再臨の鎌と冥府の決戦
この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。
それは神話でも、空想でもない。
人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――
**守護者**と呼ばれる存在だ。
彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。
意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。
だが、生まれた瞬間から強いわけではない。
迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。
これは、
忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が
初めて世界と向き合い、
初めて誰かと並んで歩き出す物語。
戦うことだけが、守ることではない。
それでも――
守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。
冥府ミクトランの空が、赤黒く揺らめく。
追放された元幹部――グリム・レヴナントは、巨大な鎌を掲げ、低く嗤った。
「クククッ! ブラッドデスサイズ・クロススラッシュ!」
血の軌跡を描く十字の斬撃が、空間ごと引き裂くように迫る。
「陽光・満日輪!!!」
村正の刃が太陽のごとく輝き、円環の光が斬撃を受け止めた。衝突の瞬間、閃光が冥府を白く染める。
「ぬぅっ!?」
押し切られぬことに、グリム・レヴナントの声がわずかに揺らぐ。
「狙うよ! セイクリッドバレット!」
陽菜の銃声が響く。聖なる弾丸が一直線に飛び、グリム・レヴナントの頭部へ命中――だが。
「ぐっ!……ぬぅぅ……重いな……」
仮面の奥で赤い光が揺れた。
「頭で銃弾を耐えた!?」
陽菜の驚愕。弾丸はめり込みながらも、致命には至らない。
「ククッ! お前たち!」
合図と同時に、周囲の死神たちがざわめく。
「キキキキッ!」
「MG42……火を吹け」
ユキの銃が唸りを上げる。
ドドドドドドドドドッ!!!
弾幕が黒衣を穿ち、死神たちが霧散していく。
「ぬぅ……流石に雑魚だけじゃ相手にもならんか……」
グリム・レヴナントは低く唸る。
「……カルタ『人魚姫』! 泡になれ!」
メルの術式が発動し、グリム・レヴナントの身体を泡が包む。霊体が溶けるはずの呪い。
「グッ!……何だこれは!? ぬぅぅ……ハァッ!!!」
黒い衝撃波が弾け、泡は霧散した。
「!?」
「嘘!? メルのカルタ呪術式が弾かれた!?」
ハーメルンが目を見開く。
「……さすが元幹部……相当強いですね。身体も相当硬そうです……ハーメルンの洗脳も私の力もきかないでしょう」
「えぇ!?」
フェイトの冷静な分析が、場の緊張を高める。
その頃、前線では。
「アサシン・ブレンドスラッシュ!」
ココア=モカ=コフィアの斬撃が閃く。
「ブラッティデススラッシャー」
金属が連続してぶつかり合う。キンッ、キンッ、と激しい火花。
「ハハハッ、受けてばかりか? 攻撃せねば意味がないぞ?」
「問題ありませんわ」
「なに?」
「クイックブレードスタンプ……」
ベアトリスが足元へ斬撃を叩き込む。
「スターストライク……!」
フェトゥ=ハーネアネアの星光が上空から落ちる。
「ぬ、ぬぅ……小癪なぁ……!」
上下からの圧迫。
「このまま押しつぶす……!」
「ぬぅっ……! ダークネスプレス!」
闇が爆ぜ、重圧が周囲ごと押し潰す。ベアトリスとフェトゥは間一髪で回避。
「……避けたか……」
黒衣は裂け、霊力が漏れ出している。
「もうぼろぼろじゃん……諦めたら?」
リリア=エジソンが肩をすくめる。
「ハハハッ……バカを言うな。私は強くならねばならぬ……こんな……ところ……で」
なおも鎌を握るその執念。
「終わりね……」
フェイトが静かに告げる。
グリムの身体が霧へ崩れ始める。
「まだだ……私は……!」
霧が逃げようとする。
その前に。
彩葉が踏み出した。
「私はすべてを守り記録する...だから!」
グリムが鎌を振り抜く。
「ッ!」
衝撃波が地を裂き、彩葉が吹き飛ばされる。
「彩葉!」
地面に叩きつけられ、呼吸が止まる。
グリムが近づく。
「守る? 記録する? それで何になる」
鎌が振り下ろされる、その直前。
彩葉が立ち上がる。
「……あなたも、消えたくなかったんでしょ」
「メモリア・アーカイヴ」
記憶が流れ込む。
冷たい会議室。
追放宣告。
背を向ける幹部たち。
「力に溺れた者に、鎌を預けるわけにはいかない」
一人、取り残されるグリム。
「……私は、間違っていない」
孤独。
焦燥。
誰にも認められなかった日々。
彩葉は静かに言う。
「でも、あなたはここにいた」
「だから、記録する」
グリムの声が微かに響く。
「……記録、されるのか……私も……」
霧は、静かに消えた。
「霧になって消えちゃった……」
影が呟く。
「これで救われたのか?」
喰が周囲を見回す。
「えぇ、救われた……皆様……感謝する……」
穏やかな声が響いた。
振り向けば、白い装束の死神が立っている。
「あなたは?」
「この冥界の死神――ショロトルだよ」
フェイトが説明する。
「仲間の方の死神?」
「まぁ、そんなところ」
ショロトルは柔らかく微笑んだ。
「ねぇ? 今頃だけど私達部外者だけどいいの?」
ラキシアが首を傾げる。
「うん、いい。救われたのなら……」
「なるほど♡」
「外まで送ります」
「ありがとう……」
レナが小さく頭を下げた。
しばらく歩き、彩葉たちは再び地上へと続く出口へ辿り着く。
「わーい外だ~!」
花火が両手を広げる。
「またいつでも来て……自分もミクトランの主『ミクトランテクートリ』も歓迎する」
「うん」
彩葉は力強く頷いた。
「うん、今日も平和が守られた」
フェルルが胸を張る。
「あは♡ でも、何もしてなくない?♡」
「わ、私はマスコットだから」
「自分で言った」
「なの」
「……」
フェルルが沈黙する。
その様子を、フェイトたちは微笑ましそうに見つめていた。
冥府の危機は去り、魂は再び静寂を取り戻す。
だが、鎌の野望が完全に消えたのかは、まだ誰にもわからない。
ただ今は。
太陽の国の空が、穏やかに輝いていた。
ここまで読んでくれてありがとうございます
次回もお楽しみに




