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アルケオン  作者: れんP
日本編

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20/37

混累の闇、断罪の刻

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

地下へと続く通路の奥。

 空気は重く、湿り、どこか生臭さを帯びていた。


「……この奥が……」


 コトリが、低く呟く。


()()()()の隠れ家ですか?」


 彩葉(いろは)の声には、緊張がにじんでいた。


「そのようだな」


 村正(むらまさ)は周囲を警戒しながら頷く。


「気を引き締めていきましょう」


 陽菜(ひな)が銃を構える。


「う、うん!」


 レナも小さく息を吸い、覚悟を決めた。


 ――次の瞬間。


 村正が一歩前に出て、扉を勢いよく蹴り開けた。


「大人しくしろ!

 お前たちはもう終わりだ!」


 鋼鉄の扉が激しく壁にぶつかり、轟音が地下に響く。


「…………」


 室内は広く、異様な術式と器具が所狭しと並んでいた。

 そして中央に立つ、一人の男。


「フンッ」


 冷笑を浮かべ、男は振り返る。


「私を追い詰めたつもりか?……あまい!」


 男――安倍康晴(あべのやすはる)は、背後に垂れ下がる大きな布を掴み、一気に引き剥がした。


「コレを見よ!」


「……何、これ……」


 彩葉の声が、震える。


 そこにあったのは――

 歪に絡み合う肉体。

 人と妖怪の部位が無理矢理縫い合わされ、脈動する巨大な存在。


「これは、人間と捕らえた妖怪を混ぜた人工生命体!」


 康晴は恍惚とした表情で叫ぶ。


「その名も――混累(こんるい)キメラだ!!」


「……外道」


 (しおり)の声は、怒りを帯びていた。


「いくらでも言うがいい!」


 康晴は両腕を広げる。


「これから始まるのは蹂躙だ!!」


 混累キメラが、ゆっくりと動き出す。


 ――ギィィ……ァァ……。


 その体内から、か細い声が漏れた。


『た……すけ……て……』


『……いやだ……』


『……くるしい……』


「……っ!」


 彩葉は思わず耳を塞ぐ。


「魂が……叫んでいる……」


 陽菜が歯を食いしばる。


「行くぞ!」


 村正が前に出る。


「斬る!」


 鋭い一閃。

 だが、刃は異様な肉の壁に弾かれた。


「チッ……!」


 混累キメラが腕を振り上げ、地面を叩き割る。


「きゃっ!」


 レナがよろめく。


六花(ろっか)!」


「んーー!!」


 六花のシールドが展開され、衝撃を防ぐ。


「……ストラップ・ニードルバインド!」


 彩葉の拘束が絡みつく。


「……無駄だ!」


 康晴が叫ぶ。


 キメラの体が脈動し、拘束を引き千切る。


『やめて……』


『ころさないで……』


「……もう、終わらせる」


 コトリが静かに前へ出る。


 手をかざし、深く霊力を集中させる。


「……ッ!」


 空間が歪む。


 同時に、陽菜が銃を構えた。


「セイクリッドバレット!」


 神聖な光が、キメラの核へと撃ち込まれる。


「ァァァァァ――!!」


 叫び声が、重なり合って響いた。


「今じゃ!」


 栞が叫ぶ。


「妖術・百鬼鎮魂(ひゃっきちんこん)!」


 無数の霊光が、キメラを包み込む。


「ば、バカな!!」


 康晴が後ずさる。


 村正が最後に踏み込み、刃を深く突き立てた。


「終わりだ!」


 ――ドンッ。


 混累キメラの巨体が崩れ落ちる。


 室内に、静寂が戻った。


「……しまいじゃ」


 栞が呟く。


「大人しく、牢屋に入ることですね」


 陽菜が康晴を見据える。


「……」


 コトリが目を閉じる。


「……このキメラに取り込まれた魂たちは、無事に三途の川に向かったようです……」


「んー!んーー!!」


「……よかった……です……」


 (エイ)が、ほっと息を吐く。


「あぁ」


 (くろ)も頷いた。


「何か、しゃべることはあるか?」


 村正が康晴に問う。


「ぐぐぐ……」


 康晴は歯を噛みしめ、吐き捨てるように言った。


「霊鏡の妖怪どもに……安倍晴明が負けなければ……

 我ら子孫は迫害されずにすんだのに……」


 憎悪に歪んだ目で叫ぶ。


「あの女のせいで!

 我が一族は!!」


「……霊鏡(れいきょう)?」


 彩葉が首を傾げる。


「平安時代――」


 村正が静かに語る。


「あの霊鏡は、妖怪と、妖怪と共に暮らす者たちの隠れ里と呼ばれていた。

 今も……変わらんがな」


「そんなところが……」


 レナが驚いたように呟く。


「……コトリ、こいつどうやって運ぶ?」


「……もう、人を呼んであります。おそらく、そろそろ……」


 ――その時。


 遠くからサイレンの音が響いた。


「ほら……」


 コトリが言う。


「僕は、残党がいないか見てくるよ」


 陽菜が言い、踵を返す。


「あ、私も行きます!」


 レナが後を追った。


 ――しばらくして。


「怪異警官の皆さまと、お仲間の皆様。

 ご協力感謝します」


 現れた警察官が深く頭を下げる。


「安倍康晴は、指名手配していた容疑者です。

 ここは封鎖し、あとは我々が捜査します」


「……はい……お願いします」


「お疲れ様です」


 そう言って、警官たちは康晴を連行していった。


 次の日。


「皆さん……今回は、手助けありがとうございます」


 コトリが深く礼をする。


「ううん、いいんだよ」


 彩葉が笑う。


「これも、やることだから」


「……そうですか。

 あ……皆様は、これからどこに?」


「決めて……ないな……」


「どうする?」


「ふむ……」


「……行き先がお決まりでないなら」


 コトリが言った。


「四国に行ってみてはどうでしょう?

 ちょうど、我々もそこにいる者たちに話したいことがあるので」


「……四国……?」


「四国か〜……」


 彩葉がぱっと顔を上げる。


「うん!そこに行く!

 みんなはどう?」


「僕はかまわない」


「いろんな……楽しみがありそうだな」


「オレもだ!」


「……うん……」


「妾もじゃ」


「私も〜!」


「……わかりました。六花」


「ん?んーー!んー!」


 一同を包む光が、静かに広がる。


 次の目的地へ――

 新たな物語の地へ。


 彩葉たちは、転移していった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

これから交わる想いが、どんな未来を連れてくるのか——

引き続き、彼女たちの旅を見守っていただけたら嬉しいです。

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