤード刑事。田中健二、お前を逮捕する。」
「刑事?お前が?」
近づいた。
「逮捕?何で?」
三歩。四歩。
拳銃は常に向けられている。
「人身売買。犯罪組織への所属。四件の殺人。」
「殺人?」
また笑った。
「俺は誰も殺してない。」
「被害者は消えた!お前に会った後に!」
「消えた、そう。でも死んでない。」
「じゃあどこにいる?!」
「知らない。」
どう説明できる?
「証拠がある、」と石川。「ノート。全ての記述。年齢。場所。『依頼人一号。依頼人二号。』そして最後の……十四歳。『息子に似てた。とても優しかった。』お前の筆跡。お前の指紋!」
ああ。
ノートか、そうだ。
もちろん。
「あのノートは……お前が思ってるものじゃない。」
「じゃあ何だ?!」
「……複雑だ。」
「もう嘘はやめろ!」
さらに近づいた。
二メートル。一メートル。
拳銃が頭に。
「六人逮捕した。カルトを壊滅させた。そしてお前は……お前は証拠を消すためにトラックを破壊した。でも遅すぎる!俺がお前を見つけた。」
「カルト?何言ってんだ?どのカルト?」
「とぼけるな!」
「狂ってるのか?カルトなんて知らない。」
「嘘つきめ!」
「聞け—」
「逮捕する!」
顔と顔が合った。
道の真ん中で。
混沌に囲まれて。
救急車。消防。群衆。
そして拳銃を持つ彼。
そして俺は……
俺はもう失うものが何もなくて何もかもどうでもよかった。
「わかった、」と静かに言った。「逮捕しろ。」
石川が驚いたようだった。
「何?」
「逮捕しろ。どうでもいい。」
「気に……しないのか?」
「しない。ユキは俺を小児性愛者だと思って出て行った。哲也も。トラックは壊れた。クビになる。もう何もない。だから……やるべきことをやれ。」
彼の目を見た。
「でも一つ知っておけ。俺は誰も殺してない。そしてお前の『カルト』は……存在しない。」
「嘘つき!」
「好きに思え。」
目を閉じた。
待った。
手錠。逮捕。何でも。
でもそれから……
それから聞こえた。
音。
馴染みのある。
不可能な。
ホーーーーン。
目を開けた。
振り返った。
二人とも。
道の方へ。
そして見た。
トラック。
赤い。
全く同じ。
全く同じ。
こちらに来る。
全速力で。
向かってくる。
血が凍った。
「だめだ。」
ありえない。
破壊したんだ。
破壊した。
でもそこにいた。
それとも……
たぶん同じじゃない。
たぶん他にもある。
たぶん……
ホーーーーン。
もっと近く。
「動け……」と石川が叫んだ。
走ろうとした。
俺も続こうとした。
でも遅すぎた。
そしてトラックは速すぎた。
ホーーーーン。
十メートル。
五。
三—
暗闇。
完全な。
完璧な。
どれくらい時間が経ったかわからない。
でも痛みはなかった。
恐怖もない。
ただ……
何もない。
温かさ?浮遊?
浮いている?
光。
温かい。金色。
ゆっくり目を開けた。
混乱して。
もう道にいなかった。
俺は……
俺は横たわっていた……石の上?
冷たい。滑らか。
起き上がった。
頭が回る、よろめく。
体が痛い。
でも無事。
生きている。
周りを見た。
部屋にいた……いや。
ホール?
大きい。
巨大。
高い石の壁。旗が掛けられている。知らない紋章の旗。
そして目の前には……
玉座?
金色。装飾された。
そして玉座には老人。
頭に王冠。王の衣装。
隣には:優雅な女性。
そして周りには……鎧の騎士たち。杖と尖った帽子の男—占星術師?魔法使い?
全員が俺を見ていた。
笑顔で。
希望を持って。
「何が……」声がかすれて出た。「ここはどこだ?」
そして見た。
隣に。
石川。
彼も横たわっていた。
彼も起き上がっている、混乱して。
「何だこれ……」と呟いた。
王が玉座から立ち上がった。
一歩前に出た。
腕を広げた。
そして厳粛で喜びに満ちた声で言った:
「ようこそ、勇者たち!召喚は成功しました!魔王の脅威から我々の世界を救ってください!」
【第一部 完】
「俺はあらゆる異世界転生で見かける呪われたトラック運転手で、みんなを異世界送りにしてるけど、俺のせいじゃない!」
https://suno.com/song/21d7e664-f628-44f8-a39e-cc0d3d278fa3




