楓の大樹に集う守護者たち
この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。
それは神話でも、空想でもない。
人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――
**守護者**と呼ばれる存在だ。
彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。
意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。
だが、生まれた瞬間から強いわけではない。
迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。
これは、
忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が
初めて世界と向き合い、
初めて誰かと並んで歩き出す物語。
戦うことだけが、守ることではない。
それでも――
守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。
彩葉たちはメープルの国「カナダ」の特殊空間に来ていた。
彩葉の仲間たちは守護者たちの圧倒的なオーラに潰されないよう、離れた場所から巨大端末で会議を見守ることになった。
そして彩葉は――
会議場所に集まった守護者たちと共に、他の守護者の到着を待っていた。
巨大な楓の木の下。
円卓の前で、彩葉は少し落ち着かない様子で立っている。
「……」
ラーレがそれに気づき、笑った。
「何だ? 緊張してるのか?」
「はい……」
彩葉は正直に頷く。
ラーレは豪快に笑った。
「ハハハッ! 緊張するこたぁねぇよ!」
「気楽に行けばいい」
アカンサスも静かに続ける。
「ラーレの言うとおり。あまり気にしなくていい」
「会議と言っても、ただのお茶会おままごと」
「話すことなんて、いつも近況報告とただのおしゃべり」
「そ、そうなんですか?」
彩葉は少し驚く。
マツリカがふわっと笑う。
「そぉだぁよぉ〜」
「ねててもいいんだぁよぉ〜」
その時――
「おや、ヨーロッパ組はそろいましたか」
サトウカエデが視線を向ける。
そこに数人の守護者が歩いてきた。
「イギリスの守護者『ロゼッタ』! 到着デース!」
ロゼッタが元気よく手を振る。
「……おぉ! 彩葉デース!」
「お久しぶりデース!」
「うん! 久しぶり!」
その隣で、ビアンカ=ヒナギクが穏やかに微笑む。
「うん、イタリアを出てから……いつぶりだろう」
「少し成長したんじゃない?」
「そ、そうかな?」
「あぁ! そうだぜ」
ヤグルマギクが元気よく言う。
「前より強くなってる」
オレンジリリーが少し俯きながら言う。
「はい……うらやましい……です」
「私はあまり強くなれなくて……」
エーデルワイスが優しく言う。
「オレンジリリーは良く頑張ってる方だから、大丈夫」
「少しずつやればいい」
「はい!」
その時――
「わぁ〜! わぁ〜!」
小柄な少女が目を輝かせながら駆け寄ってきた。
「英雄です! 英雄です!」
ヤグルマギクが苦笑する。
「あぁ、紹介しよう」
「こいつはスウェーデンの守護者『イトシャジン』だ」
「こんにちは! 英雄!」
「うん! こんにちは!」
サトウカエデが説明する。
「イトシャジンはいろんな国で不発弾を処理してるのよ」
「そうなんだ」
イトシャジンが嬉しそうに言う。
「はい! 火薬は美味しいので!」
彩葉は少し驚いた。
「そうなんだ……口とかにくっついちゃわない?」
「ううん! 大丈夫だよ!」
「水で流すから!」
「そうなんだ」
ムクゲが空を見上げる。
「……遅いですね」
ヤグルマギクが腕を組む。
「後処理とかしてんじゃないか?」
サトウカエデが穏やかに答える。
「まぁ、サクラが会議場所に集合と言ったので」
「何もないと思いますよ」
その時。
「サクラたちならもうすぐ戻ってくると思いますよ」
白いスイレンを頭に乗せた少女が言った。
「……おや?」
「英雄、こんにちは」
「シャプラ〜」
後ろからゆったりした声がする。
「もうちょっとゆっくり〜」
「お姉ちゃんも少しシャキッと!」
サトウカエデが彩葉に説明する。
「あの子はインドの守護者『ロータス』の妹」
「バングラデシュの守護者『シャプラ』よ」
「はい、私はシャプラです」
「久しぶり〜彩葉〜」
「うん、ロータス」
彩葉は周囲を見回す。
「……なかなか増えてきましたね」
サトウカエデがくすっと笑う。
「もっと増えるわよ〜?」
すると――
「あ! 彩葉だー!」
「久しぶりですね」
「私は少ししか話してませんが……久しぶりですね」
「まぁ、お久しぶり」
ロゼ・シュジャー、ムトゥリヴ、スイレン、カラーがやってくる。
彩葉はカラーを見て思う。
(あいかわらずすっごく綺麗な人)
その時。
低く力強い声が響いた。
「お前が英雄か!」
振り向くと――
ライオンのようなマフラーを巻いた女性が立っていた。
「たしかに強そうだ」
カラーが呆れたように言う。
「キング? いきなり失礼ですよ?」
女性は豪快に笑った。
「ハハハッ! すまねぇな!」
「俺は『キングプロテア』!」
「南アフリカの守護者だ!」
「こんにちは」
「あぁ!」
次々と集まる世界の守護者。
楓の大樹の下は、すでにかなり賑やかになっていた。
サトウカエデが軽く手を叩く。
「……もう時間がかかりそうなので」
「少しお話をしましょう?」
「臨時で私が指揮を取りますので」
ムクゲも頷く。
「うん、このまま立ち話もなんだし」
守護者たちは円卓の席へ向かい始めた。
そして――
世界守護者会議が、静かに始まろうとしていた。
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