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アルケオン  作者: れんP
日本編

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28/34

海と芸術が息づく島で

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

四国を離れたフェリーは、穏やかな波を切りながら進んでいた。


 潮の匂いが風に乗り、甲板を満たす。

 やがて、白い岸壁と低い建物が連なる島影が近づいてきた。


「……見えてきたね」


 彩葉(いろは)が目を細める。


 その瞬間、空から甲高い鳴き声が降ってきた。


 ――キィ、キィ。


 カモメや小さな海鳥たちが、まるで歓迎するかのようにフェリーの周囲を旋回している。


「鳥たち……」


 マミが空を見上げ、小さく笑った。


 フェリーが岸に着く。

 タラップが降ろされ、人々が島へと足を踏み出していく。


 そのとき――


「…………お客様がまた来た〜……」


 低く、間の抜けた声。


「有名になってうれしい……聖地であり、アートの島でもあるこの島が……」


 船乗り場の屋根の上。

 そこに、白髪の少女が腰を下ろしていた。


 白い髪が風に揺れ、ぼんやりと海を見下ろしている。


「……あれ〜……守護者がいる〜……」


 少女の視線が、確かに彩葉たちを捉えた。


「ついた〜!」


 彩葉がぱっと明るい声を上げた。


「ふむ、ここが……鳥〇島かの」


「違いますよ」


 即座に陽菜(ひな)が訂正する。


「お前ら、何の話をしてるんだ?」


 村正(むらまさ)が首をかしげる。


「早く行こ〜う!」


 レナが前に飛び出す。


「はい!」


 マミも続く。


「……うん……」


 (エイ)は小さく頷き、(くろ)はその後ろを歩く。


「おい、待てって」


 喰が呼び止めるが、


「元気だね〜」


 彩葉は笑いながら振り返った。


「そうだな」


 村正も歩き出す。


「島をゆっくり見て回ろう」


「うむ」


 (しおり)が頷き、


「そうですね」


 陽菜も続いた。


 こうして一行は、直島の中へと足を踏み入れた。


 島の道は、どこか不思議だった。


 海沿いを少し歩けば、突如として現れる巨大なアート作品。

 コンクリートの建物と自然が違和感なく共存し、

 道端には小さな彫刻や、意味深なモニュメントが静かに佇んでいる。


「……わぁ……」


 レナが立ち止まる。


 視線の先には、海を背にした巨大な南瓜のオブジェ。


「これ……有名なやつだよね?」


「うん」


 陽菜が頷く。


「写真で見たことがある」


 マミは南瓜を見上げ、そっと呟いた。


「……不思議……」


「何がじゃ?」


 栞が尋ねる。


「……形は……かわいいのに……」


 マミは少し考えて、


「……なんだか……強い……気持ちが……詰まってる……」


 彩葉はその言葉に、静かに頷いた。


「うん……ここ、そういう場所だね」


 島を歩くにつれ、時間の感覚が薄れていく。


 古い家屋を改装したアートスペース。

 白壁に映る夕方の光。

 風に揺れる草木と、遠くで聞こえる波音。


 影はいつの間にか、栞の背中に寄り添うようにして眠っていた。


「……すぅ……」


「ふむ」


 栞はその重みを感じながら、静かに微笑む。


「安心しておるのじゃな」


 喰が周囲を見回す。


「人も多いけど、騒がしくねぇな」


「島全体が……落ち着いているからでしょうね」


 陽菜が答える。


 やがて、空は橙色に染まり始めた。


「楽しかった〜……」


 彩葉が伸びをする。


「たくさんのアートがあったね」


「うん!」


 マミは力強く頷いた。


「……あっという間に夕方だよ〜」


 レナが空を見上げる。


「影も……寝てしまったのじゃ」


 栞の背中で、影は安らかな寝息を立てている。


「そうだなぁ……」


 喰が頷き、


「島ってのは……自然が豊かで、静かで……いいところだな」


「うん」


 陽菜も同意する。


「僕も、そう思うよ」


 そのとき――


「待った!」


 鋭い声が夕暮れに響いた。


「っ!」


 村正が即座に身構える。


「誰だ!」


 道の先に立っていたのは、一本角を持つ少女。


「オレか?」


 少女はニッと笑った。


「オレは(あや)だ」


「角が一本……」


 彩葉が呟く。


「鬼……? いえ……」


 陽菜が気配を探る。


「この感じ……」


「鬼人か」


 村正が言った。


「珍しいな」


「おぉ! わかるのか!」


 綾は楽しそうに笑った。


「そうだ! オレは鬼人、最後の生き残りだ!」


「……最後……」


 マミが小さく呟く。


「それって……同族が……?」


 レナが言葉を濁す。


「まぁ、そうなるな」


 綾は肩をすくめた。


「陰陽師に蹂躙されて以来、オレ一人だ」


 少し間を置き、


「女木島に住んでる。たまにこうして直島に遊びに来るんだ」


「……あいつに、会いにな」


「綾〜?」


 今度は、柔らかな声。


「いきなり現れたら、びっくりするでしょ〜?」


 白髪の少女が、夕暮れの中から現れた。


「挨拶なんて、堅苦しいのは嫌だからな!」


 綾は笑う。


「あなたは……?」


 彩葉が尋ねる。


「綺麗な……白髪……」


 レナが思わず呟く。


「申し遅れました〜」


 少女は穏やかに微笑んだ。


「私は……(なお)


 その笑顔は、島の空気とよく馴染んでいた。


「ここ直島の……守護者をやっている者です」


 夕陽の中、

 島と芸術と守護者たちが――

 静かに、ひとつにつながった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


今回は四国を離れ、直島という「芸術と静けさ」が共存する場所を舞台にしました。

戦いや緊張が続いていた流れの中で、登場人物たちが少しだけ肩の力を抜き、それぞれが島の空気に触れる時間を描いています。

マミにとっても、彩葉たちにとっても、この直島での時間は“次へ進むための間”であり、心を整えるひとときです。


そして、新たな出会いとして現れた鬼人の綾、直島の守護者・直。

この島での出会いが、これからの旅にどんな影響を与えていくのか、少しずつ明らかになっていきます。


引き続き読んでくれたらうれしいです。

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