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アルケオン  作者: れんP
北米編

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155/182

監視領域への選択 ― 北へ向かう覚悟

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

 太陽の国メキシコ。


 メキシコシティの朝は、ゆっくりと始まった。


 高層ビルの隙間から差し込む光が、街を黄金色に染める。遠くでクラクションが鳴り、屋台の準備をする人々の声が響く。昨夜の賑わいが嘘のように、朝の空気は澄んでいた。


 宿の窓辺に立つ彩葉は、北の方角を見つめていた。


「……監視領域」


 小さく呟く。


 無法地帯。


 怪異や妖怪、様々な存在が入り乱れ、秩序がほとんど機能していない場所。


 人間も、妖怪も、どちらも傷を負った戦争の名残。


 そこを通るかどうか。


 それが、今の選択だった。


 


「まだ迷ってる?」


 レナが隣に立つ。


「うん……ちょっとだけ」


 彩葉(いろは)は正直に答えた。


「危ないんだよね?」


「危なくないとは言えんな」


 村正(むらまさ)が腕を組む。


「だが、通れないわけではない。実力があればな」


 


「実力なら、あるんじゃない?」


 花火(はなび)がにこっと笑う。


「昨日だって冥府を救ったんだし!」


 


「でも無法地帯って……ルールがないんだよね……?」


 マイが不安そうに言う。


「そうじゃな」


 (しおり)が静かに頷く。


「守護者の影響も薄い。力がものを言う世界じゃ」


 


「……力がものを言うなら」


 陽菜(ひな)が銃を軽く持ち上げる。


「私たちの出番ですよ」


 


「でも」


 ユキが小さく言う。


「戦いになる可能性、高いよね」


 


 部屋の空気が、少しだけ重くなる。


 


 彩葉は振り返った。


 仲間たちの顔を見る。


 不安もある。


 覚悟もある。


 そして――信頼がある。


 


「遠回りはできる?」


 彩葉が尋ねる。


 


「できなくはないが、かなり時間がかかる」


 李=芳乃が答える。


「補給や滞在の問題も出るだろう」


 


「それに」


 ココア=モカ=コフィアが続ける。


「監視領域を避け続けるのは、いずれ限界が来ますわ」


 


「避けてばかりも、性に合わんしな」


 村正が笑う。


 


「彩葉はどうしたい?」


 レナが真っ直ぐに問う。


 


 少しだけ沈黙。


 


 窓の外では、朝日が完全に昇りきった。


 


 彩葉は、ゆっくりと息を吸う。


 


「……通る」


 


 はっきりと言った。


 


「危ないかもしれない。でも」


 


 一歩前に出る。


 


「無法地帯だからって、放っておくのも違う気がする」


 


「何があるのか、自分の目で見たい」


 


「それに」


 


 微笑む。


 


「みんながいるから」


 


 レナが笑い返す。


「うん」


 


「あは♡ やっぱりそうなるよね♡」


 ラキシアが楽しそうに言う。


 


「決まりじゃな」


 栞が頷く。


 


「準備はしておこう」


 陽菜が淡々と言う。


 


「弾薬確認する」


 ユキがケースを開く。


 


「物資も整えておきましょう」


 ベアトリスが荷物を整理する。


 


 フェルルが胸を張る。


「監視領域でもマスコットは必要だからね!」


 


「役に立つの?」


 マミがぼそっと言う。


 


「……たぶん」


 


 小さな笑いが広がる。


 


 だが、その奥には確かな緊張があった。


 


 監視領域。


 


 戦争の傷跡。


 


 守護者アース――サクラの暴威が刻まれた地。


 


 そこは、まだ終わっていない場所。


 


 彩葉は最後にもう一度、北を見る。


 


「行こう」


 


 その一言で、全員が動き出す。


 


 太陽の国メキシコ。


 


 メキシコシティを背に。


 


 彩葉たちは、監視領域へ向かって歩き出した。


 


 選んだのは、危険な道。


 


 だがそれは――


 


 進むと決めた者の道だった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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