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アルケオン  作者: れんP
ヨーロッパ編

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80/182

光を取り戻した空、そして新たな翼へ

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

イタリアの空は、再び澄みきった青を取り戻していた。

夜を覆っていた暗雲は嘘のように消え、朝の光が大地をやさしく照らしている。

まるでこの地そのものが、戦いの終わりを祝福しているかのようだった。


「なるほど……そんなことがあったのですね」


ビアンカ=ヒナギクは、倒されたマンティコアたちの痕跡を一瞥しながら、静かに頷いた。


「うん……全部倒したから、もう問題ないよ」


アリーチェ・ディ・セル・レオナルド・ダ・ヴィンチは淡々と答える。

その声には誇りも慢心もなく、ただ事実だけがあった。


「それは良かったです」


ビアンカはほっとしたように息をつき、仲間たちへと視線を移した。


「みなさん、力は制御できるようになったの?」


彩葉(いろは)の問いかけに、ステンノが微笑みを浮かべて答える。


「えぇ。姉妹全員、ちゃんと使えるようになりました」


「……!」


彩葉は思わず息を呑み、すぐに笑顔になった。


「……良かった」


エウリュアレが、くすりと笑いながらメデューサを見つめる。


「それで、メデューサ? 言うことがあるんでしょ?」


「は、はい!」


メデューサは一歩前に出て、深く息を吸い込んだ。


「私を……旅に同行させてください!!」


「え?」


彩葉が目を丸くする。


「メデューサったら、みなさんと同行するために一番がんばったんですよ」


ステンノの言葉に、メデューサは少し照れたように視線を落とした。


「……」


一瞬の沈黙のあと、彩葉は力強く頷いた。


「うん! もちろんいいよ!」


「……!」


メデューサの瞳が大きく揺れ、やがて潤む。


「……ありがとう……ございます……」


「ヒナギクの力のおかげですね」


陽菜(ひな)がそう言うと、ビアンカは首を横に振った。


「いえ。頑張ったのは皆さんですよ。私は、方法を教えただけです」


「でもな」


村正(むらまさ)が肩をすくめて笑う。


「その力があってこそ、超えられたんだ。お前の成果でもあるぞ」


「……そうですか……」


少し戸惑ったように呟くビアンカに、ともが元気よく声を上げた。


「そうなのよ! お姉ちゃんたちの力なのよ!」


「そうねぇ〜。みんなの、手柄よね〜」


ワインの柔らかな言葉に、ビアンカは小さく頬を赤らめた。


「……そ、そうですか……」


「……まだ……楽しくなりそうです……ね」


(エイ)の小さな声に、(くろ)が豪快に笑う。


「そうだぜぇ」


「これからよろしくね」


フェルルが手を差し出すと、メデューサはその手をぎゅっと握った。


「はい!」


場の空気が和らぐ中、花火(はなび)が目を輝かせて言った。


「ねぇねぇ! スイスには空を飛ぶドラゴンの帝国があるんだって!」


「ドラゴン……」


マミは少し緊張した表情を浮かべる。


「なんだか……こわそう……」


「そうかな〜? 私は楽しみ!」


レナは無邪気に笑った。


「楽しそうであり、少し怖そうですね」


リリア=エジソンが理性的にまとめる。


「ドラゴンと、どっちが早いか競争してみたい、なの」


アビの言葉に、皆が一瞬沈黙し――


「ドラゴンさんが速そうですが」


メデューサが真面目に返すと、


「案外、アビが速いかもしれんぞ?」


(しおり)が面白そうに言い、


「それも、面白そうだな」


(リー)芳乃(よしの)が頷いた。


「スイスに行くのでしたら、転送装置で行くのがいいと思うわ〜」


ワインが助言する。


「あそこは山脈に囲まれているから〜」


「そのほうがいいと思ゆのよ!」


ともも元気よく賛同する。


「ありがとうございます!」


彩葉が深く頭を下げる。


その日の朝日が、彼女たちを包み込むように照らしていた。

それはまるで、新たな旅立ちを歓迎しているかのようだった。


――そして。


スイス・天空ドラゴン帝国 城内


「何!? 姫様がまたいない!?」


竜兵士の声が城内に響き渡る。


「探せ探せ! また人間の街に行っておらっしゃる可能性がある! 地上も探せ!!」


「まったく……あの方は……いつも抜け出すのですから……」


騒然とする兵士たちの背後、静かな回廊の影で――


「ふふっ……今のうちに……」


小さな影が、楽しそうに微笑んだ。


「今日は……面白いことが起きそう」


その視線の先にあるのは、空の彼方。

新たな翼と、新たな運命が交わる場所だった。


――旅は、次の舞台へと進み始める。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。

物語は新たな舞台へ進もうとしています。

仲間たちの選択と、空に広がる次なる運命を、これからも見届けていただけたら嬉しいです。


次回もお楽しみに。

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