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アルケオン  作者: れんP
日本編

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25/34

ひとときの安らぎ、その空の下で

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

「これ、高知でもらった茶葉で作ったお茶です。どうぞ」


百江(ももえ)がそう言って、湯気の立つ湯呑みを一人ひとりの前に置いていく。


「ありがとうございます」


彩葉(いろは)は両手で湯呑みを受け取り、丁寧に頭を下げた。


「いえいえ……ポポっ……」


百江は軽く笑うと、ふと窓の外へと視線を向ける。


「……寧々(ねね)、楽しそうですね」


「あぁ」


村正(むらまさ)も同じ方向を見る。


「他の奴らもな」


窓の外では、開けた空間にいくつか残された遊具の周囲で、喰、影、レナ、そして寧々が思い思いに過ごしていた。


(くろ)はブランコを力いっぱい漕ぎ、鎖がきしむ音を響かせている。


「おぉー!これ、思ったより高くなるな!」


「きゃっ……!」


少し離れたところで、レナがそれを見て思わず声を上げる。


「だ、大丈夫ですか!?」


「平気平気!」


喰は笑いながら、勢いよく地面に着地した。


その近くでは、寧々がジャングルジムの下に立ち、じっと様子を眺めている。

紙袋の奥から覗く視線は、興味深そうでありながら、どこか遠慮がちだった。


(エイ)もまた、少し離れた木のそばに立っている。


遊びの輪の中に入りたい気持ちはあるのに、一歩が踏み出せない。

けれど、ブランコが揺れるたび、レナの笑い声が聞こえるたび、その視線は自然とそちらへ向いていた。


「……」


影は、そっと手を握りしめる。


寧々も同じように、遊具へ視線を向けていた。


二人の距離は少し離れている。

けれど、どちらも“混ざりたい”という同じ気持ちを抱えているのが、どこか似ていた。


少し離れたベランダでは、栞が椅子に腰掛け、本をめくっている。

風に揺れるページの音と、木々のざわめきが静かに混ざり合っていた。


一方、室内。


「そうですね。楽しそうですね」


陽菜(ひな)が微笑みながら言う。


「ここには、遊具がたくさんあるんですね」


「えぇ」


百江は頷いた。


「ここはもともと、子供たちのために開こうとしたキャンプ場だったそうです」


彩葉が興味深そうに身を乗り出す。


「キャンプ場?」


「えぇ。ただ、作っている最中に別の場所へ計画が移ってしまって……

これは、その名残だそうですよ」


「へぇ~……」


彩葉は湯呑みを口に運び、目を見開いた。


「あ、このお茶……美味しい」


「ポポポっ、それは良かったです」


百江は満足そうに笑った。


そして、ふっと表情を引き締める。


「それで……山乃(やの)


名を呼ばれ、山乃は背筋を伸ばす。


「……少しは、落ち着きました?」


「……はい……」


山乃は静かに答えた。


「……元に戻ってる……」


マミが小さく呟く。

先ほどの異形の姿ではなく、いつもの人型だった。


「あれが、元の姿なんだっけ……

じゃあ、“元に戻った”は違う?」


百江は腕を組み、山乃をじっと見る。


「まったく……」


その声には、はっきりとした叱責が込められていた。


「「行ってくる」の一言だけ伝えて勝手に行くなんて!

自殺行為ですよ!!」


「……はい……」


山乃は肩をすくめるようにしながら、深く頭を下げた。


「すみませんでした……」


「まったく……」


百江はため息をつく。


「今回は、私が早めに場所を特定して連れ帰ったから良かったものの……」


視線を逸らし、ぽつりと呟く。


「……本当に……」


「……」


山乃は何も言えず、ただ黙ってその言葉を受け止めていた。


再び窓の外を見ると、喰が今度はレナを誘って鬼ごっこを始めている。


「ま、待ってください~!」


「ははっ!ほらほら!」


少し遅れて、影がそっと二人の後を追い始めた。


「……」


それを見た寧々も、ためらいながら一歩、また一歩と歩き出す。


遊びの輪は、ゆっくりと広がっていった。


――その光景を、はるか上空から見下ろす影があった。


黒く歪んだ霧のような存在が、山々の上を漂っている。


「……どこだ……」


憎悪に満ちた声が、風に溶ける。


「……どこにいる……」


祟面の気配が、空気を震わせた。


「あいつら……」


怒りが、形を持つ。


「……必ず……消し炭にしてくれる...........」


その叫びは、まだ誰にも届かない。


けれど――

確実に、迫っていた。

四国編も、少しずつ核心へと近づいてきました。

今回は、戦いよりも「日常」と「想い」に焦点を当てた回です。


守るものがあるから、怒りが生まれ、

待ち続けた時間があるから、前へ進む決意が生まれる。

そんな話になっていれば幸いです。


次回もお楽しみに

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