雪が祝福する邂逅
この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。
それは神話でも、空想でもない。
人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――
**守護者**と呼ばれる存在だ。
彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。
意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。
だが、生まれた瞬間から強いわけではない。
迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。
これは、
忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が
初めて世界と向き合い、
初めて誰かと並んで歩き出す物語。
戦うことだけが、守ることではない。
それでも――
守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。
雪の降る大地で、新たな出会いがあった。
それを祝福するかのように、空を覆っていた雪雲はゆっくりと薄れ、降りしきっていた白も、気づけばやさしく弱まっていた。
冷たい空気の中、足元で雪が静かに鳴る。
「えっと……」
陽菜が、ユキの腕に抱えられたマシンガンに視線を向ける。
「その……マシンガンは?」
問いかけに、ユキは不思議そうに首を傾げた。
「……?」
そして、少しだけ誇らしげに答える。
「……これは、私の宝物」
「宝物……?」
「うん。私の趣味は、銃器を集めること……」
そう言って、抱えているMG42をそっと撫でる。
「……これも、それで見つけた」
「そうなんだね」
陽菜は否定も驚きもせず、ただ静かに頷いた。
「あ!」
レナがぱっと手を叩く。
「そうだ!ねぇ、人間の街がどこにあるか、知らない?」
ユキは一瞬、視線を遠くへ向ける。
「……人間のいる街なら……」
雪原の向こうを指さし、ぽつりと言った。
「……あっちに進めば、あるよ……」
「?」
彩葉が首をかしげた、その直後。
「……案内する……」
ユキはそう付け加えた。
「え、いいの?」
彩葉が聞き返すと、ユキは小さく頷く。
「……うん……」
「ありがとう!」
花火が嬉しそうに声を上げた。
こうして一行は、ユキを先頭に、雪原を歩き出した。
足跡が連なり、静かな白の世界に、人の温度が刻まれていく。
「さっき、銃器を集めるのが趣味だって言ってたな」
村正が、歩きながらユキに声をかける。
「集めた、他の銃器はないのか?」
「……あるよ」
ユキは淡々と答えた。
「……自分の空間……精霊回廊っていう異空間に、しまってる……」
「ほう」
村正が感心したように息をつく。
「そうなのか。じゃあ、その装備も、見つけたものか?」
ユキは一瞬、視線を伏せた。
「……この軽装備は……」
少し間を置いてから、続ける。
「……仲良くしてた、大人の人間につけてもらった物……」
彩葉たちは、自然と耳を傾けていた。
「……何年も使ってたから、ボロボロになってた……だから、改造した……」
「そうか」
村正の声は低く、穏やかだった。
「良くしてもらったんだな」
「……うん……」
ユキは短く頷く。
そして、ぽつりと、雪に溶けるような声で言った。
「……それに、人間は……すぐ死ぬから……」
足音が、ほんの一瞬だけ止まる。
「……あの人も……もう……」
言葉の続きを、ユキは口にしなかった。
「……」
彩葉は、何も言えず、ただ隣を歩いた。
その沈黙を破ったのは、マミだった。
「……ねぇ」
やさしい声で、ユキを見る。
「その人のこと……今でも好き?」
ユキは、迷わず答えた。
「……うん」
「だったらね」
マミは微笑む。
「その人のぶんまで、元気に生きなきゃ!」
「…………」
一瞬、ユキの瞳が揺れた。
そして、ゆっくりと、確かに頷く。
「……うん……」
「ふふっ」
リリア=エジソンが、どこか楽しそうに笑った。
「どうしたの?」
マイが不思議そうに聞く。
「ううん、なんでもない」
リリアは首を振った。
「……?」
その会話を背に、雪原の先に、建物の影が見え始める。
「あ、街が見えてきた」
フェルルが指をさした。
「……あれが……ドイツの……街……」
影が小さく呟く。
「お〜」
喰が声を上げる。
「人間も、見えるなの」
アビが空から戻ってきて言った。
「人間の街じゃし、いても不思議ではないが……」
栞は目を細める。
「まぁ、気持ちも、わかるのじゃ」
「うむ」
李=芳乃も頷いた。
――その頃。
ドイツの街の一角。
花冠を被った少女が、ふと足を止めた。
「……?」
「どうしました?」
肩に銃器を装着した少女が、隣から声をかける。
「リリィ?」
「うん……」
リリィと呼ばれた少女は、遠くを見つめる。
「……噂の人たちの気配がしたの……」
「ははっ!」
戦車のような装甲を纏った少女が、豪快に笑った。
「それは、挨拶しに行かないとな!」
「今は任務中ですよ?」
肩に銃器をつけた少女が、やれやれと肩をすくめる。
「いいじゃねぇか」
戦車の少女は、楽しそうに言った。
雪がやみ、雲の切れ間から、淡い光が差し込む。
鉄の国ドイツで、
また新たな出会いが、静かに、しかし確実に近づいていた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




