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アルケオン  作者: れんP
日本編

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34/87

海上に煌めく朱の祈り

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

彩葉(いろは)たちはフェリーを降り、潮の香りを含んだ空気に包まれながら、厳島神社へと足を進めていた。潮騒が耳に心地よく、波間には小さな光が揺れている。鳥の鳴き声が頭上を舞い、神社の朱色の大鳥居が海上に浮かぶ姿が、目の前に広がっていた。


「わぁ〜! ここが厳島神社! きれいなところだね」


彩葉の瞳は、神社の景色にくぎ付けになっていた。海の青と朱色の大鳥居、そして遠くに見える森の緑が見事に調和している。


「うん」陽菜(ひな)も、手を胸に当てながら静かに息を吸った。


アビは少し誇らしげに空を見上げて言う。


「アビの故郷の自慢のところなのです」


灰原は穏やかに微笑みながらも、どこか懐かしげに目を細めた。


「えぇ」


(しおり)は手を組み、目を細めて朱色の鳥居と海の光景を見渡す。


「ここの歴史もすごいのであろうな……」


マミは少し首をかしげ、不思議そうに周囲を見渡す。


「不思議な感じ……」


レナは目を輝かせ、波打ち際に置かれた小さな灯篭を指差した。


「うん!」


(くろ)は手を腰に当て、視線を朱色の大鳥居から神社の本殿へと移す。


「すげぇ……」


(エイ)は目を細め、少し戸惑いながらも、波間に揺れる大鳥居をじっと見つめた。


「……うん……」


村正は肩を揺らして深く息を吸い込む。


「こんなにいいところだとは……」


参道を歩くと、木漏れ日が彩葉たちの肩や髪を柔らかく照らす。朱色の欄干と石段のコントラストが、どこか時間を超越した空間を作り出していた。彩葉は足を止め、深呼吸を一つして目を閉じると、海の香りと風の冷たさが体の奥まで染み込むようだった。


「空気が澄んでる……」


マミも小さく息をつき、手を胸に当てた。


アビは小さく飛び上がり、彩葉たちの頭上で旋回する。


「アビ、舞うのです……なの」


彩葉たちは声をあげて笑い、手を伸ばしてアビを追いかける。子供のような無邪気さが、厳かな神社の空間と絶妙に混ざり合った。


灰原(はいばら)は少し離れて、ゆっくりと二人を見守りながら、目の前の海上に視線を向ける。


「ここも、守るべき場所です」


彩葉は振り返り、灰原の表情を見つめる。深い眼差しの中に、長い年月の責務と、それでも揺るがぬ優しさが混ざっていた。


神社の朱色の橋を渡り、本殿の前まで来ると、鈴の音が風に乗って響いた。観光客も多く、写真を撮る人々や参拝する人々で賑わっている。彩葉たちは一列になって歩き、参拝の作法に従い、手を合わせて目を閉じた。


「……平和が、続きますように……」


マミが小さな声でつぶやくと、彩葉はそっと彼女の肩に手を置いた。陽菜や影も同じように、静かに祈りを捧げる。


その時、ドスン、ドスンッ――と、地面を揺らすような、重く巨大な音が聞こえた。彩葉たちは息を呑む。


「……なに……?」


空気が一瞬、張り詰める。海の波も、鳥の鳴き声も、何もかもがその音に吸い込まれるかのように静まり返った。


「クククッ……ここが、人間の街……我ら断界同盟の拠点としてくれる」


深く低く響く声。その言葉に彩葉たちは思わず背筋を伸ばす。視線を向けると、街の向こうに巨大な影がうごめいている。影の輪郭からは、異質な力と禍々しい気配が漂っていた。


彩葉は影の肩を軽く叩く。


「みんな……気をつけて」


灰原も短く頷く。


「……そうですね。これは、私たちが見過ごせる問題ではありません」


マミはアビの手をしっかり握り直す。


「……でも、大丈夫……なのです……」


彩葉は皆の顔を順に見渡し、強く頷いた。


「うん……私たちなら、きっと守れる」


波打つ海、朱色の大鳥居、そして重く響く断界同盟の足音――。広島の街に、守護者たちの戦いの序章が静かに始まろうとしていた。

ここまで読んでくださりありがとうございます

潮風に揺れる朱色の大鳥居、海面に反射する光、そして静かに響く鈴の音――。彩葉たちは、守護者としてだけでなく、ひとりの旅人としてもこの場所の空気を深く胸に刻みました。


今回は、厳島神社の美しさと、守るべきものの尊さを改めて感じる旅のひとときを描きました。海の青と鳥居の朱が織りなす光景は、守護者たちの心にも静かな祈りと希望を灯したことでしょう。


しかし、穏やかな海や朱の輝きの裏には、新たな試練の影が静かに迫っています。断界同盟の足音はまだ遠く、海の波と風の間に隠れていますが、守護者たちはそれを確かに感じ取っていました。平和と静けさの中に潜む緊張。それもまた、旅の一部であり、成長の一歩なのです。


読者の皆さまも、彩葉たちと共に潮の香りを感じ、朱の光に心を染めながら、次の旅の舞台を想像していただければ幸いです。次回は、この静けさの先にある、新たな守護者との出会いと、街を守る戦いが幕を開けます。


広島の海と朱の祈りが、物語の中で静かに光り続けますように――。

次回もお楽しみに

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