旗が翻る港町、交差する意志
この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。
それは神話でも、空想でもない。
人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――
**守護者**と呼ばれる存在だ。
彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。
意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。
だが、生まれた瞬間から強いわけではない。
迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。
これは、
忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が
初めて世界と向き合い、
初めて誰かと並んで歩き出す物語。
戦うことだけが、守ることではない。
それでも――
守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。
一本の大きな木。その木陰に集まり、彩葉たちはしばし言葉を交わしていた。
戦いを終え、次なる目的地を見据える、静かな時間。
その空気を切り裂くように、ひとりが口を開く。
「それと――」
李=芳乃が、にやりと笑った。
「ワシも、ついていくからな」
「……ほえ?」
レナの間の抜けた声が、場に響く。
「来てくれるの?」
花火は驚きながらも、嬉しそうに問いかけた。
「なんで?」
「理由か?」
李=芳乃は肩をすくめる。
「ワシが、ついていきたくなった。それだけだ」
一瞬の沈黙。
「……良いだろうか?」
その問いに、彩葉は即座に頷いた。
「うん!もちろん!」
振り返り、仲間たちを見る。
「みんなも、いいよね?」
一同は、迷いなく頷いた。
「これからよろしくな」
李=芳乃は、どこか照れくさそうに言う。
「うん!よろしく!」
夜が明ける。
インドの空に朝日が差し込み、旅立ちの時が訪れた。
「ロゼッタのところぉ~」
ロータスが、手をひらひらと振りながら言う。
「イギリスに行くならぁ~
トルコからぁ~イタリアにぃ行ってぇ~
そこから徒歩でぇ~行くといいよぉ~」
「アビの力なら、ひとっ飛びで行けるなの」
アビが胸を張る。
「でもぉ~」
ロータスは、ゆったりと首を振った。
「すごい距離だよぉ~?
それにぃ~色んなところを旅したほうがぁ~
いっぱい発見があるよぉ~」
彩葉は、少し考えてから頷いた。
「……そうですね」
そして、アビを見る。
「アビ、お願いできるかな?」
「わかったなの」
皆が自然と手をつなぎ合う。
「……エアーライド……なの」
ふわりと風が舞い上がり、地面が遠ざかる。
「バイバぁ~イぃ~」
ロータスの声が、小さくなる。
「トルコの守護者とぉ~
イタリアの守護者にもぉ~
よろしくねぇ~!」
「はい~!!」
こうして彩葉たちは、インドの地を離れ、次なる国――トルコへと向かった。
「見えてきたなの~」
アビの声。
「あれが……トルコ……」
彩葉の視界に広がるのは、青い海と石造りの港町。
トルコ・港町
「今日の来客は……」
港の高台。
大きな旗を担いだ少女が、不敵に笑った。
「すげぇ人物が来そうだぜ」
その隣で、白髪の少女が静かに目を細める。
彼女の周囲には、様々な形をしたユニットが浮遊していた。
「……断界同盟の幹部を、二人も倒したチーム」
低く、確信を込めた声。
「――“ラーレ”……行きますよ」
「おう!」
旗を持った少女――ラーレは、力強く応じた。
「ついたなの~」
アビの声と共に、彩葉たちは港へ降り立つ。
「ここが……トルコ……」
陽菜が、街を見渡す。
「トルコといえば、ケバブとかが有名じゃな」
栞が言う。
「なんだそれ!?食い物か!」
喰が身を乗り出す。
「……おいしそう……」
影が、ぽつり。
「もちろん、美味しいよ」
リリア=エジソンが微笑む。
「前に来たときより、人が増えてる気がする」
マイが周囲を観察する。
「……いたるところから、歴史を感じるね」
フェルルの言葉に、影も頷く。
「……うん」
「さて」
李=芳乃が腕を組む。
「どこから回る?」
「色々、回ってみたいです」
マミが、控えめに答えた。
「だったら!」
突然、元気な声が割り込む。
「オレ達が案内しよう!」
大きな旗を掲げた少女が、豪快に笑う。
「……はい……」
白髪の少女も、小さく一礼した。
「あなた達は……?」
彩葉が問いかける。
港町の風が、旗を大きく翻した。
新たな仲間、そして新たな舞台――物語はトルコへと向かいます。
交差しはじめる意志と、翻る旗。
次の地で待つ出会いが、彩葉たちに何をもたらすのか。
旅は、まだ続きます。




