決戦・太宰府を守る守護者たち
この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。
それは神話でも、空想でもない。
人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――
**守護者**と呼ばれる存在だ。
彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。
意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。
だが、生まれた瞬間から強いわけではない。
迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。
これは、
忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が
初めて世界と向き合い、
初めて誰かと並んで歩き出す物語。
戦うことだけが、守ることではない。
それでも――
守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。
――太宰府天満宮、鳥居前。
大地を揺らす咆哮が、空を引き裂いた。
「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
漆黒の瘴気をまとった異形が、ゆっくりと身を起こす。
その姿は人に似ていながら、人ではない。
歪んだ腕、剥き出しの牙、そして底知れぬ怨念。
「っ……すごい圧……!」
彩葉は歯を食いしばり、前に出た。
空気そのものが重く、肺に吸い込むだけで力を奪われる。
怪物は低く唸り、鈍い声を響かせる。
「……オマエラ……邪魔ヲスルナ……
オレハ……コノ土地ノ結界ヲ……ハカイシニ来タ……」
「破壊なんて、させない!」
彩葉の声が、場を貫いた。
「えぇ」
陽菜が一歩並び、火縄銃を構える。
「あぁ! どこの誰か知らねぇが、ここは通さねぇ!」
村正も、月光刀と陽光刀を抜き放つ。
怪物は、ぎょろりと一同を見渡し、歪んだ笑みを浮かべた。
「ホウ? オレヲ……知らナイノカ?」
次の瞬間、瘴気が膨れ上がる。
「ナラ……オシエテヤル!
オレハ――怪鬼! 断界同盟ノ幹部ダ!」
「断界同盟じゃと……やはり!」
栞が眉をひそめる。
「アァ! ソウダ!
オレハ断界同盟! その幹部様ダ!」
「断界同盟といえば……」
村正が歯噛みする。
「一つ目入道や、太歳星君が動いてた組織だな」
「フハハハハ!」
怪鬼は哄笑した。
「ソンナ奴ラハ、オレノ敵デハナイ!
大人シク降参シロ!
今ナラ……逃ガシテヤランコトモナイ!」
「逃げるわけない……」
マミが静かに首を振る。
「そうだよ!」
レナも、拳を握りしめる。
「アビたちは……戦うです……!」
「良く言った!」
菅原道真公が、結界の奥から声を張り上げる。
「私も後方で加勢しよう!」
「はーい! 私も戦う〜!」
花火が軽やかに跳ねる。
彩葉は仲間を見渡し、深く頷いた。
「うん! みんな……いくよ!」
「はい! なのです!」
戦いの火蓋が、切って落とされた。
――――――
アビは怪鬼の周りを高速で飛び回り、翻弄する。
「ぬ、ぬぅ! 鬱陶シイ!
オレノ周リヲ……飛ブナ!」
怪鬼が腕を振るい、瘴気の波を放つ。
その瞬間、地面に無数の梅の紋が浮かび上がった。
「――呪梅牢獄」
菅原道真公の低い詠唱とともに、梅の花弁が舞い散る。
「さぁ、これで敵は梅の花粉に毒され弱る。
そして、ここからは出られぬ!」
怪鬼の動きが、わずかに鈍った。
「今だ!」
「おう! ダークバインド!!」
喰の影が地面を這い、怪鬼の足を絡め取る。
「ストラップ・ニードルバインド!」
彩葉の拘束が重なり、無数の光の糸が怪鬼を縛り上げた。
「ぬぅ! 何ダコレハ……動キガ……!」
「でます!」
陽菜が前へ。
「あぁ! お前と前に出られるとはな!」
「はい!」
乾いた銃声が連なった。
「パァン! パァン! パァン! パァン! パァン!」
弾丸が的確に瘴気の要を撃ち抜く。
「月光・三日月!!」
村正の斬撃が走る。
「それともう一つ――
陽光・日烈斬!!!」
月と太陽、二つの刃が交差し、怪鬼の身体を深く裂いた。
「ぐぬぬぬぬぬ……!」
怪鬼は拘束を引きちぎろうと、全身に力を込める。
「させない!」
「アナフィラキシーオーラ!!」
レナが光となり、瞬時に間合いを詰める。
「……スピリットブースト」
影の低い声が響いた。
影の声とともに、レナの波動がさらに増幅される。
――光速の衝撃。
「ガァッ……!」
怪鬼の身体が、大きく仰け反った。
「アビさん!」
「わかったなの!」
「籠球・連続シュート!!!」
マミの放った無数の霊力球が宙を舞う。
「私も! 炸裂・花火大会!」
花火の技が重なり、空が赤と金に染まる。
「……今なの!」
爆裂の直前、アビが跳び退く。
「ぬぅ! 小賢シイマネヲ……!」
「ブレイブクロー!!」
鋭い爪撃が、怪鬼の腕を切り裂いた。
「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
腕ガァ!!!」
だが、怪鬼はまだ倒れない。
「……許サンゾ……!
皆殺シダ!」
黒い霊体が噴き出す。
「怨霊・ダークゴースト・スピリット!!」
「みんな、下がって……!」
彩葉が前に出た。
――一瞬、音が消えた。
瘴気も、風も、怪鬼の嘲笑すら止まる。
「フハハハハ!
自ラ前ニ出テ……オレノ技ヲ食ラウトハ!」
次の瞬間。
「……なに……!?
グッ……コノ光ハ!?」
彩葉の身体が、神々しい輝きに包まれる。
「……『神装』……解放……」
静かな声とともに、世界が一変した。
「……きれいなのです」
アビが目を見開く。
「うん……」
「……とても」
「ふむ……これが、試練の成果なのじゃな」
「前より、強くなってるじゃないか!」
「……」
「すげぇパワーアップだな!」
「見違えたね」
仲間たちの声を背に、彩葉は一歩踏み出す。
「ふふっ……」
菅原道真公が微笑む。
「今はまだ完全ではないが……時間の問題だろう」
「フハハハハ!
コレホドノ敵ハ……久方振リダ!」
彩葉は、静かに告げた。
「……クロノ・パッキング」
空間が歪み、怪鬼の動きが止まる。
「敵が……停止した!?」
「……こいつの周りだけ、時間が止まってるなの」
「見事だ」
そして――
時が、戻りかけた刹那。
「……グノーシス・オーバーロード」
知識と概念が、爆発となって解き放たれた。
「グァァァァァァ!????」
閃光の中で、怪鬼は崩れ落ちる。
「……ク……ハハハ……
オレヲ倒シタトコロデ……
幹部ハ……他ニモイル……
ソレニ……アノ御方……モ……」
言葉は、塵となって消えた。
沈黙。
「……」
「彩葉!」
陽菜が駆け寄る。
彩葉は力尽き、その場に倒れ込んだ。
「……うぅ……敵は……?」
「お主が倒したよ」
菅原道真公の声は、優しかった。
「……良かった……」
安堵の言葉を残し、彩葉は意識を手放す。
「お疲れ様」
太宰府の空には、静かな風が吹き始めていた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
彩葉たちが選び、進んでいく未来はどこへ向かうのか――。
引き続き、彼女たちの行く末を見届けていただければ幸いです。




