表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルケオン  作者: れんP
ヨーロッパ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/182

旅は道連れ、心は選択

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

 ギリシャの昼下がり。

 柔らかな日差しが、パルテノン神殿の白い柱を照らし、空は穏やかな青をたたえていた。


 神殿を見下ろす高台には、天空石で作られたベンチがあり、そこに一人の少女が横たわっていた。


「……うぅ~ん……」


 小さく身じろぎし、彩葉(いろは)はゆっくりと瞼を開く。


「あれ……? ここは……」


 視界に入ったのは、見慣れない白い天井ではなく、澄んだ空と、どこか懐かしい神殿の輪郭だった。


「おや、目を覚まされましたか」


 穏やかな声がして、彩葉は体を起こす。


「ステンノさん!」


 そこに座っていたのは、落ち着いた微笑みを浮かべるステンノだった。


「あれ……? みんなは?」


「ふふ、あちらですよ」


 そう言って、ステンノは顎で示す。


「……?」


 彩葉が視線を向けると、広場の方では仲間たちが思い思いに過ごしていた。


「しかし、かっこよかったな~、あの時の彩葉」


 村正(むらまさ)の声が響く。


「そうじゃな。少しでも勇気がなければ、あぁはならんと思うのじゃ」


 (しおり)がうんうんと頷き、


「ワシもそう思う」


 (リー)芳乃(よしの)が腕を組んで同意していた。


 その光景を見て、彩葉は少し照れたように笑う。


「……みんな……」


 ふと、気づいたことがあり、彩葉はステンノに向き直った。


「そういえば……ステンノさん」


「はい?」


「向こうにいるエウリュアレさんも……人間の姿、ですよね?」


 ステンノは小さく目を見開き、すぐに微笑んだ。


「お気づきになりましたか。女神アテナが、私たちも元に戻してくださったのです」


 自分の手を眺める。


「久しぶりの人間の身体……もっと違和感があるかと思いましたが、不思議なものですね」


「じゃあ……力は?」


「えぇ」


 静かに頷く。


「神としての力も、ゴルゴンだった頃の能力も……どちらも、存在しています」


 彩葉は少し考え込む。


「それで……これからどうするんですか?」


「私たちは、イタリアへ向かおうと思っています」


「イタリアに?」


「はい。あの地には、力を制御する方法を知っている守護者がいると聞きました」


 少し遠くを見るような目で、ステンノは言う。


「噂に過ぎないかもしれません。それでも……行ってみる価値はあると思うのです」


 その瞬間、彩葉の顔がぱっと明るくなった。


「だったら!」


「?」


「一緒に行こ! 私たちもイタリアを通る予定なんです!」


「……よろしいのですか?」


 少し意外そうに目を瞬かせるステンノ。


「うん!」


 彩葉は迷いなく頷いた。


「仮同行、という形でしょうか」


 陽菜(ひな)が穏やかに言う。


「いいですね」


「うむ、旅は道連れというしな」


 栞が笑い、


「そうだぜ」


 村正も続く。


「……ありがとうございます」


 ステンノは深く頭を下げた。


「では、皆さんに話してきますね」


 そう言って立ち上がる。


「……」


 彩葉は、その背中を見送りながら、ぽつりと呟いた。


「……色々、あったなぁ……」


「彩葉?」


 隣に座る陽菜が声をかける。


「いや、なんでもない。ただ……」


 少し空を仰ぐ。


「旅って、大変だなって」


「ふふ」


 陽菜は柔らかく笑った。


「でも、まだ始まったばかりですよ」


「……そうだけど」


「それに」


 陽菜は続ける。


「確かに……色々、ありましたね」


「……うん」


 彩葉は静かに頷いた。


 ――しばらくして。


「ただいま~!」


 花火(はなび)の明るい声が響く。


「やったー! 同行だ~!」


「ふふっ」


 リリア=エジソンも楽しそうだ。


「楽しくなりそうですね」


 マイが微笑み、


「そうだね」


 フェルルも頷く。


「うん……」


 (エイ)が小さく同意し、


「あぁ」


 (くろ)も短く答える。


「短い間でしょうが、よろしくお願いします」


 エウリュアレが丁寧に頭を下げた。


「ううん、いいよ」


 彩葉は手を振る。


「私から誘ったんだし」


「もう少し、力を抜いてもいい」


 マミが言う。


「そうなのです」


 アビも元気よく。


「うんうん」


 レナが大きく頷いた。


 その時、陽菜が周囲を見回す。


「あれ? アテナ様とアルテミス様は?」


「お姉様たちは」


 アカンサスが答える。


「先に神界へ戻って、諸々の報告をするそうです」


「……」


 少し離れたところで、メデューサは立ち尽くしていた。


(私が……彩葉さんたちと?)


 脳裏に、アテナの言葉が蘇る。


『うん! 同行して、一緒に旅をしたらいいと思うよ。どうかな?』


(でも……私は、この力が……)


『そっか。じゃあ、仮同行して考えるのも悪くないんじゃない?』


 メデューサは唇を噛む。


(もし……この力で……仲良くなりたい人を傷つけてしまったら……)


「……」


「どうしたの?」


 彩葉が振り返った。


「メデューサちゃん。行くよ?」


「あ……い、いえ……はい!」


 慌てて答える。


「転送魔法陣、座標セット完了……」


 アカンサスが装置を操作する。


「行きますよ」


「うん! お願い!」


「それでは――発動……」


 光が広がり、視界が白に染まる。


 その直前、アカンサスは小さく呟いた。


「……行きましたか……ビアンカ=ヒナギクさん……ちゃんと、教えてくれるかな?」


 光の中で、新たな旅路が、静かに動き出していた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

出会いと選択が、これからどんな未来を形作っていくのか――

次回からの展開も、ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。


次回もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ