「俺は潜入できると確信している」
準備には三日かかった。
存在したことのない人生を構築するのに三日。
佐藤武。
34歳。京都生まれ。5年間結婚、2年前に離婚。子供なし。小さな物流会社の元運転手(6ヶ月前に倒産)。新しいスタートのため東京へ転勤。
書類:商業免許、前職の証明書(偽造だが、京都の人脈経由で確認可能)、元同僚からの推薦状(全てを確認してくれる潜入捜査官たち)。
個人的な経歴:転勤を正当化できるほど悲劇的で、疑いを招かないほど普通。
チームの林が私の練習を見守った。
「名前は?」と彼女が訊いた。
「佐藤武」と躊躇なく答えた。
「どこで働いていた?」
「京都エクスプレス物流。去年の3月に倒産。50人の従業員が解雇された」
「なぜ東京に転勤した?」
「離婚後、京都には思い出が多すぎた。やり直したかった」
「趣味は?」
「野球。ずっと阪神タイガースのファンだ。東京では難しい、みんなここではジャイアンツファンだから。それと映画、特にアメリカのスリラー」
「完璧」と林が笑顔で言った。「準備できてる」
月曜の朝、9時、山田運輸の本社に入った。
ジーンズ。カジュアルなジャケット。フォーマルすぎず、だらしなくもなく。
仕事を探している30代の男の外見。
受付が人事担当者の事務所へ案内してくれた。
ノック。
「どうぞ」
入った。
50代の男、眼鏡、書類に埋もれた机。
「おはようございます。佐藤武と申します。運転手の面接に来ました」
「ああ、佐藤さん。どうぞ、座ってください。私は中村です、シフトと採用の責任者です」
中村。
書類で見たのと同じ名前。田中の上司。
完璧だ。
座った。
「では」と中村が私の履歴書(偽造だが完璧)を開きながら言った。「経験がありますね。京都で3年」
「はい。京都エクスプレス物流。残念ながら閉鎖しました」
「分かります。この時期、多くの小さな会社にとって厳しい。それでなぜ東京?」
「正直に言うと?新しいスタート。離婚後……京都が……複雑になって」
中村が理解して頷いた。
「分かります。アルコールは?薬物?前科は?」
「何もありません。クリーンです」
「免許は有効?」
「はい。書類を持ってきました」
書類を渡した。注意深く調べた。
「うーん。全て問題ないようですね。推薦状は?」
「はい。京都の元上司。それと別の同僚。番号は履歴書に」
「完璧。今週中に電話します」
電話するだろう。そして全て確認される。
「いつから始められますか?」と訊いた。
「いつでも。明日でも」
中村が笑った。
「いいですね。信頼できる運転手が必要なんです。仕事は簡単です:関東地方全体への配達、時にはもっと遠く。定期シフト、業界標準の給料」
「問題ありません」
「では……ようこそ、佐藤さん。水曜から始められます。トラックを渡して、ルートを教えて、最初の数日はベテラン運転手が同行します」
「ありがとうございます」
握手した。
簡単すぎる、と思った。
でももちろんそうだ。彼らは必死だ。いつも運転手が必要。もうこの仕事を誰もやりたがらない。
私には完璧だ。
水曜の朝7時、山田運輸に戻った。
今度は従業員として。
中村が迎えて更衣室に連れて行った。
「佐藤さん、ようこそ。今日は全部見せます。明日から本当のシフトが始まります」
更衣室には既に三人の男がいた。
一人は40代、太って、笑顔。
一人は若く、痩せて、耳にイヤホン。
そして一人……
田中健二。
写真ですぐに認識した。
32歳。黒髪。顔は……普通。5分で見て忘れるタイプの顔。
でも私は忘れない。
決して。
「みんな」と中村が言った、「こちらは佐藤武。新しい運転手だ。佐藤さん、こちらが同僚です」
太った男が最初に近づいた。
「山本博!よろしく!ようこそ!」
握手した。強い握り。本物の笑顔。
「よろしく」
若い方がかろうじて手を上げた。
「木村」
それから……
田中が近づいた。
「田中健二」と静かな声で言った。「ようこそ」
彼の手を握った。
これが連続殺人犯の手か?
……普通に見える。柔らかい。タコがない。
でももちろんだ。トラックを運転する。手では殺さない。
私は仕事で様々なタイプに会ってきた。
毒で殺す者たち。
自殺に追い込む者たち。
「よろしく」と笑顔で言った。「佐藤武です」
田中が頷いてロッカーに戻った。
……疲れているように見えた。目の下にクマ。ゆっくりした動き。
ストレス?罪悪感?それとも長いシフト?
まだ分からない。
「田中さんはベテランだ」と中村が言った。「ここで7年。事故ゼロ。質問があれば、彼に訊け」
「分かりました。ありがとうございます」
田中は何も言わなかった。小さく頷いただけ。
控えめ。内向的。
それとも何かを隠している?
最初の日は研修で過ぎた。
中村がトラック、GPSシステム、積み降ろしの手順を見せてくれた。
全て標準。プロフェッショナル。
でも私は観察していた。
田中を観察していた。
8時に彼がトラックに乗るのを見た。同じトラック—日野プロフィア、東京300ナンバー—データで特定したもの。
出発するのを見た。落ち着いて。プロフェッショナル。
何も奇妙なことはない。
山本が見ている私に近づいた。
「健二はいい奴だよ」と言った。「静かだけど、信頼できる。何か必要なら、いつも助けてくれる」
「……ストレスを抱えているように見えるけど」
山本が声を低めた。
「家庭の問題、だと思う。奥さんが……まあ、噂だけどね。でも俺の問題じゃない。仕事はちゃんとやる。それが大事だ」
家庭の問題。
興味深い。
「分かった」
二日目、本当のシフトが始まった。
短いルート:東京-川崎、往復。
簡単。慣れるために。
15時に戻った。
駐車。書類。全て順調。
田中は既に戻っていた。トラックから降りるのを見た。
機会だ。
近づいた。
「田中さん」
振り向いた。驚いて。
「佐藤さん。どうだった?」
「良かった。簡単なルート。あなたは?」
「ルーティンだった」
沈黙。少し気まずい。
自然に見えないと。友達を作ろうとしている同僚。
「ねえ」と言った、「喉が渇いて死にそうだ。この近くに自販機ある?」
「ああ。整備場の後ろ」
「一緒に来る?何かおごるよ」
躊躇した。一秒だけ。
「いいよ」
自動販売機に向かって歩いた。
三台あった。冷たい飲み物。温かいコーヒー。お茶。
「何飲む?」と訊いた。
「ブラックコーヒーでいい」
コインを入れた。ブラックコーヒー二缶。
一つを渡した。
「ありがとう」
「どういたしまして」
缶を開けた。黙って飲んだ。
それから、何気なく:
「ここに慣れるのにどれくらいかかった?」
田中が考えた。
「数ヶ月かな。最初は変だった。新しい街、新しいルート。でもそれからルーティンになる」
「想像できる。東京出身?」
「ああ。生まれも育ちも」
「いいね。俺は京都から来た。まだここのペースに慣れてない。全てが……速い」
「ああ。東京はそうだ」
また沈黙。
あまり話好きじゃない。でも敵対的じゃない。ただ……閉じている。
「結婚してる?」と訊いた。
「ああ。あなたは?」
「してた。離婚した」
「残念だ」
「まあ、仕方ない。その方が良かった」
田中が頷いたが何も加えなかった。
私生活について話したくない。興味深い。
「とにかく」とコーヒーを飲み終えながら言った、「ルートとか何かアドバイスがあったら、教えて。感謝する」
「もちろん」
「付き合ってくれてありがとう」
小さな笑顔。かろうじて。
「どういたしまして」
ロッカーに戻った。
着替えて出た。
でも去りながら、遠くから彼を観察した。
田中がロッカーの前に座ったまま。
10分間。
動かずに。
ただ……虚空を見つめて。
何を考えている、田中?
何を隠している?
次の数日は同じパターンが続いた。
仕事。観察。小さなやり取り。
あと二回コーヒーを奨めた。田中はいつも受け入れた。
少ない言葉。でも礼儀正しい。
山本の方が簡単だった。話す。笑う。冗談を言う。
木村はほとんど無言。
でも田中……田中が一番興味深かった。
なぜなら時々彼が……震えているのが見えたから。
明らかにではない。劇的にではない。
でも手が。誰も見ていないと思っているとき。
そして一度、金曜の午後、彼がトラックから降りて止まるのを見た。
車両を見た。
30秒間。
まるで……怖がっているかのように?
それとも想像しているのか?
投影?確証バイアス?
あまりに彼を有罪にしたくて、至る所に罪を見ているのか?
いや。
データは嘘をつかない。
彼はそこにいた。三回。
GPSの迂回。時間。全て一致する。
彼は関与している。
どうやってかを理解するだけだ。
休憩中に閃きがあった。
遠くから田中を観察していた。
電話で話していた。短く。
「ああ……ああ、夕食には帰る……いや、大丈夫……じゃあ」
切った。
そしてその瞬間理解した。
妻。
家に妻がいる。
毎日彼を見る。寝言を聞く。全ての変化に気づく。
もし田中が何かを隠しているなら……彼女は知っている。
少なくとも疑っている。
そしてもし彼女にアクセスできたら……
外からは決して得られない情報が得られる。
でもどうやって?
直接近づけない。疑わしすぎる。
必要なのは……口実。自然な理由。
社交するカップル。
一緒に夕食。妻たちが友達になる間、夫たちは仕事の話。
でも私は「離婚している」。
もし……でなければ
アイデアが浮かんだ。
リスキー。即興。
でも機能するかもしれない。
シフトの終わり、田中が着替えている間、何気なく近づいた。
「田中さん」
「うん?」
「ねえ、言いたいことがあって……良いニュースなんだ」
「ああ、そう?」
「実は再婚したんだ」
田中が顔を上げた、驚いて。
「本当?おめでとう!」
「ありがとう。速かったんだ。転勤直後に彼女と知り合った。そして……まあ、分かるときは分かるだろ」
「分かる。良かったね」
「ありがとう。大きな決断だった。離婚後にやり直すのは簡単じゃない」
「想像できる」
「彼女は素晴らしい。歩美って言うんだ。彼女も東京に新しい。お互い……助け合った、って感じ」
歩美。最初に浮かんだ名前。
今、本当にその名前の誰かを見つけないと。
または作り上げる。
クソ。
「いいね」と田中が小さな笑顔で言った。「本当におめでとう」
「ありがとう。いつか、もし良かったら、一緒に夕食でも。あなた、奥さん、俺と歩美。そうすればもっとお互いを知れる」
田中が躊躇した。
一秒だけ。
「ああ、いいかも。素敵だね」
完璧。
今、口実ができた。
あと一つ小さな詳細が欠けている。
妻。
その夜、仮のアパートに戻った。
シャワーを浴びた。何か食べた。
それから携帯を取った。
谷口に電話した。
「署長」
「石川刑事。どう進んでる?」
「順調です。中に入りました。田中は同僚として受け入れました。疑いなし」
「良い。異常な行動は?」
「明らかなものはありません。でも閃きがありました」
「どんな?」
「田中には妻がいます。田中ユキ。彼と暮らしています。毎日彼を見ています」
「それで?」
「それで、もし田中が何かを隠しているなら—秘密、奇妙な行動、嘘があるなら—彼女は知っています。少なくとも疑っています」
「おそらくそうだ。でも尋問できない。警戒させる」
「その通り。だから別のアプローチが必要です」
「どんなアプローチ?」
「社会的潜入。私の妻のふりをする女性潜入捜査官。田中ユキの友達になる。打ち明け合う。もしかしたらユキが心を開いて、警察には決して言わないことを話すかもしれません」
向こうから沈黙。
それから谷口がゆっくりと言った:
「妻を……求めているのか?」
「はい」
「偽の妻」
「その通り」
「刑事——」
「聞いてください、署長。外からは田中の職業的行動しか観察できません。でも家では?何をする?何を言う?家族とどう振る舞う?その情報は金です。そしてそれを得る唯一の方法は彼の妻を通してです」
「どうやって疑いを招かずに田中ユキに近づくつもりだ?」
「簡単です。田中と奥さんを夕食に招待します。『妻たちを知り合わせよう』同僚間の普通の社交。妻たちが話して、友達になる。もしかしたらコーヒー、買い物、そういうことで再会する。そしてその会話中に……」
「ユキが彼女に物事を明かすかもしれない」
「正確に」
沈黙。
「もう田中に結婚していると言ったのか?」
「はい」
「何?!」
「即興しました。今日の午後。再婚したばかりだと言いました。妻の名前は歩美だと」
「石川刑事——」
「分かっています。でも唯一の窓でした。待っていたら、機会を失っていました」
谷口が重くため息をつくのが聞こえた。
「完全に狂っている」
「たぶん。でも機能します」
「もし誰も見つからなかったら?もし捜査官が誰も受け入れなかったら?」
「見つけます。信頼できればいいだけです。適切な年齢。説得力のある経歴。そして友達を作るのが上手」
また沈黙。
「これは全てを複雑にする」
「分かっています。でも結果は価値があります」
「考えさせてくれ。誰が利用可能か見ないと。この種の作戦に十分な技量がある者を」
「ありがとうございます、署長」
「まだ礼を言うな。これが爆発するかもしれない」
「計算されたリスクです」
「うーん」
「一つ、署長」
「何?」
「私が以前に会ったことがない人でないと。私や部門との目に見える関係がない。クリーンな経歴。確認可能」
「当然だ。私は馬鹿じゃない、刑事」
「そんなつもりでは——」
「おやすみ、刑事。明日連絡する」
「おやすみなさい」
切った。
座ったまま。
妻。
本当に警視庁署長に偽の妻を見つけてくれと頼んだのか。
この作戦はどんどん馬鹿げてきている。
でも馬鹿げていることは無効を意味しない。
むしろ。
もし機能すれば……
もしユキを話させることができれば……
全てが分かる。
全ての秘密。全ての嘘。全ての奇妙な行動。
そして……
そうすれば田中にはもう隠れる場所がない。
翌日、土曜日、谷口が電話してきた。
「刑事。誰かいる」
「誰?」
「鈴木芽衣捜査官。29歳。5年勤務。潜入捜査を2回やった。優秀。信頼できる。そして何より—高い注目度の事件では働いたことがない。誰も彼女を知らない」
「完璧です。いつ会えますか?」
「月曜。完全なブリーフィング。一緒に経歴を構築する。バックグラウンド。どうやって出会ったか。全て」
「良い」
「刑事?」
「はい?」
「これが許可なく即興する最後の機会だ。明確か?」
「非常に明確です」
「よろしい。月曜、9時。作戦事務所」
「そこにいます」
切った。
椅子にもたれた。
鈴木芽衣捜査官。
私の新しい「妻」。
これは……興味深い。
月曜の朝、9時、作戦事務所に入った。
女性がいた。
背が高い。長い髪。優しい顔。カジュアルな服装。
……普通に見えた。完璧に普通。
良い。必要なものだ。
谷口がそこにいた。
「石川刑事。鈴木捜査官」
握手した。
「はじめまして」と落ち着いた声で言った。「あなたのことは色々聞いていますよ、刑事」
「想像できます。あまりひどくないといいんですが」
小さな笑顔。
「十分ひどいですよ」
谷口が座らせた。
「よし。二人で一緒に人生を構築する時間が2時間ある。どうやって出会ったか。いつ結婚したか。どこに住んでいるか。全て」
「始めよう」と言った。
鈴木がノートを取り出した。
「では。佐藤武と……佐藤歩美に今なったわけですね?」
「その通り」
「どうやって出会った?」
考えた。
「出会い系アプリ?いや、現代的すぎる。確認しやすい」
「喫茶店」と鈴木が提案した。「古典的。私は学生の間アルバイトしてた。あなたは毎朝コーヒーを買いに来た。話し始めた」
「いいね。どこ?」
「新宿。中立地帯。もう存在しない喫茶店—6ヶ月前に閉店。確認不可能」
「完璧」
「いつ結婚した?」
「2週間前」と言った。「小さな式。私たちと証人二人だけ。形式的なものなし。二人とも再婚だから。何か簡単なものが欲しかった」
「どこに住んでる?」
「世田谷。賃貸アパート。2部屋。豪華じゃない」
鈴木が全てを書き留めた。
「仕事?私の、つまり」
「英語教師。私立学校。パートタイム。だから自由時間がある……ユキと社交するための」
「いいわ」
2時間、全てを構築した。
全ての詳細。可能な質問への全ての答え。
最後に、谷口が言った:
「よし。さあ難しい部分だ。刑事、どうやって芽衣を田中に紹介する?」
「簡単です。田中と奥さんを夕食に招待します。『妻たちを知り合わせよう』普通の夕食。普通の会話。鈴木がユキと友達になる」
「それから?」
「それから鈴木が再会を提案します。コーヒー。買い物。女性のこと。関係を築く。ユキが心を開く。そして我々は情報を得る」
「どれくらいかかる?」
「2週間。たぶん3週間」
「もしユキが心を開かなかったら?」
「開きます。彼女は孤独です。イライラしています。夫は距離を置いている。理解してくれる新しい友達?抵抗できません」
鈴木が頷いた。
「できます。もっとひどい人たちと友達になったことがあります」
「よし」と谷口が言った。「では準備できた」
鈴木を見た。
「チームへようこそ……妻」
微笑んだ。
「ようこそ……夫」
その夜、アパートに帰りながら、状況について考えた。
二人の潜入捜査官。
偽の夫婦。
田中健二の人生に潜入。
両側から。
仕事と家。
公と私。
彼には逃げ場がない。
もし何かを隠しているなら……
我々が発見する。
ベッドに横になった。
天井を見た。
田中健二。
お前は囲まれている。
そしてお前は知らない。
これについては……
これについては絶対に、完全に、完璧に確信している。
輪が狭まる。狩人は今二つの目を持つ。そして獲物は……獲物は何も疑わない。




