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アルケオン  作者: れんP
日本編

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17/35

守れなかった想いと、新たな仲間

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

潮風が、伊勢の街をやさしく撫でていた。


 結界石の騒動から少し離れ、彩葉たちは海辺から街中へと戻ってきていた。

 戦闘の余韻はまだ体に残っているが、同時にどこか張りつめていた気配も、少しずつほどけていく。


「ここで一度……別行動、ですね」


 コトリが静かに告げる。


「えぇ。

 我々は怪異警官として準備を整えます。

 皆さんも……装備や情報収集を」


「合流は……」


「この場所です」


 六花(ろっか)が地図を指差す。


「んー! んー!」


「了解」


 村正(むらまさ)が短く答えた。


 こうして、彩葉(いろは)たちは怪異警官の二人――コトリと六花、そして大鮑之命と一度別れ、それぞれ準備と調査、そして束の間の“日常”を過ごすことになった。


 伊勢の街は、思っていた以上に賑やかだった。


「わ……人、いっぱい……」


 彩葉が目を丸くする。


「伊勢は観光地でもあるからね」


 陽菜(ひな)は周囲を見渡しながら言った。


「伊勢神宮、赤福、海産物……

 人の想いが集まりやすい場所なんだ」


「ふむ……」


 (しおり)は腕を組む。


「想いが集まれば、守護者も妖怪も生まれやすい。

 結界が重要になるのも道理じゃな」


「でも……」


 (くろ)が屋台を見て目を輝かせる。


「腹減った」


「……うん....」


 (エイ)が小さく頷いた。


「戦いの前に……腹ごしらえ、か」


 村正が苦笑する。


「まぁ……悪くはねぇな」


 こうして一行は、束の間の休息と準備を兼ねて、伊勢の街を歩くことになった。


 赤福の甘い匂い。

 焼き魚の香ばしさ。

 人々の笑い声。


 戦いの最中には決して感じられない、穏やかな空気。


「……不思議だね」


 彩葉がぽつりと呟く。


「こんなに普通なのに……

 さっきまで、結界が壊されそうだったなんて」


「だからこそ、守る価値がある」


 陽菜は真っ直ぐ前を見ながら言った。


「守護者は……

 “当たり前”を守る存在だから」


 彩葉は、その言葉を胸に刻んだ。


 しばらくして。


「そろそろ……合流場所に向かうか」


 村正が言った。


「準備も整った」


「うん」


 彩葉たちは歩き出す。


 ――その時だった。


 背後から、わずかな“違和感”。


 村正と陽菜が、同時に立ち止まる。


「……お前は誰だ?」


 村正が低く問いかける。


「……撃ちますよ?」


 陽菜の銃口が、迷いなく向けられた。


「ひっ……!」


 声が震える。


「え、えっと……!」


 そこに立っていたのは、一人の少女だった。


 オレンジ色の、ぶかぶかのパーカー。

 深く被ったフードには、触角のように長いものが二本、垂れ下がっている。


 小柄で、どこか怯えたような表情。


「わ、私は……レナ!」


 少女は必死に声を絞り出す。


「エピペンの……付喪神(つくもがみ)、レナです!」


「付喪神……?」


 彩葉が小さく声を上げる。


「そうだよ」


 陽菜が銃を下ろしつつ説明する。


「付喪神は、長年使われてきた“もの”に命が宿った妖怪」


「へぇ〜……」


 彩葉は感心したようにレナを見る。


「……あ、あの!」


 レナは一歩前に出た。


「わ、私も……連れて行ってください!」


「……なに?」


 村正が眉をひそめる。


「私……役に立ちたいのです……」


 レナの声は、次第に強さを帯びていく。


「私の……持ち主は、もういません……」


 一瞬、空気が重くなる。


「ですから……」


 レナは拳を握りしめた。


「私は……守れなかった……

 あの子のためにも、頑張らないといけないのです!」


 涙を堪えるように、必死に言葉を続ける。


「だから!

 私も……仲間に入れてください!」


 沈黙。


 風が、レナのフードを揺らした。


「……どうするのじゃ?」


 栞が彩葉を見る。


「怪しいが……」


 村正が腕を組む。


「悪いやつではなさそうだ」


 彩葉は、少しだけ目を伏せ、そして――決意したように顔を上げた。


「……私は構わない」


 ゆっくりと、レナの前に歩み出す。


「レナちゃん」


 彩葉は手を伸ばした。


「私たちは……これから、戦いに行くの」


「それでも……来る?」


 一瞬の迷い。


 けれど――。


「……はいっ!」


 レナは、はっきりと答えた。


 そして、彩葉の手を、強く握り返す。


「……また、にぎやかになりそうだな」


 喰が笑う。


「……」


 影は静かに頷いた。


「よし」


 村正が前を向く。


「合流場所に急ぐぞ」


「おー!」


 それぞれの想いを胸に。


 守れなかった過去を背負う者。

 守るために歩む者。


 新たな仲間を迎えた彩葉たちは、再び歩き出す。


 ――三重大結界を巡る戦いは、まだ終わっていない。

読者の皆様も読んでくれてありがとうございます。


現実の景色と神秘が交わる舞台で、彩葉や陽菜、村正、そして新たに加わったレナたちが、それぞれの想いを胸に動き回る姿を描けたことが、私にとって何よりの喜びです。


キャラクターたちは、守るべきもののために必死に戦い、笑い、時には戸惑いながらも前に進んでいきます。その小さな勇気や絆が、神秘と日常が混ざる世界を鮮やかに彩ってくれる。読者の皆さんにも、その一瞬一瞬を感じ取ってもらえたなら幸いです。


日本編はまだ続きます。次もどうぞ、彼らの旅を見守ってください。

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