天空城への進軍 ― 欺瞞の神の城
この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。
それは神話でも、空想でもない。
人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――
**守護者**と呼ばれる存在だ。
彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。
意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。
だが、生まれた瞬間から強いわけではない。
迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。
これは、
忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が
初めて世界と向き合い、
初めて誰かと並んで歩き出す物語。
戦うことだけが、守ることではない。
それでも――
守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。
神界の首都ユグドラシル。
オリュンポス神殿での会議を終えた彩葉たちは、すぐに出発の準備を整えていた。
目的地はただ一つ。
神界とヴァルハラを結ぶ道の上空に浮かぶ――
ロキの居城。
天空城。
神殿の外では、天使たちが巨大な飛行装置を準備していた。
白銀の翼のような形をした神界の戦艦。
神力によって浮遊するそれは、雲海の上を滑るように進む乗り物だった。
アテナが元気よく振り返る。
「よ~し!みんな準備いい?」
彩葉は深く息を吸った。
「はい」
「行きましょう」
その声には迷いがなかった。
全員が乗り込み、飛行装置がゆっくりと浮上する。
ゴォォォォ……
神力の風が吹き上がり、装置は雲の上へと昇っていく。
神界の空は澄みきっていた。
白い雲の海。
遠くには虹色の光の柱が立ち、神々の都市が点在している。
しかし、その先――
黒い雲の塊が見えた。
アテナが前方を指さす。
「見えた!」
「あれがそうだよ!」
彩葉は前を見る。
そこには――
巨大な城が浮かんでいた。
黒い石で作られた要塞。
雲を突き破る無数の塔。
雷のようなエネルギーが周囲を巡っている。
まるで神界に突き刺さる異物だった。
彩葉が静かに言う。
「あそこに……」
「行きましょう」
花火が元気よく拳を上げた。
「おー!」
李=芳乃が頷く。
「うむ」
「気を引き締めていこう」
村正が腕を組む。
「あぁ」
「そうだな」
陽菜が皆を見る。
「皆さん」
「慢心はしないように」
喰が牙を見せて笑う。
「わかってるぜぇ!」
「敵は強大だからな!」
影が小さく拳を握る。
「うん!」
「……頑張る」
アビが胸を張る。
「任せてなの」
メデューサが真剣な表情で言う。
「誰も欠けないように」
ユキが静かに頷いた。
「……ん」
「もちろん」
ベアトリスが武器を確認する。
「準備はできてる」
ココア=モカ=コフィアが優雅に微笑む。
「えぇ」
「そうですわね」
フェトゥ=ハーネアネアが呟く。
「……決戦が近い」
ラキシアが楽しそうに笑った。
「あは♡」
「そうでなきゃ本気で行けないよね♡」
レナが大きく頷く。
「うん!」
マミがバスケットボールを軽く弾く。
ポン……ポン……
「……空気は十分入ってる」
「だから」
「必ず倒す」
フェルルが応援する。
「がんばるんだ」
栞が杖を握る。
「うむ」
「後方支援も攻撃も任せるのじゃ」
リリア=エジソンが苦笑する。
「でも」
「やっぱり緊張するね」
マイが真剣な表情で言う。
「はい……」
「でも、やらないといけません」
彩葉は皆を見た。
仲間たち。
共に戦ってきた仲間。
そして――
クララが城を睨みつけていた。
「あそこに……」
「宿敵が……」
その手には神器ミョルニル。
雷の力が静かに宿っている。
アテナが明るく声を上げた。
「よ~し!」
「みんなで頑張ろう!」
皆は力強く頷く。
天空城はどんどん近づいてくる。
黒い雲。
不気味な雷。
巨大な門。
そこには――
巨大な影がうごめいていた。
長く、巨大な体。
雲の中でとぐろを巻く大蛇。
ヨルムンガンド。
決戦はもう目の前だった。
――同時刻。
天空城。
玉座の間。
巨大な黒い玉座に、一人の神が座っていた。
長い黒髪。
細い目。
楽しそうな笑み。
欺瞞の神。
ロキ。
ロキはワイングラスを回しながら笑う。
「フッフッフッ……」
不気味な笑い。
「そろそろ」
「ゼウスの神殿に向かわせた部隊が動き出す頃か?」
ロキの目が細くなる。
「神界も」
「少しは慌てるだろう」
そして――
窓の外を見た。
遠くから近づく一隻の飛行装置。
ロキはゆっくりと立ち上がる。
楽しそうに笑いながら。
「……ほう?」
「来たか」
その瞳が妖しく光る。
「英雄」
ロキはくすくす笑う。
「ふふふっ」
「楽しませてくれよ」
天空城の上空。
決戦が――
始まろうとしていた。
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次回もお楽しみに




