「たぶん、全て失われた」
木曜の朝、6時に目が覚めた。
ユキはまだ寝ていた。
反対を向いて。いつものように。
何週間も触れ合っていなかった。
偶然にさえ。
ベッドは俺たちの間の海のようだった。
静かに起きた。
シャワー。服。コーヒー。
全て機械的。
全て空っぽ。
居間で、哲也は既に起きていた。
テレビの前。朝のアニメ。
「おはよう、パパ!」
「おはよう」
「見て!この主人公超強い!トラックに轢かれて今ファンタジー世界にいるんだ!」
コーヒーが手から落ちそうになった。
「何?」
「異世界転生!主人公がこの世界で死んで別の世界で目覚めるんだ!魔法とか、モンスターとか、冒険とか!すごいよね!」
「そして毎回トラックなんだ!みんなトラックくんって呼んでる!伝統みたいなもの!人をファンタジー世界に送る魔法のトラック!」
トラックくん。
トラックくんと呼ぶ。
まるでキャラクターのように。
友達のように。
まるで...それが何であるかを知らないかのように。
座った。
足が震えた。
「哲也...そんなこと言わないで」
「なんで?」
「なぜなら...死ぬことは素晴らしくない。別の世界に行くためでも」
「でもただのアニメだよ、パパ!本物じゃない!」
本物じゃない。
もし知っていたら。
もし父親が知っていたら...
「分かってる。でも...でもお前がそういうことを望むと言うと心配になる」
「俺は死にたくない!ただ冒険したいだけ!彼らみたいに!」
無邪気な目で俺を見た。
九歳。
たった九歳。
そして既に別の世界を夢見ている。
既にここから逃げたがっている。
普通か?
それとも...それともトラックが彼を呼んでいるのか?
いや。
いやいやいや。
妄想だ、健二。ただの妄想。
「分かった。でも今は学校の準備をしろ」
「オッケー!」
部屋に走った。
俺は座ったまま。
コーヒーは冷めていた。
飲まなかった。
二十分後、ユキがキッチンに入ってきた。
「おはよう」はない。
視線もない。
ただ沈黙。
哲也の朝食を準備した。
自分のコーヒーを準備した。
俺のは無視した。
「ユキ」
返事なし。
「ユキ、お願い」
「何、健二?」
声は冷たい。遠い。
「話したい。ただ...話したい」
「何について?あなたの『用事』?あなたの『仕事』?あなたの嘘?」
「嘘じゃ—」
「もういい!」
俺に向き直った。
目が赤い。疲れている。
「疲れたの、健二。あなたが真実を言うのを待つのに疲れた。幽霊と暮らすのに疲れた」
「俺はここに—」
「いいえ。あなたはここにいない。あなたの体はここにある。でもあなたは...あなたはどこか別の場所にいる。何ヶ月も」
視線を下げた。
否定できなかった。
なぜなら本当だったから。
「ごめん」
「謝罪はいらない。夫が必要なの」
「努力してる—」
「十分じゃない」
キッチンを出た。
寝室のドアが閉まった。
決定的な音と共に。
そこに残った。
一人で。
いつものように。
職場では全てがルーティンだった。
積み込み。確認。出発。
山本が挨拶した。
佐藤—武—が微笑んだ。
「おはよう、田中さん!」
「おはよう」
「大丈夫?疲れてるみたいだけど」
「ああ、ただ...眠れない夜だった」
「分かります。あのね、土曜はすごく楽しかったって歩美がずっと話してるんです!絶対またユキさんと会いたいって!」
「ああ、彼女もだ」
嘘だった。ユキが何を望んでいるか分からなかった。
もう話さない。
「完璧!じゃあすぐまた何か企画しましょう!」
「ああ」
トラックに乗った。
俺のトラック。
いや。俺のじゃない。
一度も俺のものじゃなかった。
たぶん俺がトラックのもの。もう分からない。
何か別のものに属している。
古い何かに。暗い何かに。止められない何かに。
エンジンをかけた。
うなった。普通。
でも感じた。
存在を感じた。
常にそこに。常に潜んでいる。
待っている。
次を。
ルートはシンプルだった。
東京-横浜。配達。帰還。
軽い交通。普通の日。
横浜高速道路にいた時、見た。
少年。
その区間で高速道路に沿った歩道を歩いていた。
十四、たぶん十五歳。
学校の制服。背中にリュック。
耳にイヤホン。
そして手に...
ライトノベル。
カラフルな表紙。長いタイトル。アニメの少女。
血が凍った。
いや。
また嫌だ。
お願いまた嫌だ。
でも既に感じていた。
トラックが目覚めるのを感じた。
エンジンが唸った。
その音を認識した。
機械的な音じゃない。
生きている音。
飢えている。
「いや」と囁いた。「いや、子供だ。子供だ」
ハンドルが振動した。
抵抗を感じた。
「いや!」
アクセルが押された。
勝手に。
「いやああ!」
ハンドルを左に引いた。全力で。
でもどうしようもなかった、前にも何度も経験したように。
トラックは出口に向かっていた。
脇道に向かって。
少年に向かって。
「お願い」と誰もいないところに叫んだ。「お願い彼じゃない!ただの子供だ!十四歳だ!」
でもトラックは聞かなかった。
一度も聞いたことがなかった。
出口に入った。
少年は百メートル先。
八十。
六十。
読んでいた。完全に夢中。
他の者のように。
いつものように。
クラクションを鳴らした。
また。また。また。
「逃げろおおお!」
五十メートル。
四十。
少年が顔を上げた。
一秒あった。
一つの、不可能な一秒。
俺たちの目が合った。
そして見た...
哲也を見た。
哲也じゃなかった。
知っていた—髪が違う、目が違う、哲也は五歳年下—
でも不可能な一秒の間...
歩道にいる息子を見た。
夢中で読んでいる息子を見た。
顔を上げる息子を見た。
理解する息子を見た。
遅すぎる。
いつも遅すぎる。
三十メートル。
二十。
ハンドルと戦った。曲がろうとした。ブレーキをかけようとした。何かしようとした。
でもトラックは...
トラックは望んでいた。
十メートル。
少年が走ろうとした。
遅すぎる。
五メートル。
「ごめん!」と叫んだ。
そして...
ドン。
鈍い。和らげられた。
いつものように正確に。
トラックが止まった。
即座に。
アイドリング。
まるで何も起きなかったかのように。
座ったまま。
ハンドルに手。
震えている。
息が嗚咽になる。
子供。
子供を轢いた。
降りた。
足がほとんど支えられなかった。
前を見た。
何もない、いつものように。
トラックの下を見た。
何もない。
後ろを見た。
何もない。
遺体なし。血なし。痕跡なし。
ただリュックだけ。
地面に。トラックから三メートル。
開いている。
ノートが散らばっている。ペン。そしてライトノベル。
表紙が上を向いて。
タイトル:「無限の力で異世界転生」
二つに折れて吐いた。
激しく。
胃の中の全て。
コーヒー。胆汁。酸。
膝に手。
痙攣で体が揺れる。
そして吐き気の合間に...
嗚咽。
吐くだけじゃなかった。
泣いていた。
道の真ん中で。
子供のように。
そして終わった時...
終わった時、泣いた。
道の真ん中で。
別の世界に送ったかもしれない子供のリュックの前で。
でもこれは俺が殺人者だという事実を変えない。
どれくらいそこにいたか分からない。
五分。十分。二十分。
それから聞いた...
リリリン。
電話。
トラックの中。
ダッシュボードに。
起き上がった。
ゾンビのように歩いた。
キャビンに乗った。
画面を見た。
「佐藤武」
いや。
いや、今じゃない。
今じゃない。
でも応答しなければ。
応答しなければ...疑わしく見える。
普通に見えなければ。
いつも普通に。
緑のボタンを押した。
「も、もしもし?」
「田中さん!元気?佐藤です!」
陽気な声。親しみやすい。
まるで世界が終わったばかりじゃないかのように。
「ああ...やあ、佐藤さん...」
「聞いて、土曜は楽しかったって言いたくて!ユキと歩美はもう友達になってる!」
少年。
ドン。
消えた体。
「ああ...ああ、楽しかった...」
「大丈夫?何か...変だけど」
普通の呼吸を強いた。
「いや、ただ...運転中。渋滞」
「ああ分かった!まあ、すぐまた会いたいって言いたかっただけ!コーヒーでも?俺たち二人だけで?夕食で話したこと...もっと話したくて」
霊的なこと。より大きな力。運命。
「あ、ああ...もちろん...」
「いいね!じゃあ今週電話するよ!ああ、歩美がユキとお出かけしたいって。コーヒーとかショッピング。いい?」
「ああ...いい...」
「完璧!じゃ、運転頑張って。明日職場で会おう!」
「ああ...明日...」
「じゃあね!」
切った。
電話を手に持ったまま。
陽気な声がまだ耳に。
俺は...
俺は子供を殺したばかり。
ハンドルに頭を預けた。
そしてそのまま。
不定の時間。
18時に車両基地に戻った。
三時間遅れ。
中村が止めた。
「田中さん、大丈夫?かなり遅いけど」
「すみません。渋滞。事故が...ありました。迂回しなければなりませんでした」
「事故?どこで?」
「横浜高速道路。でも巻き込まれてません。ただ...詰まってました」
嘘をついた。いつものように。
「分かった。いい。休め」
「ありがとうございます」
着替えた。
出た。
家に向かって運転した。
そして道中ずっと...
道中ずっと少年について考えた。
彼の両親について。
今頃心配しているだろう。
「なぜ学校から帰らない?」
「電話してみよう」
電話が鳴る。返事なし。
「たぶん友達と一緒」
でも時間が過ぎる。
そして彼は戻らない。
決して。
明日失踪届を出すだろう。
明後日新聞に載る。
「十四歳の学生失踪 - 家族不安」
そして俺は...
俺は知る。
俺のせいだと。
家で、ユキがキッチンにいた。
俺が入った時、見なかった。
「夕食は冷蔵庫。自分で温めて」
「ありがとう」
沈黙。
「哲也は?」
「部屋。宿題」
「分かった」
別の沈黙。
それから彼女が言った、振り返らずに:
「歩美が電話してきた。出かけたいって。私と彼女。そして彼女の他の友達と」
「いいよ」
「イエスって言った」
「オッケー」
「何も言うことない?」
何が言えた?
今日子供を殺したって?
崩壊してるって?
「いや。友達ができてよかった」
彼女がついに振り返った。
俺を見た。
そして彼女の目に何かを見た。
怒りじゃない。
もっと悪い。
諦め。
「もうあなたが誰か分からない」と静かに言った。
「ユキ—」
「いや。本当に。あなたを見ると...結婚した男を認識できない」
答えなかった。
なぜなら正しかったから。
その男はもう存在しなかった。
最初の事故の日に死んだ。
残ったもの...
残ったものはただの空の殻。
導管。
道具。
その夜、みんなが寝た後、机の引き出しを開けた。
ノートを取り出した。
「面談記録」
開いた。
三つの記入。
顧客#1 - 21歳 顧客#2 - 38歳 顧客#3 - 26歳
ペンを取った。
手が震えた。
書いた:
面談#4
日付:[現在の日付]
場所:横浜高速道路、脇道
時刻:~11:20
顧客:男性、~14歳。
標準的な学校の制服、アニメキーホルダー付き青いリュック、黒いイヤホン。黒い髪、優しい顔。アニメを読んでいた。完全に夢中、周囲に気づかず。
注記:全ての中で最も困難。
ただの少年だった。息子に似ていた。
哲也より数年年上だが、同じ無邪気な目、同じ読書に没頭する様子。
数年後の哲也かもしれなかった。
とても優しい。無防備。
接触は壊滅的だった。
考えるのを止められない。顧客は即座に消えた。
今哲也を見ると...彼を見る。
ページを見た。
四つ。
四人。
四つの命。
四つの破壊された家族。
そして最後...
最後は子供だった。
ノートを閉じた。
引き出しに戻した。
隠された。いつも隠された。
ソファに横たわった。
ベッドでは眠れなかった。ユキがドアを閉めていた。
天井を見た。
本当に出口がないかもしれないと思った。
山本宮司が言っていた。
「自分より大きなものは止められません」
「受け入れなければなりません」
でも受け入れられなかった。
受け入れたくなかった。
今日の後じゃない。
子供の後じゃない。
方法があるはずだ。
止める方法が。
破壊する方法が。
終わらせなければ。
何らかの方法で。
終わらせなければ。
でもどうやって?
分からなかった。
まだ。
でも方法を見つけなければ。
なぜならしなければ...
しなければ、たぶん...
たぶん次は哲也になる。
そして...
それは受け入れられない。
決して。
世界全体が燃えても。
死ななければならなくても。
哲也じゃない。
誰でも。でも彼じゃない。
目を閉じた。
でも眠らなかった。
なぜなら目を閉じるたびに...
少年を見た。
見開いた目。
恐怖。
ドン。
それから何もない。
かつて命があった場所にただ空白。
たぶん全て失われた、と思った。
たぶん...
たぶんもう希望はない。
越えるべきでない線がある。でもただの道具の時...コントロールがない時...とにかく越える。そして毎回、自分の一部を失う。何も残らなくなるまで。




