異国の街と、守護者たちの邂逅
この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。
それは神話でも、空想でもない。
人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――
**守護者**と呼ばれる存在だ。
彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。
意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。
だが、生まれた瞬間から強いわけではない。
迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。
これは、
忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が
初めて世界と向き合い、
初めて誰かと並んで歩き出す物語。
戦うことだけが、守ることではない。
それでも――
守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。
彩葉たちが辿り着いた街は、これまでに訪れたどの街とも違っていた。
石畳が規則正しく敷き詰められ、整然とした建物が並ぶその景色は、どこか重厚で、しかし冷たさだけではない温もりを内包している。空気には、鉄と油、そしてパンを焼く香ばしい匂いが混ざり合い、遠くからは歯切れのよい言葉が行き交う声が聞こえてきた。
「ここが、ドイツの街……」
彩葉は小さく息を吸い込み、街全体を見渡した。建物の輪郭は鋭く、屋根や窓の形もどこか堅牢だが、その中に人々の生活がしっかりと根を張っているのがわかる。
「やっぱり、他とは違う感じがするね」
陽菜がそう言って、周囲をきょろきょろと見回す。
「そうだなぁ」
村正は腕を組み、通りの向こうに並ぶ店々を眺めた。
「武具屋や工房が多い。実用性を重んじる国柄ってやつか」
「色々……ある」
影は短くそう呟きながら、建物の影や人の流れを静かに観察していた。
「おぉ~」
喰は素直な感嘆の声を漏らし、露店に並ぶ金属細工や機械部品に目を輝かせる。
「まずは、見て回るとするかの」
栞がそう言うと、李=芳乃が頷いた。
「ワシも賛成じゃ。見聞を広めるのは悪くない」
「うん!」
花火が元気よく応え、レナも両手を広げる。
「色々見よーう!」
「そうだね……」
マミは周囲の人波を見ながら、少し慎重な視線を向けた。
「……」
マイは無言のまま、彩葉の少し後ろを歩く。
「久しぶりに来たな~、ドイツの街」
リリア=エジソンが懐かしそうに言った。
「前はどこに行ったんだい?」
フェルルが尋ねる。
「ベルリンだよ。すっごく大きかったよ。街そのものが、巨大な機械みたいでさ」
「なるほど」
フェルルは納得したように頷いた。
「よかったら、一緒に行きますよ?」
ユキが控えめに声をかける。
「いいなの?」
アビが首を傾げる。
「うん……なんだか、みなさんが気になって……」
ユキは視線を伏せながらも、はっきりとそう言った。
「うん! 一緒に行こ!」
レナが笑顔で答える。
「……はい……」
ユキは小さく頷いた。
「……人間、いっぱい……」
メデューサが周囲を見回し、不安そうに呟く。
「修行で大丈夫になったけど……心配……」
「なに、問題はないのじゃ」
栞が穏やかに言うと、
「はい!」
メデューサは少し安心したように返事をした。
街を歩けば、整備された市場、規律正しく並ぶ兵装店、歯車や機械部品を扱う工房が次々と現れる。蒸気を吐く装置の音、金槌が鉄を叩く乾いた響き、遠くで奏でられる楽器の旋律。人々は忙しそうでありながらも、どこか誇りを持って背筋を伸ばして歩いていた。
建物の壁には国の紋章や歴史を示すレリーフが刻まれ、広場には過去の英雄や守護者を讃える像が静かに佇んでいる。その足元では子どもたちが走り回り、観光客らしき人々が写真を撮っていた。
いろはたちは店を覗き、街の料理を味わい、職人の技に目を奪われながら、ゆっくりと時間を過ごした。
「いっぱい見て回ったね!」
彩葉が満足そうに言う。
「うん……」
メデューサも小さく頷いた。
そのとき、ふと視線を感じた。
「あ、やっぱり……英雄だ……」
静かな声が背後から聞こえる。
「?」
彩葉が振り返ると、そこには三人の少女が立っていた。
「こんにちは、英雄さん達」
肩に銃器を備えた少女が一歩前に出る。
「……あぁ、急にごめん。私はスイスの守護者、《エーデルワイス》」
「私はドイツの守護者、《ヤグルマギク》だ!」
戦車のような重装を纏った少女が豪快に名乗る。
「……《オレンジリリー》……」
花冠を戴いた少女が、少し恥ずかしそうに続けた。
「リヒテンシュタインの守護者……です……」
異国の街で、新たな守護者たちとの出会いが始まろうとしていた。
この街が秘める歴史と力、そして彼女たちとの邂逅が、彩葉たちを次なる運命へと導いていくことになる――。
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