「たぶん――全てを失ったかもしれない」
木曜日の朝。
午前五時に目覚めた。
よく眠れなかった。
悪夢。また。
哲也が俺を見ていた。
恐怖と共に。
恐怖と共に。
「パパ…なんで?」
そして俺は答えられなかった。
起き上がった。
コーヒー。シャワー。服。
機械的なルーティン。
空っぽ。
携帯を取った。
連絡先を見た。
ユキは電話してこなかった。
三日間。
三日間の沈黙。
せめて…せめて哲也の声を聞かないと。
電話した。
ユキじゃない。
彼女の妹。
明子。
呼び出し音。
一回。
二回。
三回。
「もしもし?」
「明子さん。健二です」
間。
「健二さん」
声が冷たい。
とても冷たい。
「哲也と…哲也と話せますか?」
「今はいいタイミングじゃないわ」
「でも俺の息子です。たった二分—」
「わかってる。でもユキが…話さない方がいいって」
「話さない方がいい?なぜ?!」
「健二さん、説明するのは私の役目じゃない。ユキと話して」
「試した!返事がない!」
「じゃあたぶん…たぶんなぜかを理解すべきね」
「俺は何もしてない—」
「何をしたかしてないかは知らない。でも妹は怯えてる。そして哲也は…哲也は毎日あなたのことを聞くの。でも彼女は駄目だって」
「お願いです。ただ—」
「ごめんなさい、健二さん。できない」
カチッ。
切った。
携帯を手に持ったまま残された。
押しつぶすような沈黙。
「哲也が俺のことを聞いてる」
囁いた。
「なのに俺は話すこともできない。何だこれは?」
午前九時。
仕事場にいた。
トラックの中。
止まったまま。
出発できなかった。
電話が鳴った。
知らない番号。
「もしもし?」
「田中健二様ですか?」
「はい」
「私は弁護士の渡辺博と申します。あなたの妻、田中ユキの代理人です」
心臓が止まった。
「弁護士?」
「はい。お電話したのは、あなたの妻が未成年者田中哲也の一時保護を正式に申請したことをお知らせするためです」
「何?!」
「児童保護に関する日本法第二十八条により、親は子供の安全に重大な懸念がある場合、一時保護を申請できます」
「でも俺は何もしてない!」
「評価するのは私の役目ではありません。ただお知らせするために電話しました。児童相談所の評価が終わるまで、未成年者に近づくことはできません」
「息子に…息子に会えないってことですか?」
「正確です。直接の接触なし。訪問なし。状況が明らかになるまで」
「明らかに?どんな状況?!俺は—」
「あなたの妻は記録された重大な懸念を表明しています。児童相談所が数日以内に面談のためご連絡します」
「記録された?何を…何を言ったんだ?」
「詳細は話せません。ですが田中さん…法的支援を求めることをお勧めします。そしてたぶん…たぶん専門的な支援も」
「どういう意味だ?」
「誰かと話すことが有益かもしれないという意味です。セラピスト。心理学者。あなたが直面している…何であれ直面していることに対処していることを示すために」
「俺は何も直面してない!普通だ!」
間。
「わかりました、田中さん。郵送で正式な通知を受け取ります。良い一日を」
カチッ。
切った。
座ったまま残された。
トラックの中で。
手が震えていた。
一時保護。
哲也との接触禁止。
児童相談所。
セラピスト。
「何が…一体何が起きてるんだ?」
運転できなかった。
こんな状態では。
こんな状態では無理だ。
中村に電話した。
車庫の責任者。
「中村さん。田中です。今日…体調が良くないんです。休めますか?」
「田中さん?大丈夫か?」
「はい。ただ…個人的な問題で」
「わかった。休め」
「ありがとうございます」
切った。
トラックから降りた。
家に戻った。
歩いて。
ゆっくりと。
ゾンビのように。
着いた。
入った。
空っぽの家。
沈黙。
ソファに座った。
携帯を取った。
ユキに電話した。
しなければならない。
彼女と話さなければ。
呼び出し音。
五回。
六回。
それから応答した。
「健二」
声が冷たい。
遠い。
「ユキ。一時保護って何なんだ?!」
「必要なの」
「必要?!俺は哲也の父親だぞ!」
「わかってる。でもリスクは…リスクは冒せない」
「何のリスク?!俺は息子を傷つけるようなことは絶対しない!」
「たぶんしない。たぶんする。でももうわからない。あなたが誰なのかもう知らない」
「俺は君の夫—」
「知らない人よ。恐ろしいことを隠している知らない人」
「何?!何を?!」
「よく知ってるでしょう、健二」
「知らない!知らないんだ!」
「見つけたの。隠していたものを見つけた」
血が凍った。
「何を…何を見つけたんだ?」
「ノート。引き出しの中。よく隠してあった。でも見つけた」
「ユキ、あのノートは—」
「言い訳は聞きたくない。嘘も聞きたくない。ただ治療を受けてほしいの」
「治療?!」
「そう。助けを求めなさい。専門的な。心理学者。精神科医。誰でも」
「でも俺は—」
「病気なのよ、健二!そして助けが必要なの!手遅れになる前に!」
「手遅れって何が?!」
「何かする前に!誰かに!それとも…それとも哲也に!」
「哲也?!俺は絶対—」
「あなたが書いたのよ!『息子に似ていた』!『哲也を見ると彼が見える』!十四歳の少年よ!」
泣いていた。
言葉の間で。
「どうして…どうして彼を見て…そんなことを…考えられるの?!」
「ユキ、違う!君が思ってることじゃない!」
「じゃあ何なの?!」
「俺は…説明できない…」
「なぜできないの?あまりにも恐ろしいから?!」
「違う!なぜなら…なぜなら信じてもらえないから!誰も信じてくれない!」
「試してみて」
「え?」
「試して。言って。説明して。たぶん…たぶん理解できるかもしれない」
沈黙。
どう言えばいい?
どうやって?
「呪われたトラックが俺に人を轢かせる」?
いや。
不可能。
「できない」
「じゃあ何も言うことはないわ」
「ユキ—」
「助けを求めて、健二。お願い。私のためじゃなくても…哲也のために。彼のためにして」
「ユキ待って—」
カチッ。
切った。
携帯を持ったまま残された。
沈黙。
死んでいる。
全てのように。
ソファに座った。
頭を手で抱えた。
「何を見つけたんだ?」
考えた。
家。
俺の物。
何か…
そして理解した。
ノート。
日記。
記録。
「だめだ」
飛び上がった。
寝室に走った。
引き出しを開けた。
書類の下を探った。
何もない。
ノートがない。
「クソ。クソッ」
彼女が持って行った。
彼女が見つけた。
そして読んだ。
でも…
でも暗号だった。
「依頼人。」「接触。」「契約。」
曖昧な用語。
誰も本当には理解できない。
誰も—
止まった。
頭の中で読み返した。
書いた言葉を。
「接触 #1. 依頼人:男性、二十歳」
「接触 #2. 依頼人:男性、三十八歳」
「接触 #3. 依頼人:男性、二十五歳」
「接触 #4. 依頼人:男性、十四歳」
ああ神様。
ああ神様だめだ。
知らない人の目では…
ユキの目では、すでに俺を疑っていたユキの目では…
見えるだろう…
男性との「接触」。
男性の「依頼人」。
全員若い。
詳細な身体的描写。
「カジュアルな服装。黒いパーカー。ジーンズ」
まるで研究したかのように。
「読書に非常に興味を持っている」
まるで習慣に気づいたかのように。
「完全に没頭」
まるで観察したかのように。
その前に…
その前に何を?
そして最後の。
少年。
「これまでで最も困難だった。ただの少年だった。息子に似ていた。同じ年齢、同じ無邪気な視線、同じ読書への没頭の仕方。とても優しい。無防備」
「今哲也を見ると…彼が見える」
血が凍った。
「いや。いやいやいやだめだ」
床に崩れた。
頭を抱えて。
「彼女は思ってる…彼女は俺が…」
売春?
たぶん浮気?
それともたぶんもっと悪いこと?
たぶんずっと、ずっと悪いこと?
十四歳の少年。
「とても優しい」
「無防備」
「息子に似ていた」
「ああ神様。彼女は俺が小児性愛者だと思ってる」
吐き気が込み上げた。
トイレに走った。
吐いた。
全部。
また。
また…
トイレの床に座った。
壁に背を預けて。
頭がぐるぐる回っていた。
「だからか」
囁いた。
「だから哲也に会わせたくないんだ」
なぜなら彼女は思っている…
息子が危険だと。
俺から。
自分の父親から。
「それに法的保護。児童相談所」
全てに意味があった。
恐ろしい、壊滅的な意味が。
「どうやって説明すればいい?」
どうやって真実を言えばいい?
「呪われたトラック。世界間の扉。理想的な候補者」
誰も信じない。
絶対に。
もっとおかしく見える。
もっと危険に。
「警察にノートを見せたら?」
説明しようとしたら?
逮捕される。
即座に。
四人の男性「依頼人」。
全員「消失」。
痕跡ゼロ。
見えるだろう…
ユキが思っている通りに見える。
「罠にかかってる」
空っぽのトイレに向かって声に出して言った。
「何を言っても…何をしても…有罪に見える」
そして真実は…
真実はあまりにも馬鹿げていて信じられない。
「全てを失った」
立ち上がった。
ゆっくりと。
鏡を見た。
そして見た…
知らない人を見た。
くぼんだ目。青白い顔。無精髭。
見える男…
ユキが思っている通りに見える男。
病気。
危険。
壊れている。
「たぶん…たぶん彼女は正しい」
鏡に映る自分に囁いた。
「たぶん本当に狂ってる(たぶん本当に狂ってる)」
なぜなら俺が生きている現実は…
俺が生きている現実は…
どんな説明よりも狂っているから。
その午後、何もしなかった。
ソファに座ったまま。
天井を見つめて。
考えていた。
ユキのこと。哲也のこと。ノートのこと。
全てのこと。
そして理解した。
出口がないと理解した。
もう。
何をしても…
何を言っても…
終わった。
結婚。
家族。
全て。
なぜなら説明不可能なことをどう説明できる?
防御不可能なことからどう身を守る?
できない。
だから…
だから負けた。
完全に。
全面的に。
取り返しがつかないほど。
電話が鳴った。
見た。
佐藤。
俺の「友達」。
まだ唯一の人…
応答した。
「佐藤さん」
「田中さん!元気?今日仕事で会わなかったね」
「家に…家にいる。体調が悪くて」
「大丈夫?」
「いや。何も大丈夫じゃない」
「話したい?」
話したかった。
必死に。
でも何を言える?
「妻が俺を小児性愛者だと思ってる。呪われたトラックの被害者を描写したノートを見つけたから」?
「いや。ありがとう。ただ…一人でいる必要がある」
「わかった。でも気が変わったら…電話して。いい?」
「わかった。ありがとう」
切った。
そして一人で残された。
沈黙と。
考えと。
壊滅的な確信と…
たぶん…
たぶん本当に全てを失ったという確信と。
ソファに座った。
空っぽの家の中で。
ユキがいない。
哲也がいない。
誰もいない。
セメントのように重い沈黙と共に。
円を描いて回り続ける考えと共に。
いつも同じ考え。
いつも同じ結論。
たぶん…
たぶん本当に全てを失った。
妻。
息子。
家族。
評判。
人生。
全て。
そして取り戻す方法はない…
絶対に取り戻す方法はない…
二度と。
時に真実はあまりにも馬鹿げていて信じられない。そして嘘は…嘘の方が真実に見える。なぜなら現実は論理的であるべきだから。意味をなすべきだから。そして意味をなさない時…真実が不可能な時…無実の者でさえ有罪に見える。いつも。




