「彼だと確信している」
太陽がちょうど昇り始めた時、林と木村がオフィスに到着した。
既にそこにいた。あまり寝てない——三時間、たぶん四時間——でも必要なかった。
アドレナリンで十分だった。
「準備はいいか?」聞いた。
頷いた。
二人ともプロフェッショナルだが無難な服装。グレーのスーツ。控えめなネクタイ。偽造だが完璧な書類が入った鞄。
まさに見えるべき姿に見えた:国税庁の退屈な官僚、定期任務中。
「眼鏡は?」
林が鞄を開いた。三つの特殊眼鏡がそこにあった。普通のサングラスケースに見える入れ物に。
「今朝テストした。完璧に機能する」
「いい。覚えておけ:絶対に通常の振る舞い。犯罪捜査を思わせる何もなし。ただの定期税務チェック」
「了解」
「レンズが反応したら——血液痕跡を見たら——目に見える反応なし。検査を通常通り完了。出る。それから即座に電話」
「責任者が眼鏡について質問したら?」木村が聞いた。
「羞明」林が言った。「目の問題。蛍光灯が刺激になる。使ったことある。機能する」
「完璧。リストは?」
木村がタブレットを取り出した。
「三十七の顧客。地域別に行程を整理した。速ければ今日二十五できる。残り十二は明日」
「いや」言った。「全部今日だ」
「刑事、東京中に散らばってます。時間が——」
「全部今日。田中がこれらの場所の誰かと接触してて、我々がチェックしてると知ったら、警戒するかもしれない。速ければ速いほど、リスクが少ない」
木村が躊躇して、それから頷いた。
「分かった。長くなる」
「長い方が非効率よりマシだ」
時計を確認した。六時四十五分。
「最初の倉庫は七時半に開く。十分後に出発。俺はここに残って調整する。無線常時オン。全顧客、報告しろ。綺麗でも」
「はい、刑事」
準備した。書類を確認。眼鏡。カバーストーリー。
六時五十五分に出た。
オフィスに一人残った。
ホワイトボードを見た。中央の田中健二の写真。
今日、お前が本当は何者か発見する。
そして誰が助けてるか。
顧客1:川崎ロジスティクス - 南部工業地帯
七時五十二分、林の声が無線で流れた。
「刑事。顧客一、完了」
「結果は?」
「綺麗。標準的な倉庫。異常なし。レンズで完全スキャン——痕跡ゼロ」
「いい。次」
顧客2:テックマート流通 - 千葉
八時三十四分。
「顧客二。綺麗」
顧客3:清水倉庫 - さいたま
九時十一分。
「顧客三。綺麗」
次々。
綺麗。
全部クソみたいに綺麗。
正午までに十八の顧客をチェックした。
痕跡ゼロ。
異常ゼロ。
電話を取って林に電話した。
「どうだ?」
「疲れる。でも全て正常。この場所は...普通。普通すぎる」
「普通すぎる?」
「つまり疑わしいことが全くない。綺麗な倉庫。礼儀正しいスタッフ。整った書類。もしこの中の一つが人身売買に関与してたら、隠すのが信じられないほど上手い」
「それとも関与してない」
「ネットワーク理論が間違ってると思う?」
「まだ分からない。続けろ。残りは?」
「十九」
「頑張れ。できるだけ速く」
十五時に二十九を済ませた。
十七時に三十三。
全て綺麗。
疑念が忍び寄るのを感じ始めた。
もし間違ってたら?
もし田中が公式顧客を使ってなかったら?
もし思ってたより賢かったら?
ダメだ。
集中しろ。あと四つ。仕事を終わらせろ。
顧客34:中村スチール - 港湾地域
十八時二十三分。
「顧客三十四。綺麗」
顧客35:藤田輸出入 - 品川
十九時五分。
「顧客三十五。綺麗」
フラストレーションが高まった。
三十五の倉庫。痕跡ゼロ。
どうしてありえる?
顧客36:山田電器 - 池袋
十九時四十七分。
「顧客三十六...」
一時停止。
「刑事、この場所は変です」
姿勢を正した。
「変ってどう?」
「責任者が...緊張してる。すごく緊張してる。汗をかき続けてる。速く出そうとした。『全て大丈夫です、行っていいです』って」
「レンズは?」
「今スキャン中。少々...」
沈黙が伸びた。
十秒。
二十。
「林?」
「綺麗。クソ。痕跡なし。でも責任者は明らかに不安」
「たぶん他の問題がある。脱税かも。我々の案件じゃない。最後に進め」
「はい」
顧客37:秋山運送サービス - 東部郊外
二十時三十一分。
最後。
もしこれも綺麗なら...
ならネットワーク理論は間違ってる。
そしてゼロから始めないと。
無線が一分間沈黙したまま。
二分。
何が起きてる?
それから、木村の声。低い。緊張してる。
「刑事」
「ああ?」
「レンズが...反応してる」
心臓が跳ねた。
「確かか?」
「ああ。血液痕跡。床に。メイン倉庫の北西の隅。肉眼では見えないがレンズが検出してる。青い蛍光。血だ」
ビンゴ。
「どれくらいの痕跡?」
「複数。飛沫だけじゃない。まるで...何かが引きずられたみたいだ。跡。それから洗浄されたが十分じゃない」
「普通に振る舞え。検査を完了しろ。何か見たと悟らせるな」
「了解」
「今出る。二十分で着く」
ジャケットを取った。鍵。バッジ。
谷口に電話した。
「総監。何か見つけました」
秋山運送サービスに二十一時四分に到着した。
中規模の倉庫。郊外。交通量の少ない地域。控えめな活動には完璧。
林と木村が外の車にいた。手を振った。
乗った。
「見せろ」
木村が特殊眼鏡を渡した。
着けた。
「北西地域。荷積みドアの近く」
フロントガラス越しに倉庫を見た。
通常の照明。通常の構造。
でもレンズが起動すると...
青い線。蛍光。床に。
多くない。暴力的殺人みたいな劇的な飛沫じゃない。
でもそこにあった。
痕跡。引きずり跡。まるで何か——誰か——が引きずられたみたいに。
それから洗浄された。
でも十分じゃない。
決して十分じゃない。
「人間の血?」聞いた。
「レンズは人間と動物を区別しない」林が言った。「でも量とパターンから...おそらく人間」
「いつ?」
「痕跡は古そう。数週間、たぶん。でも工業用製品で洗浄されてる。漂白剤。強いもの。誰かが消そうとした」
倉庫を見た。
田中がここに配達する。
死体をここに運ぶ。
そして誰かが...何?処理する?他の場所に運搬する?
「責任者は?」聞いた。
「中。秋山博って人。五十歳。オーナー兼管理者。検査中は普通に見えた。緊張してない。むしろ親切だった」
「サイコパスはよくそうだ」
電話を取った。谷口に電話した。
「総監。秋山運送サービスで血液痕跡を発見しました。サンプル採取のため鑑識チームを要請します。至急」
「関連性にどれくらい確信がある?」
「痕跡はプロフェッショナルに洗浄されてる。誰かが隠そうとした。そしてこの倉庫は田中の顧客リストにある」
「チームを送る。二十分」
「ありがとうございます。それと総監?控えめにする必要があります。サイレンなし、目立つ制服なし。もしこの場所がネットワークの一部で秋山が怖がったら、他の者に警告するかもしれない」
「了解。私服チーム」
「完璧です」
鑑識チームが二台の無印バンで到着した。
点滅灯なし。騒音なし。
プロフェッショナル。
「石川刑事」チームリーダーが言った。五十代の灰色の髪の男。「長谷川博士です。何がありますか?」
特殊眼鏡を渡した。
「血液痕跡。倉庫の床、北西の隅。洗浄されてるがこのレンズでまだ見える」
眼鏡を着けた。見た。
「ふむ。ああ。見える。興味深い。入れますか?」
「税務検査は一時間前に終わった。技術的には戻るのに令状が必要」
「技術的に」長谷川が微笑んで繰り返した。「でもオーナーが丁重に招待してくれたら?」
「秋山はまだ中?」
林が確認した。
「ああ。照明がついてる」
「いい。行こう」
オフィスのドアをノックした。
秋山が開けた。普通の男だった。中肉中背。眼鏡。薄い髪。物流業界で二十年働いてる人の優しい表情。
「あ、またですか?」驚いたが怖がってない。「書類に問題が?」
「いえ、問題ありません」親しみやすいトーンで言った。「お邪魔してすみません。石川、警視庁コンサルタント刑事です。こちらは鑑識の専門家。この地域で定期調査を行ってて、倉庫を簡単にチェックさせていただきたいんです」
「調査?どんな調査?」
「商品盗難。この地域で報告がありました。標準的な安全チェック。二十分以上かかりません」
秋山が安堵したように見えた。
「ああ、分かりました。もちろん、問題ありません。どうぞ」
リラックスしすぎだ、と気づいた。本当に無実か、演技が非常に上手いか。
鑑識チームが入った。
秋山はオフィスに残って、書類を見てた。明らかに無関心。
長谷川とチームが静かに作業した。
ポータブルUVライト。化学試薬。綿棒。
見えた場所で正確に痕跡を見つけた。
長谷川が手を振った。近づいた。
「ルミノール陽性」囁いた。「確実に血液。でも人間か確認して、DNAを取るには研究所分析が必要」
「どれくらい?」
「人間対動物?明朝早く。DNA?押せば三日」
「押せ」
「了解」
サンプルを収集した。写真を撮った。全て記録した。
約束通り二十分。
出た時、秋山が笑顔でドアまで見送った。
「大丈夫でしたか?」
「ええ、ご協力ありがとうございました」言った。
「どういたしまして。他に必要なことがあれば、いつでもここにいます」
今のところ、と思った。
外で、倉庫から離れて、長谷川がファイルを渡した。
「ラベル付きサンプル。今夜ラボに行く。明朝八時に予備結果」
「完璧だ」
「人間の血で被害者の一人と一致したら...君の案件だ」
「分かってる」
「現場に監視をつけるか?」谷口が聞いた。合流してた。
「ああ。でも控えめに。非常に控えめに。活発な捜査を思わせる何もなし。もし秋山がネットワークの一部で尾行に気づいたら、田中に警告するかもしれない」
「逃げたら?」
「なら止める。でも逃げないと思う。何も見つけたと知らない。彼にとっては地域の盗難をチェックしてた警察だけだ」
谷口が頷いた。
「了解。二人の捜査員。民間車。八時間シフト」
「ありがとうございます」
二十三時三十分にオフィスに戻った。
林と木村がまだそこにいた。疲弊してたが緊張してた。
「で?」林が聞いた。
「待つ。明朝人間の血か分かる。そうなら、DNAを送る。三日で被害者と一致するか確認できる」
「一致したら?」
「なら秋山を捕まえる。秋山から田中に辿り着く」
机に座った。
ホワイトボードを見た。
赤いマーカーを取った。
田中健二から新しく書いた名前に線を引いた。
秋山博 - 秋山運送サービス
下に書いた:「血液痕跡 - 分析中」
それからタイムラインを書いた:
明朝(8:00):人間の血確認 +3日:DNA一致 その後:逮捕
背もたれに寄りかかった。
「家に帰れ」林と木村に言った。「明日もまた長い一日だ」
「あなたは寝ないんですか?」木村が聞いた。
「後で。その前に全部見直したい。穴がないか確認する」
去った。
一人残った。
ファイルを開いた。データ。地図。
全てが合ってた。
田中は三つの失踪全てに存在してた。
田中は秋山に配達してた。
秋山に血があった。
明日確認を得る。
それから...
ゲームオーバー。
時計を見た。零時二十分。
八時間以内に分かる。
立ち上がった。窓に歩いた。
夜の東京。光。命。無知。
あそこには無敵だと思ってる連続殺人犯がいる。
捕まるには賢すぎると思ってる。
完璧な記録と綺麗な顔を持ってる。
でも十分じゃない。
誰も十分じゃない。
明日、彼の終わりが始まる。
そして俺は...
俺は確信している。
机に戻った。
七時半にアラームをセットした。
机に頭を預けて、目を閉じた。
三時間の睡眠だけ。
十分だろう。
なぜなら明日...
明日は真実の日になる。
勝利前夜は甘い。でも時々...時々物事は予想通りにいかない。




