表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルケオン  作者: れんP
アジア編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/182

天魔、駆け引きの誘い

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

 夕闇が街に溶け込みはじめた頃、

 彩葉たちの前に現れたその存在は、不敵な笑みを浮かべて名を名乗った。


「ワシは(リー)芳乃(よしの)! 見ての通り、キョンシーだ!」


 胸を張る小さな姿に、場の緊張が一瞬だけ和らぐ。


 だが、(しおり)はすぐに鋭い視線を向けた。


「中国のキョンシーが、なぜインドにおるのじゃ?」


「修行の身でな」


 芳乃(よしの)は軽く肩をすくめる。


「それに、この地で妙な噂を聞いた。修行も兼ねて、様子を見に来たのだ」


「変な話……とは」


 栞が問い返すと、芳乃はうなずいた。


「魂を抜かれた死体の話だ」


「やはりか……」


 栞の声が低くなる。


「中国やモンゴルでも、似た事件が起きておる。場所は違えど、状況があまりに似ておってな」


「それは……」


 彩葉(いろは)が息をのむ。


「一刻も早く解決せねばならん事態のようじゃな」


 栞の言葉に、皆が自然と頷いた。


「でも……」


 レナが不安げに口を開く。


「犯人が、まだわからないよ?」


「うん……」


 マミも同意するように小さく声を落とした。


 その時だった。


「それならぁ~、天魔が犯人だと思うよぉ~」


 間延びした声が、唐突に割り込んできた。


「!」


 陽菜(ひな)が即座に振り向く。


 そこにいたのは、クリーム色の髪と服を身にまとった少女。

 その背後で、キングコブラのような尾が、ゆらりと揺れていた。


「問題ない」


 村正(むらまさ)が静かに言う。


「彼女は、インドの守護者――ロータスだ」


「国の……守護者……!」


 彩葉が驚きの声を上げる。


「そうだよぉ~」


 ロータスは柔らかく微笑んだ。


「して?」


 芳乃が腕を組む。


「なぜ天魔が犯人だと?」


「うん~」


 ロータスは首をかしげながら答える。


「私、見たのぉ~。魂が抜かれた後、飛び去っていく影をぉ~」


 その声はのんびりしているが、内容は重い。


「彼は間違いなく、修行者を惑わす悪魔――天魔だよぉ~」


「なるほどの……」


 芳乃が納得したように唸った、その直後。


「……ところで、お主」


 芳乃はロータスの手元に視線を落とす。


「なにを食べておる?」


「ん~?」


 ロータスは口元をもぐもぐさせながら答えた。


「トリカブトぉ~」


「吐き出さぬか!!」


 芳乃が即座に叫ぶ。


「あれは毒だぞ!!」


「問題ないぞ」


 村正が落ち着いた声で言った。


「な、なぜだ!?」


「ロータスは元はキングコブラの守護者。キングコブラから生まれた存在だ」


 村正は淡々と説明する。


「だが、自身では毒を生成できない。だから、周囲の毒性生物を食べることで毒を摂取している」


「そ~だよぉ~」


 ロータスはにこにこしながら、

 ――ゴックン、と飲み込んだ。


「世界一危険な木『マンチニール』を食べられる、数少ない守護者でもある」


「えぇ……」


 芳乃は顔を引きつらせる。


「アレを食すのか……死体であるワシですら、口にしようとは思わんぞ……」


「たしかに……」


 陽菜(ひな)も思わず苦笑した。


「危険って看板まであるしね」


 リリア=エジソンが補足する。


「はい……」


 マイも小さく頷く。


「そんなに危険なのか……」


 フェルルが目を丸くし、


「あぁ、驚きだぜ」


 (くろ)が肩をすくめる。


「うん……」


 (エイ)も静かに同意した。


「ねぇ」


 花火(はなび)が話題を戻した。


「その天魔? がどこにいるか、わかる?」


「ううん~」


 ロータスは首を横に振る。


「知らないよぉ~」


「そっか……」


「だったら、アビが飛んで探しに行くなの?」


 アビが前に出る。


「いや」


 栞が首を振った。


「敵の力が分からん以上、むやみに一人行動は避けるべきじゃ」


「……わかったなの」


 アビは素直に引き下がった。


 ――その瞬間。


「お前らが……」


 低く、粘つくような声が闇から響いた。


「誰だ!」


 村正が即座に構える。


「黒幕のお出ましか?」


 芳乃が鋭く睨む。


「……あれはぁ~」


 ロータスが静かに告げた。


「天魔だよぉ~」


 闇が形を持つ。

 黒い影が、人の姿をとって立っていた。


「その通り」


 影は嗤う。


「我が名は――天魔」


 空気が、凍りつく。


「さぁ……」


 天魔は両手を広げた。


「駆け引きをしようじゃないか」


 その言葉と共に、

 インドの夜は、さらに深い闇へと踏み込んでいった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

新たな立場と視点を持つ存在が登場し、物語は少しずつ違う顔を見せ始めました。

彼らの言葉や行動が、今後どんな波紋を広げていくのか――

次回もお付き合いいただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ