表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルケオン  作者: れんP
日本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/34

海に沈む怨嗟

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

荒れた海を背に、一同は立ち尽くした。波間に揺れる黒い影が、まだ怒りの残滓を撒き散らしている。


(エイ)(くろ)はここにいて、私たちで倒す」


 陽菜(ひな)が決然と告げる。


「が、頑張ります……」


 彩葉(いろは)は胸の高鳴りを押さえながら、小さくうなずいた。


 二人は、足早に海の怪異の方へ駆け出す。


「ストラップ・ニードルバインド!」


 彩葉が叫ぶと、ショルダーストラップが空中を舞い、海の怪異の腕を絡め取った。


「ッ!……こっち来い〜……こっち来い〜」


 黒い触手のような腕が海から伸びる。


「彩葉ナイス! セイクリッドバレット!」


 陽菜の火縄銃が赤く光り、怪異の腕を撃ち抜く。


「うぅ〜!!! こっち……こっち来い〜」


 怪異はなおも暴れ、海の上でうねる。


「しぶといね……それより彩葉、その技に名前をつけたのかい?」


「あ、はい……陽菜をマネてみました」


「いいね」


「っ……ありがと……」


 彩葉の声が一瞬、震える。

 しかし、次の瞬間、海の怪異の腕が突如伸びてくる。


「わぁっ!……全然聞いてないですね」


「あれは触手みたいなもの。本体は海中にいる! 海中じゃ私の特性『百発百中』が効きにくいし……」


「海中……だったら! 水抜きです!」


 彩葉が叫ぶと、ショルダーストラップが海の怪異を取り囲む。

 スルスルと水を吸収し、海中に隠れていた本体が姿を現した。


「……異空間収納……」


「陽菜……早く……もう保たない……」


 彩葉の声が焦る。


「っ! う、うん、セイクリッドバレット!」


 陽菜の銃弾が、紅く輝く軌跡を描き、怪異の中心へと突き刺さる。


「嫌だ〜消えたくない、消えたくない! お前もこい!」


 怪異の体がねじれ、光に包まれて崩れゆく。


「きゃぁ! あ、足が……!」


「彩葉! エンチャントバレット!」


 陽菜の力が彩葉の特性と重なり、最後の一撃が決まった。


「うぅ……アリガトウ……カイホウ……サレタ……」


 海の怪異は光となり、消えていった。


「彩葉、大丈夫?」


「は、はい……今……」


 荒れた海も、静けさを取り戻す。


「うん、あの人たちも救われたみたい……」


 そこへ、駆け寄る二つの影。


「……大丈夫?……」


「無事か!」


「二人とも!」


「うん、僕も彩葉も無事」


「それは良かったぜ」


「……無事……良かった……」


 彩葉は少し息を切らしながら、手を胸にあてる。


「少しパンパン……」


「もしかして、スキルで異空間に海水を収納しすぎたのかな? 出せる?」


「う、うん……こうかな?」


 彩葉が力を解放すると、異次元の穴が開き、吸収した海水が一気に戻る。

 砂浜に落ちる水しぶきとともに、空気がすっきりと澄んだ。


「ふぅ〜……スッキリした〜……」


「もう大丈夫そうだね」


 陽菜が笑みを浮かべる。


「そうだ! もうすぐ『桜菊祭(おうぎくさい)』っていう人間と守護者の友好を示した祭りがあるんだけど、こない?」


「お祭り……行きたい」


「……行ってみたい……」


「面白そうだぜ」


「良し! 向かおう!」


 波打ち際に立つ四人の背中を、柔らかな朝日が照らしていた。

海に沈む怨嗟を越えたあと、彩葉たちは少しずつ、世界の広さと自分たちの存在を実感していた。目に見えない核として生まれた彩葉が、人間や妖怪、怪異、そして守護者たちと触れ合うことで、少しずつ「自分にできること」が見えてきた瞬間でもあった。


 陽菜は相変わらず気さくで頼もしく、彩葉に戦うことの楽しさや力の使い方を教え、影や喰のような孤独な存在にも手を差し伸べる。彩葉はその背中を見ながら、自分もいつか、誰かを守れる存在になりたいと心に誓った。


 海の怪異との戦いは、彩葉にとって初めての本格的な実戦だった。痛みを感じず、攻撃を吸収して跳ね返す特性――まだ名前もないその力は、彼女自身の成長を象徴するように目の前で光を放った。


 だが、この世界は決して平穏ではない。想霊や怪異、人間や陰陽師との関係――彩葉たちの冒険は、まだ始まったばかりだ。


 それでも、どんな困難が訪れようとも、彼女たちは手を取り合い、互いを信じ、前に進んでいくだろう。見えぬ核の光は、今日も確かにこの世界で輝いている――。


 読者の皆様、彩葉とその仲間たちの旅にお付き合いいただき、ありがとうございました。次の物語では、守護者たちの交流、祭りの夜、そして新たな試練が待ち受けています。どうぞ、彼女たちの成長を見守ってください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ