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アルケオン  作者: れんP
日本編

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43/59

試練・陽菜編

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

静かな回廊に、淡い光が差し込んでいた。

外で行われていた試練の気配は遠ざかり、この場所だけが、切り離されたように澄んでいる。


陽菜(ひな)は、そこに一人立っていた。


「……僕は、なにをすればいい?」


小さな問いだった。

だがその声には、確かな迷いが滲んでいた。


菅原道真公の御霊は、穏やかな表情のまま宙に浮かび、陽菜を見つめる。


「ふむ……次は、お主の番だな」


陽菜は視線を伏せる。


責められてはいない。

それでも、胸の奥を見透かされたような感覚が、消えなかった。


「コレを見よ」


杖が振られ、空間が揺らぐ。


三つの光景が、陽菜の前に浮かび上がった。


「……これは……」


そこにいたのは、すべて“自分”だった。


火縄銃を構え、最前線に立つ陽菜。

迷いなく引き金を引き、仲間を守る盾となって戦っている。


次の像では、仲間の背後。

一歩引いた位置から、正確な援護射撃で戦局を支える陽菜がいた。


そして――最後の光景。


火縄銃を下ろしたまま、戦場の只中に立ち尽くす陽菜。

周囲で戦いは続いているのに、時間だけが流れ、誰も振り向かない。


「……全部、僕……?」


声が、かすれた。


「そうだ」


道真公の御霊は静かに言う。


「お前の試練は――“選択”だ」


陽菜は唇を噛む。


「前に出れば、仲間を危険に晒すかもしれない。

後ろにいれば、自分が戦っていないと責めてしまうかもしれない……」


最後の光景から、目を逸らした。


「……選べなかったら、どうなるんですか」


「その姿が、答えだ」


淡々とした言葉が、胸に突き刺さる。


「力とは、持つことではない。

“どう使うかを決めること”だ」


「お前は優しすぎる。

誰も傷つかぬ道を探し、結果として、何も守れぬことがある」


陽菜は、思わず拳を握りしめた。


「……怖いんです。

僕が選んで、誰かが傷ついたらって……」


「ふむ」


否定はなかった。


「では問おう。

お前が選ばずに立ち尽くした結果、誰も傷つかぬと――言い切れるか?」


答えは、最初から分かっていた。


「覚えておけ」


三つの映像が溶け合い、一つになる。


そこには、戦場全体を見渡しながら火縄銃を構える陽菜がいた。

前に出る時も、後ろに下がる時もある。

だが、その目に迷いはない。


「前か後ろかは、優劣ではない。“役割”だ。

状況を見て、仲間を見て、自分を信じ――選び続けよ」


陽菜は、深く息を吸った。


「……はい」


「僕は……逃げません。

その時、その瞬間に、僕の役割を選び続けます」


道真公の御霊は、満足そうに頷いた。


「良い答えだ」


結界が解け、回廊の光が柔らかくなる。


「これで、お前の試練は終わりだ」


陽菜は、静かに頭を下げた。


結界内部 別の場所にて


「……最後は、お主じゃ」


「はい!」


彩葉(いろは)は答える


次なる試練の気配が、確かに立ち上がった。


それぞれが、自分の答えを胸に刻みながら――

物語は、最終の試練へと進んでいく。

第四十三話「試練・陽菜編」をお読みいただき、ありがとうございました。


陽菜の試練は、力の強さや技量を問うものではありませんでした。

「前に出るべきか、支えるべきか」――その二択のどちらが正しいかではなく、

迷いながらも選び続ける覚悟そのものが、彼に求められた答えです。


優しさは、ときに刃にも盾にもなります。

誰も傷つけたくないという想いは尊く、同時に、選ばなければ何も守れない現実も存在します。

陽菜はその矛盾と正面から向き合い、自分の役割を「固定せず、逃げず、選び続ける」ことを選びました。


残るは――彩葉。

試練・彩葉編へ、続きます。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

引き続き読んでくれるとうれしいです

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