神界への旅立ち
この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。
それは神話でも、空想でもない。
人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――
**守護者**と呼ばれる存在だ。
彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。
意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。
だが、生まれた瞬間から強いわけではない。
迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。
これは、
忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が
初めて世界と向き合い、
初めて誰かと並んで歩き出す物語。
戦うことだけが、守ることではない。
それでも――
守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。
楓の葉が静かに揺れていた。
メープルの国「カナダ」にある特殊空間――楓の円卓。
断界同盟幹部《赤眼の漆黒獣》モスマンとの戦いは終わり、守護者たちは次の時代を決める話をしていた。
サクラの言葉に、彩葉は目を見開く。
「え!わ、私が!?」
突然の話だった。
サクラは優しく微笑む。
「あなたは神の力に適応し、神装を使えると聞いています」
静かな声で続ける。
「それに断界同盟幹部をいくどとなく撃退している」
「その力を見越してお願いしたい」
彩葉は俯いた。
「……私で、いいんでしょうか?」
胸の奥で何かが揺れる。
「……私は……」
言葉を探す。
「私の存在理由が守ることである気がします……」
そして顔を上げる。
「それで世界を守れるのならしてみたいですが……」
震える声で言った。
「本当に!私でいいんでしょうか?」
サクラは即答した。
「うん!」
迷いのない声だった。
「彩葉だから頼んでるの」
その言葉に、彩葉の心が静かに決まる。
深く息を吸った。
「……わ、私で……」
拳を握る。
「役に立てるのなら……」
そして、力強く言った。
「やります!」
円卓にいた守護者たちが静かに頷いた。
サクラが一歩前へ出る。
「うん……」
「それじゃあ」
ゆっくり手を上げる。
「あなたを代表に任命します」
そして少し申し訳なさそうに言った。
「少し苦しいけど我慢してね」
その瞬間だった。
「ッ!?……」
彩葉の体に強烈な光が流れ込む。
膨大な力。
まるで洪水のようなエネルギー。
(なにこれ……)
身体が震える。
空気が震える。
世界の力が流れ込んでくる。
(力が……流れ込んでくる!)
サクラが静かに言う。
「これは試練でもあるよ」
「この力に耐えることができたなら」
優しく続けた。
「あなたは私の半身になりえる」
視界が白く染まる。
意識が遠のく。
彩葉の身体がふらついた。
そして――
意識はそこで途絶えた。
◇ ◇ ◇
「……う……」
「ぅぅ……」
彩葉はゆっくり目を開けた。
視界に映ったのは――
見慣れた顔だった。
「おはよ」
サクラが微笑む。
「彩葉〜!」
レナが飛びついてきた。
彩葉は驚いた。
「え!みんな!」
周囲を見回す。
しかし。
「……あれ?」
「他の国シリーズの守護者さんたちは?」
村正が肩をすくめる。
「あの人達なら先に帰ったよ」
「自国の強化をするって、だいたいの守護者が言ってたな」
陽菜が心配そうに顔を覗く。
「彩葉?」
「調子はどうですか?」
彩葉は手を握った。
体の奥から力が溢れている。
「……なんだか」
「力が湧いてくる感じ……」
サクラが嬉しそうに笑う。
「うん!成功だね」
「君は私の力に耐え、それを吸収した」
「やっぱり見込んだ通り」
栞が感心したように言う。
「たしかに」
「前の倍以上はオーラが強固になっているのじゃ」
花火が目を輝かせた。
「すご〜い!」
彩葉は皆を見回す。
「……皆さんも」
「なんだか変わったような?」
李=芳乃が頷く。
「あぁ」
「ついでにとサクラが強くしてくださったんだ」
彩葉が微笑む。
「そうなんだね……」
そして頷いた。
「うん!」
「みんなたくましくなってる」
ユキが静かに言う。
「ん、彩葉もね」
メデューサも続く。
「はい!」
その時、ベアトリスが腕を組んだ。
「……それで」
「どうやって神界に行くの?」
ココア=モカ=コフィアが言う。
「そういえば、そうですわね」
サクラは空を見上げた。
「うん!」
「多分そろそろ……」
その時だった。
「お〜い!」
空から声が響いた。
全員が空を見上げる。
巨大な白い飛行船のような乗り物が降りてきていた。
フェトゥ=ハーネアネアが驚く。
「天使!?」
ラキシアが笑う。
「あは♡」
「文字通り“おむかえ”が来たみたい♡」
マミが苦笑する。
「……それはちょっと……」
リリア=エジソンが肩をすくめる。
「あはは〜……」
「ま、まぁ、アレで行くんだね」
マイが目を丸くする。
「せ、盛大です……」
天使が降りてきて言った。
「英雄様、御一行ですね?」
「どうぞお乗りください!」
アビが上を見上げる。
「……でっかい乗り物なの」
フェルルが頷く。
「そうだね」
「でも全員乗れそうだね」
影が静かに言う。
「はい……そうです、ね……」
喰が笑う。
「さっそく乗ろうぜぇ!」
彩葉は仲間たちを見る。
そして笑った。
「うん!」
「行こう!」
全員が乗り込む。
天使が操縦席に立つ。
「では!」
「神界に向かいます!」
「飛行中落ちないように気をつけてくださいね」
そして。
「それじゃあ!」
「出発です!」
巨大な天の乗り物が空へ舞い上がる。
雲を突き抜け。
天へ。
神々の世界へ。
こうして――
英雄たちを乗せた乗り物は神界へと出発した。
◇ ◇ ◇
神界。
オリュンポスの神殿。
巨大な神殿の中央で、一人の神が空を見上げていた。
ゼウス。
主神である。
「……英雄を乗せた乗り物が出発したようだ……」
背後から声がした。
「主神、なにか心配事?」
ゼウスが振り向く。
「ヘスティアか」
暖かな炎の女神。
ヘスティアだった。
ゼウスは静かに言う。
「いや……」
「断界同盟の主犯と思われる神」
低く呟く。
「ロキ」
ヘスティアが少し考える。
「たしかに……」
「最近は神界でも目撃情報がありますが……」
微笑んだ。
「主神が心配なさらなくても……」
ゼウスは首を振る。
「……慢心しすぎてはいけない」
重い声で言う。
「警戒しないわけにはいかぬ」
ヘスティアは少し空を見上げた。
「……まぁ」
「無事に完了すればいいですが……」
ゼウスは静かに頷く。
「うむ……」
遠い空。
そこには――
神界へ向かう光が見えていた。
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次回もお楽しみに




