表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルケオン  作者: れんP
日本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/64

試練・栞編

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

結界の内側は、過剰なほどの静寂に満ちていた。

風も音も止まり、世界そのものが息を潜めている。

ただ、(しおり)の呼吸だけが、淡く、確かに響いている。


「支援妖術は完璧のはずじゃが……」


栞は腕を組み、菅原道真公の御霊を見据えた。

自負がある。誇りもある。

仲間を支え、戦局を動かしてきた自覚は、確かなものだった。


「ふむ……」


御霊はゆっくりと首を振る。


「支援そのものは、確かに高水準だ。判断も早く、効果の選択も正確。だが――」


視線が、栞の周囲に揺らめく妖気へと向けられる。


「お前は、常に全力を流し続けている」


「……何が悪いのじゃ?」


「無駄が多い」


言葉は静かだが、鋭かった。


「必要な分以上を撒き続けている。結果、仲間は安定するが、お前自身の消耗が激しい。長期戦になれば、最初に倒れるのは支援役だ」


栞は、はっと息を呑んだ。


「妾は……皆を守るために……」


「その心は尊い」


御霊は、優しく続ける。


「だが“守る”とは、流し続けることではない。“制御する”ことだ」


指を鳴らすと、栞の前に淡い光の紋が浮かび上がった。


「試練は単純だ。今からお前は、妖気の流量を三割まで落とせ」


「三割……?」


「それで、私の攻撃を耐え抜け」


「……!」


光が弾ける。

瞬間、圧が結界全体を覆った。


「っ……!」


反射的に、栞は力量強化の妖術を展開しようとして――止めた。


(だめじゃ……今まで通りでは……)


深く息を吸い、妖気を“絞る”。

全身に巡っていた力を、必要な箇所へと集約する。


「ほう……」


御霊の声が、わずかに感心を帯びる。


第二撃。

圧は先ほどより鋭く、重い。


「……ぐ……」


歯を食いしばり、栞は結界を維持する。

全力ではない。だが、無理もない。


(ここじゃ……ここにだけ流せば……)


第三撃。

今度は連続した波動。


「っ、はぁ……!」


妖気の配分を変え、必要な瞬間だけ増幅する。

それ以外は、沈める。


結界が、耐えた。


「……見事だ」


御霊は、静かに頷いた。


「支援とは、仲間を常に満たすことではない。必要な瞬間に、必要なだけ与えることだ」


「……妾は……」


栞は胸に手を当てる。


「皆を信じきれておらんかったのかもしれぬな……」


「信じよ」


御霊は微笑む。


「仲間の力を。お前自身の判断を」


光が、ゆっくりと消えていく。


「合格だ、栞」


「……感謝する」


栞は、深く一礼した。


 


――別の場所。


(エイ)は、静かに立っていた。

その隣で、(くろ)が腕を組む。


「……」


「オレ達は、なにをすればいい?」


菅原道真公の御霊は、二人を見比べる。


「ふむ……そうだね」


少し考えたあと、口元に微笑を浮かべた。


「影。お前は“存在を消しすぎる”」


影が、わずかに肩を揺らす。


「喰。お前は“前に出すぎる”」


「ははっ、言われ慣れてるぜ」


御霊は、両手を広げた。


「次の試練は……二人一組だ」


影と喰が、同時に顔を上げる。


「互いの欠点を補い合え。影は喰を消せ。喰は影を前に出せ」


結界が、再び形を変える。


「試練を開始しよう」


静と動。

正反対の二人の修行が、いま始まろうとしていた。

第四十一話・試練編は、栞というキャラクターの「強さの本質」に焦点を当てた回でした。

栞はこれまで、仲間を支えることに一切の妥協をせず、常に全力で在り続けてきました。その姿は頼もしく、同時に危うさも孕んでいます。今回の試練は、彼女の力不足を問うものではなく、「力の使い方」「信頼の在り方」を問い直すものでした。


支援とは、尽くし続けることではなく、必要な瞬間を見極めること。

仲間を信じるからこそ、力を預け、引くこともできる——その気づきが、栞を一段階先へと導いたのだと思います。


また後半では、影と喰という対照的な二人に、新たな課題が提示されました。

静と動、隠と攻。正反対だからこそ噛み合わない二人が、互いを補い合うことでどんな変化を見せるのか。次の試練は、個の成長ではなく「関係性」が試されるものになっていきます。


それぞれの欠点は、見方を変えれば才能でもあります。

この試練を経て、彼らがどのような答えを出すのか——次話も、ぜひ見届けていただければ幸いです。


ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ