光を取り戻した空、そして新たな翼へ
この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。
それは神話でも、空想でもない。
人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――
**守護者**と呼ばれる存在だ。
彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。
意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。
だが、生まれた瞬間から強いわけではない。
迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。
これは、
忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が
初めて世界と向き合い、
初めて誰かと並んで歩き出す物語。
戦うことだけが、守ることではない。
それでも――
守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。
イタリアの空は、再び澄みきった青を取り戻していた。
夜を覆っていた暗雲は嘘のように消え、朝の光が大地をやさしく照らしている。
まるでこの地そのものが、戦いの終わりを祝福しているかのようだった。
「なるほど……そんなことがあったのですね」
ビアンカ=ヒナギクは、倒されたマンティコアたちの痕跡を一瞥しながら、静かに頷いた。
「うん……全部倒したから、もう問題ないよ」
アリーチェ・ディ・セル・レオナルド・ダ・ヴィンチは淡々と答える。
その声には誇りも慢心もなく、ただ事実だけがあった。
「それは良かったです」
ビアンカはほっとしたように息をつき、仲間たちへと視線を移した。
「みなさん、力は制御できるようになったの?」
彩葉の問いかけに、ステンノが微笑みを浮かべて答える。
「えぇ。姉妹全員、ちゃんと使えるようになりました」
「……!」
彩葉は思わず息を呑み、すぐに笑顔になった。
「……良かった」
エウリュアレが、くすりと笑いながらメデューサを見つめる。
「それで、メデューサ? 言うことがあるんでしょ?」
「は、はい!」
メデューサは一歩前に出て、深く息を吸い込んだ。
「私を……旅に同行させてください!!」
「え?」
彩葉が目を丸くする。
「メデューサったら、みなさんと同行するために一番がんばったんですよ」
ステンノの言葉に、メデューサは少し照れたように視線を落とした。
「……」
一瞬の沈黙のあと、彩葉は力強く頷いた。
「うん! もちろんいいよ!」
「……!」
メデューサの瞳が大きく揺れ、やがて潤む。
「……ありがとう……ございます……」
「ヒナギクの力のおかげですね」
陽菜がそう言うと、ビアンカは首を横に振った。
「いえ。頑張ったのは皆さんですよ。私は、方法を教えただけです」
「でもな」
村正が肩をすくめて笑う。
「その力があってこそ、超えられたんだ。お前の成果でもあるぞ」
「……そうですか……」
少し戸惑ったように呟くビアンカに、ともが元気よく声を上げた。
「そうなのよ! お姉ちゃんたちの力なのよ!」
「そうねぇ〜。みんなの、手柄よね〜」
ワインの柔らかな言葉に、ビアンカは小さく頬を赤らめた。
「……そ、そうですか……」
「……まだ……楽しくなりそうです……ね」
影の小さな声に、喰が豪快に笑う。
「そうだぜぇ」
「これからよろしくね」
フェルルが手を差し出すと、メデューサはその手をぎゅっと握った。
「はい!」
場の空気が和らぐ中、花火が目を輝かせて言った。
「ねぇねぇ! スイスには空を飛ぶドラゴンの帝国があるんだって!」
「ドラゴン……」
マミは少し緊張した表情を浮かべる。
「なんだか……こわそう……」
「そうかな〜? 私は楽しみ!」
レナは無邪気に笑った。
「楽しそうであり、少し怖そうですね」
リリア=エジソンが理性的にまとめる。
「ドラゴンと、どっちが早いか競争してみたい、なの」
アビの言葉に、皆が一瞬沈黙し――
「ドラゴンさんが速そうですが」
メデューサが真面目に返すと、
「案外、アビが速いかもしれんぞ?」
栞が面白そうに言い、
「それも、面白そうだな」
李=芳乃が頷いた。
「スイスに行くのでしたら、転送装置で行くのがいいと思うわ〜」
ワインが助言する。
「あそこは山脈に囲まれているから〜」
「そのほうがいいと思ゆのよ!」
ともも元気よく賛同する。
「ありがとうございます!」
彩葉が深く頭を下げる。
その日の朝日が、彼女たちを包み込むように照らしていた。
それはまるで、新たな旅立ちを歓迎しているかのようだった。
――そして。
スイス・天空ドラゴン帝国 城内
「何!? 姫様がまたいない!?」
竜兵士の声が城内に響き渡る。
「探せ探せ! また人間の街に行っておらっしゃる可能性がある! 地上も探せ!!」
「まったく……あの方は……いつも抜け出すのですから……」
騒然とする兵士たちの背後、静かな回廊の影で――
「ふふっ……今のうちに……」
小さな影が、楽しそうに微笑んだ。
「今日は……面白いことが起きそう」
その視線の先にあるのは、空の彼方。
新たな翼と、新たな運命が交わる場所だった。
――旅は、次の舞台へと進み始める。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
物語は新たな舞台へ進もうとしています。
仲間たちの選択と、空に広がる次なる運命を、これからも見届けていただけたら嬉しいです。
次回もお楽しみに。




