表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルケオン  作者: れんP
ヨーロッパ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/182

知恵の女神の神殿、そして怨嗟の声

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

 エーゲ海に浮かぶ数々の島々を越え、彩葉たちはついにギリシャの地へと降り立った。

 青く澄んだ空と、乾いた風。白い建物が連なる景色は、どこか神話の中に迷い込んだかのようだった。


「到着なの〜」


 アビがゆっくりと高度を下げ、皆の足が大地に触れる。


「わぁ〜……ここがギリシャ!」


 彩葉(いろは)は目を輝かせながら、周囲を見渡した。


「うん、変わりなさそう」


 アカンサスは懐かしそうに微笑む。


「えぇ、そうですね」


 アルテミスは静かに頷き、前を指し示した。


「では、行きましょうか。アテナちゃんのいる場所――パルテノン神殿へ」


 その言葉に、一同は期待と緊張を胸に、二人の後について歩き出した。


 丘を登り、石段を越え、やがてその姿が見えてくる。

 巨大な柱群。

 空に向かってそびえる白い神殿――だが、その一部は崩れ、欠け、傷ついていた。


「おっきぃ〜……」


 レナが思わず呟く。


「うん……」


 マミも、圧倒されたように見上げている。


「……でも」


 リリア=エジソンが、首をかしげた。


「なんで、欠損してるんですか?」


「あぁ、それは――」


 アルテミスが説明しようとした、その時だった。


「アルテミスお姉ちゃ〜ん!!」


 弾むような少女の声。


「わっ! もう、アテナちゃん!」


 アルテミスの胸元に、小さな影が勢いよく飛び込んできた。


「きゅうに飛びついてきたら危ないでしょ」


「えへへ〜」


 腕の中で、アテナは無邪気に笑う。


「まったく……可愛いんだから」


 そう言いながらも、アルテミスの声は優しかった。


「アテナお姉様、お久しぶりです」


 アカンサスが一歩前に出て、丁寧に頭を下げる。


「あ! アカンサス!」


 アテナはぱっと顔を輝かせ、


「久しぶり〜! ……おぉ〜、あの時の守護者たちだ〜!」


 彩葉たちを見回し、


「噂は聞いてるよ〜」


「そ、そうですか……ありがとうございます」


 彩葉は少し緊張しながら答えた。


「……あの時会った女神アテナと、同一人物とは思えないな」


 村正(むらまさ)がぽつりと漏らす。


「えぇ……」


 陽菜(ひな)も同意するように頷いた。


「とっても甘えん坊ですね」


 マイの言葉に、


「うん、アテナお姉様は仕事じゃない時はこんな感じ」


 アカンサスが苦笑する。


「……あと、怒るとやばい」


「どういうふうにやばいんだい?」


 フェルルが興味深そうに尋ねた。


「えっとね」


 アルテミスは少し考えてから言った。


「第一次世界大戦は知ってる?」


「もちろんじゃ」


 (しおり)が頷く。


「その戦いが終わったのって……アテナちゃんの介入のせいなの」


「なんじゃと」


 栞の目が見開かれる。


「それは興味深い」


 (リー)芳乃(よしの)も腕を組んだ。


「うん」


 アカンサスは神殿を見上げる。


「アテナお姉様が介入した理由は……このパルテノン神殿にある」


「神殿に?」


 花火(はなび)が周囲を見回す。


「たしかに、ボロボロ……」


「オスマン帝国が、この神殿を火薬庫として使ったらしいの」


 アルテミスが静かに語る。


「その上、爆発して……」


「長引いた神界の会議から戻った時」


 アカンサスは声を落とした。


「アテナお姉様は、自分の人間界にある神殿が壊れているのを見たの」


 彩葉は、言葉を失った。


「それで……怒って」


「敵も味方も関係なく攻撃して、戦争が終わった」


「……」


 しばし、沈黙。


「そりゃあ、怒るなって方が無理だな」


 (くろ)が低く呟く。


「うん……」


 (エイ)も静かに頷いた。


「たしかになの」


 アビも同意する。


「それで……再建してるの?」


 マミの問いに、


「えぇ」


 アルテミスは頷く。


「時間はかかっているけどね」


「でも!」


 アテナは胸を張って笑った。


「ちゃんと戻してくれてるから!」


 その明るい声が、神殿の空気を和らげた――


 その瞬間。


「キャぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 鋭い悲鳴が、空気を切り裂いた。


「!?」


 一同が一斉に振り向く。


「許さない……」


 低く、憎悪に満ちた女の声。


「アテナ!!!!」


 その叫びは、神殿の石壁に反響し、

 知恵の女神の聖域に、不穏な影を落とした。


 新たな因縁が、今、動き出そうとしていた。

ギリシャ編、ここから本格的に始動です。

知恵の女神アテナと、人の歴史が刻まれた地――パルテノン神殿。

その静かな空気の裏で、何かが確かに目を覚まそうとしています。

引き続き、お付き合いいただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ