表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルケオン  作者: れんP
日本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/33

新しい装い、海への約束

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

朝の光が町を照らす。

 昨日の風呂と温かい食事の余韻が、まだ皆の心に残っていた。


「お風呂にご飯まで、ありがとうございました」


 陽菜(ひな)が深く頭を下げると、風呂屋のおばあさんはにっこりと笑った。


「いいんだよ。それじゃあね」


 彩葉(いろは)も、頭を下げる。

 小さな礼に、ほっとしたような安堵が漂う。


「今日は……彼女の服を買いに行こう」


 陽菜が彩葉に目を向ける。


「うん、そうだね」


 小さな旅路のように、一歩ずつ歩き出す三人。

 陽菜の後について行くと、間もなく色とりどりの看板が立ち並ぶ商店街に差し掛かった。


「こっちに、いいお店があるんだ」


 陽菜の手が差し示すのは、雑貨も衣服も扱う小さな店。

 看板には「衣装と小物 彩葉(さよ)堂」と書かれていた。


「ここだよ。いろんなものが揃ってるんだ」


 店内に入ると、陽菜が店員に声をかけた。


「店員さん、この子に合う服を揃えてくれるかな」


「はい!」


 女性の店員は元気に頷き、店の奥に進む。

 だが、同時に店長――がたいのいい男性――が二人をじっと見下ろしていた。


「まぁ、可愛らしいお嬢さん」


 (エイ)は小さく息を呑む。


「っ……」


 彩葉も、少し戸惑いながら、


「こ、こんにちは……」


 (くろ)は店長の圧に思わず。


「でけぇ……」


 女性店員が慌ててたしなめる。


「もう! 店長! 店長はただでさえ怖いんだから、そんなに見ないの!

私が用意しますから。店長はレジに行っててください」


「わ、わかった……」


 喰はまだ落ち着かず小さく呟く。


「落ち込んでるぞ……」


「そ、そうだね。見た目はアレだけど、いい人なのかも……」


 彩葉は服を選ぶ店員を見つめながら、ほっと息をついた。


「こちらにどうぞ」


 店員の声に、陽菜が優しく影を促す。


「私が付き添おう。おいで」


 影はしばらくためらったあと、ゆっくりと奥へ歩みを進めた。


 やがて時間が経ち、二人が店の奥から戻ってきた。


「どう? この影ちゃん」


 陽菜の問いかけに、彩葉は目を輝かせる。


「可愛いです!」


 喰も影に目を向けて微笑んだ。


「あぁ、にあってるぞ、影」


 少し照れたように顔を赤らめる影。

 新しい服は、まるで影の心を解きほぐすように、柔らかな布で包んでいた。


 服を購入し、店を出る。


「ありがとうございました」


 彩葉は頭を下げ、影も小さく口を動かす。


「ありが……と……」


 店長も女性店員も、微笑んで見送った。


「靴まで選んでもらっちゃった」


 陽菜が嬉しそうに言う。


「でも、可愛いです……」


 彩葉も照れくさそうに笑う。


「良かったな〜、影……」


 喰も満足そうに肩を叩く。


「さて……次はどこに行くんだ?」


「そうだね……まだ決めてないや。どうする? 彩葉」


「うーん……」


 喰が顔を上げ、影を見つめて言った。


「だったら、こいつに海を見せてやりたいんだ」


「海か……でも、4月だし……まぁいいか。先に首塚に向かっていいかな?

知り合いに会いたいし」


「いいぜ」


「知り合い……?」


「ま、会ってからのお楽しみ。さ、それじゃ出発!」


「おー!」


「お、おー」


「……おー?」


 影も、小さな声で応えた。

 新しい服と新しい一歩が、これからの冒険の始まりを告げていた。

守護者の彩葉と、陽菜、そして影と喰――彼らの小さな旅は、まだ始まったばかりです。


 この物語の冒頭では、彩葉はまだ見えぬ核の状態で生まれ、人間の世界の片隅に降り立ちました。無垢で頼りない存在だった彼女が、陽菜との出会いを通して少しずつ、自分にできること、守るべきものの意味を知っていく――その過程を描くことが、私の今回の物語の中心でした。


 陽菜は彩葉にとって、ただの先輩でも、ただの仲間でもありません。彼の存在は、力だけでなく、思いやりや優しさをもって困難に立ち向かう姿勢を彩葉に教え、守護者としての第一歩を踏み出させる光でした。影や喰との出会いもまた、彩葉に「守るものは人だけではない」ということを教えてくれます。小さな命、悲しみを抱えた魂も、大切にすべきものなのです。


 第1話の廃墟での誕生から、第7話での海への約束まで――彼らはまだ旅の途中であり、成長も学びも続いています。読んでくださった皆さんには、彩葉たちが手探りで自分の力や役割を知っていく過程を、一緒に歩んでいただけたのではないでしょうか。


 物語はここでひとまず一区切りですが、守護者たちの冒険は続きます。次に何が待ち受けるのか、どんな仲間に出会い、どんな敵と遭遇するのか――その答えは、まだ誰も知りません。


 読者の皆さんが彩葉たちと一緒に笑い、驚き、時には涙を流すことが、この物語の願いです。

 そして、彼らが守るべきものを守り抜き、失われたものに光を取り戻していく姿を、どうか見守っていただければ幸いです。


 最後に、この小さな守護者たちに出会ってくれたあなたに、心からの感謝を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ