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アルケオン  作者: れんP
北米編

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157/182

白面の誘拐者 ― 子供を狙う六指

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

 監視領域の夜。


 焚き火の火は小さく、崩れたビルの影が地面に歪んでいる。


 彩葉(いろは)たちは交代で見張りを立てながら、束の間の休息を取っていた。


 そのすぐ側――


 音もなく、気配もなく。


 “それ”は立っていた。


 異様に背が高い。


 細い身体。


 白い顔。


 黒いスーツ。


 月光に照らされ、その顔がぬらりと浮かび上がる。


「……子供、拐う……子供見つけた」


 掠れた声が、空気を震わせる。


 長い腕が、ゆっくりと伸びる。


 その先には――影。


 小柄な(エイ)の背後へ、六本指の手が忍び寄る。


 その瞬間。


「っ!」


 ベアトリスが跳ねるように動いた。


 銀のナイフが月光を弾き、伸びた手へ突き刺さる。


 ザクリ、と嫌な音が響いた。


「何だ!」


 村正(むらまさ)が立ち上がる。


 謎の男は一瞬止まり、ゆっくりと腕を引いた。


 刺されたはずの手から血は流れない。


 だが、ヒビのような亀裂が皮膚に走る。


「失敗……次はやる」


 淡々とした声。


「……あれは?」


 (しおり)が目を細める。


 月明かりが、その全貌を暴いた。


 何も描かれていない白い面。


 だがよく見れば、そこには細かなヒビが走っている。


 指は六本。


 靴は履いていない。


 スーツは布ではなく、肌と一体化しているかのように張り付いている。


 人ではない。


 明確に。


「チャイルド・テイカー」


 (リー)芳乃(よしの)が低く告げる。


「子どもを拐う怪異じゃ!」


 空気が凍る。


「つまり狙いは私と影?」


 ベアトリスが短く問う。


「そうなる」


 李=芳乃は頷いた。


 チャイルド・テイカーの首が、ぎこりと傾く。


「失敗 失敗 失敗 失敗 失敗 失敗……邪魔者……処す」


 声が重なり、増幅する。


 月光が揺らめいた。


「来ます! 気をつけてください!」


 陽菜(ひな)が叫ぶ。


 次の瞬間。


 怪異が消えた。


 否、速すぎて視認できない。


「右!」


 ユキの声。


 ガギィン!


 村正の刀が、突然現れた腕を弾く。


 六本の指が地面を掴み、コンクリートが砕け散る。


「速い……!」


 レナが距離を取る。


 チャイルド・テイカーは、ありえない角度で身体を折り曲げ、地面を這うように移動する。


 影の足首へ、再び手が伸びる。


「させない!」


 彩葉が飛び込み、ショルダーストラップブレードで腕を弾く。


 刃が触れた瞬間、異様な反発。


 硬い。


 肉ではない。


 陶器のような、石のような感触。


「邪魔者……処す」


 六指が同時に振り下ろされる。


 ベアトリスが影を抱え、後方へ跳ぶ。


 地面が抉れ、衝撃波が走る。


「銃撃!」


 陽菜がセイクリッドバレットを放つ。


 弾丸が面に直撃。


 ヒビがさらに広がる。


 だが、割れない。


 チャイルド・テイカーはゆらりと立ち上がる。


「子供……連れて帰る……」


「誰が行くか!」


 村正が踏み込む。


 刃が閃き、腕を一本斬り落とす。


 地面に落ちた腕は、黒い霧となって消える。


 だが。


 断面から、ゆっくりと新たな腕が再生し始めた。


「再生……!?」


 マイが息を呑む。


「厄介じゃな……!」


 栞が印を結ぶ。


 チャイルド・テイカーの動きが一瞬鈍る。


 その隙に、ユキの銃声が轟く。


 ドドドドドドッ!


 弾丸が胸部を削る。


 だが怪異は止まらない。


 ヒビの面が、ぎしりと軋む。


「邪魔者……排除……」


 空気が一段と冷えた。


 月が雲に隠れる。


 闇が濃くなる。


 その闇の中で、六本の指がゆらりと広がった。


 狙いは、子ども。


 ベアトリスと影。


 監視領域の夜。


 それは静寂ではなく――


 狩りの時間だった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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