鹿児島の風が、新たな出会いを呼んでいる
この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。
それは神話でも、空想でもない。
人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――
**守護者**と呼ばれる存在だ。
彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。
意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。
だが、生まれた瞬間から強いわけではない。
迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。
これは、
忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が
初めて世界と向き合い、
初めて誰かと並んで歩き出す物語。
戦うことだけが、守ることではない。
それでも――
守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。
鹿児島の街に吹く風は、火山の匂いと潮の気配を混ぜ込みながら、静かに通り抜けていた。
その風の中で、彩葉たちの前に立つ二人の少女は、どこか誇らしげで、そして少し緊張した面持ちをしていた。
「私はリリア! リリア=エジソン!
蓄音機の守護者だよ!」
胸を張って名乗った少女は、明るくはつらつとした声でそう言った。
一方、その隣で一歩引いた位置に立つ少女は、小さく息を吸い込み――
「わ、私はマイ……。マイクの守護者……です」
控えめながらも、芯のある声だった。
「エジソンじゃと!?」
栞が思わず声を張り上げる。
「……リリアと言ったか。エジソンとは、もしや……」
「あ、お父さんをご存知なんですか?」
リリアが目を輝かせて聞き返す。
「お父さんじゃと!?」
栞の驚きは、さらに一段階跳ね上がった。
「栞、落ち着いて」
彩葉が慌てて宥める。
「すごい慌てようです……」
「はい……」
レナとマミが揃ってうなずいた。
「エジソンって……そんなにすごい人なのです?」
アビが首をかしげる。
「当たり前じゃ。有名人じゃぞ」
栞は即答する。
「わぁ……お父さん、日本でも有名なんですね。うれしいです」
リリアは素直に喜び、にこりと笑った。
「それで……お父さんって、どういうこと?」
陽菜が冷静に問いかける。
「リリアちゃんは、最初の蓄音機から生まれた存在なんです」
マイが静かに説明する。
「そうだよ! だからお父さんなの。この名前も、お父さんがつけてくれたんだ!」
「そうか……いい名前だな」
村正が穏やかに言う。
「ありがとう!」
リリアは嬉しそうに答えた。
「で?」
花火が首をかしげる。
「なにか用があるんじゃないの? 英雄がどうとか」
「そ、そうですよ!」
リリアは思い出したように声を上げる。
「あの怪鬼を倒した英雄さんたちですよ! 知らないんです?」
「広まるのは、これからだよね……」
マイがそっとフォローする。
「……英雄……なの?」
影が小さくつぶやいた。
「そうだよ! もう有名人なんだから!」
「……そう……なんだ……」
影は少し戸惑ったように目を伏せた。
「と言われても、実感は湧かないよな」
喰が肩をすくめる。
「そうなのかい?」
フェルルは興味深そうに首を傾げた。
「ねぇねぇ!」
リリアは一拍置いて、にっこりと笑う。
「私たち、“音楽”を集める旅をしてるんだけど……同行してもいいかな?」
「音楽?」
「うん。いろんな音を聞いて、記憶に残すの」
マイが補足する。
「それ、すごく素敵だね!」
彩葉の声が弾んだ。
「みんなはどう?」
仲間たちは、迷いなくうなずいた。
「よし、出発しよう! 屋久島に!」
「お〜!」
声が重なり、風に乗って広がる。
しばらく歩くと、視界が一気に開け、青い海が広がった。
「……手は、繋いだ? なの」
「うん! 大丈夫!」
「それじゃあ、行くなの」
体がふわりと浮き上がる。
「わぁ〜! 空の旅なんて、はじめて〜!」
「うん……すごい……」
やがて見えてきたのは、深い緑に覆われた島。
――屋久島。
巨木が連なる森の奥深く。
「……お客さん……来る……」
「敵か?」
「違う……怪鬼を倒した人たち」
「マジかよ……」
森が、ざわりと揺れた。
屋久島の奥で、新たな視線が、静かに彩葉たちを捉えていた。
鹿児島での出会いは、音と風を連れてきました。
英雄と呼ばれることに戸惑いながらも、彩葉たちはまた一歩、世界の奥へ進みます。
次なる舞台は屋久島新たな物語が待っています。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
次回もお楽しみに




