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アルケオン  作者: れんP
北米編

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153/182

再臨の鎌と冥府の決戦

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

 冥府ミクトランの空が、赤黒く揺らめく。


 追放された元幹部――グリム・レヴナントは、巨大な鎌を掲げ、低く嗤った。


「クククッ! ブラッドデスサイズ・クロススラッシュ!」


 血の軌跡を描く十字の斬撃が、空間ごと引き裂くように迫る。


「陽光・満日輪!!!」


 村正(むらまさ)の刃が太陽のごとく輝き、円環の光が斬撃を受け止めた。衝突の瞬間、閃光が冥府を白く染める。


「ぬぅっ!?」


 押し切られぬことに、グリム・レヴナントの声がわずかに揺らぐ。


「狙うよ! セイクリッドバレット!」


 陽菜(ひな)の銃声が響く。聖なる弾丸が一直線に飛び、グリム・レヴナントの頭部へ命中――だが。


「ぐっ!……ぬぅぅ……重いな……」


 仮面の奥で赤い光が揺れた。


「頭で銃弾を耐えた!?」


 陽菜の驚愕。弾丸はめり込みながらも、致命には至らない。


「ククッ! お前たち!」


 合図と同時に、周囲の死神たちがざわめく。


「キキキキッ!」


「MG42……火を吹け」


 ユキの銃が唸りを上げる。


 ドドドドドドドドドッ!!!


 弾幕が黒衣を穿ち、死神たちが霧散していく。


「ぬぅ……流石に雑魚だけじゃ相手にもならんか……」


 グリム・レヴナントは低く唸る。


「……カルタ『人魚姫』! 泡になれ!」


 メルの術式が発動し、グリム・レヴナントの身体を泡が包む。霊体が溶けるはずの呪い。


「グッ!……何だこれは!? ぬぅぅ……ハァッ!!!」


 黒い衝撃波が弾け、泡は霧散した。


「!?」


「嘘!? メルのカルタ呪術式が弾かれた!?」


 ハーメルンが目を見開く。


「……さすが元幹部……相当強いですね。身体も相当硬そうです……ハーメルンの洗脳も私の力もきかないでしょう」


「えぇ!?」


 フェイトの冷静な分析が、場の緊張を高める。


 その頃、前線では。


「アサシン・ブレンドスラッシュ!」


 ココア=モカ=コフィアの斬撃が閃く。


「ブラッティデススラッシャー」


 金属が連続してぶつかり合う。キンッ、キンッ、と激しい火花。


「ハハハッ、受けてばかりか? 攻撃せねば意味がないぞ?」


「問題ありませんわ」


「なに?」


「クイックブレードスタンプ……」


 ベアトリスが足元へ斬撃を叩き込む。


「スターストライク……!」


 フェトゥ=ハーネアネアの星光が上空から落ちる。


「ぬ、ぬぅ……小癪なぁ……!」


 上下からの圧迫。


「このまま押しつぶす……!」


「ぬぅっ……! ダークネスプレス!」


 闇が爆ぜ、重圧が周囲ごと押し潰す。ベアトリスとフェトゥは間一髪で回避。


「……避けたか……」


 黒衣は裂け、霊力が漏れ出している。


「もうぼろぼろじゃん……諦めたら?」


 リリア=エジソンが肩をすくめる。


「ハハハッ……バカを言うな。私は強くならねばならぬ……こんな……ところ……で」


 なおも鎌を握るその執念。


「終わりね……」


 フェイトが静かに告げる。


 グリムの身体が霧へ崩れ始める。


「まだだ……私は……!」


霧が逃げようとする。


その前に。


彩葉(いろは)が踏み出した。


「私はすべてを守り記録する...だから!」


グリムが鎌を振り抜く。


「ッ!」


衝撃波が地を裂き、彩葉が吹き飛ばされる。


「彩葉!」


地面に叩きつけられ、呼吸が止まる。


グリムが近づく。


「守る? 記録する? それで何になる」


鎌が振り下ろされる、その直前。


彩葉が立ち上がる。


「……あなたも、消えたくなかったんでしょ」


「メモリア・アーカイヴ」


記憶が流れ込む。


冷たい会議室。

追放宣告。

背を向ける幹部たち。


「力に溺れた者に、鎌を預けるわけにはいかない」


一人、取り残されるグリム。


「……私は、間違っていない」


孤独。


焦燥。


誰にも認められなかった日々。


彩葉は静かに言う。


「でも、あなたはここにいた」


「だから、記録する」


グリムの声が微かに響く。


「……記録、されるのか……私も……」


霧は、静かに消えた。


「霧になって消えちゃった……」


 (エイ)が呟く。


「これで救われたのか?」


 (くろ)が周囲を見回す。


「えぇ、救われた……皆様……感謝する……」


 穏やかな声が響いた。


 振り向けば、白い装束の死神が立っている。


「あなたは?」


「この冥界の死神――ショロトルだよ」


 フェイトが説明する。


「仲間の方の死神?」


「まぁ、そんなところ」


 ショロトルは柔らかく微笑んだ。


「ねぇ? 今頃だけど私達部外者だけどいいの?」


 ラキシアが首を傾げる。


「うん、いい。救われたのなら……」


「なるほど♡」


「外まで送ります」


「ありがとう……」


 レナが小さく頭を下げた。


 しばらく歩き、彩葉たちは再び地上へと続く出口へ辿り着く。


「わーい外だ~!」


 花火が両手を広げる。


「またいつでも来て……自分もミクトランの主『ミクトランテクートリ』も歓迎する」


「うん」


 彩葉は力強く頷いた。


「うん、今日も平和が守られた」


 フェルルが胸を張る。


「あは♡ でも、何もしてなくない?♡」


「わ、私はマスコットだから」


「自分で言った」


「なの」


「……」


 フェルルが沈黙する。


 その様子を、フェイトたちは微笑ましそうに見つめていた。


 冥府の危機は去り、魂は再び静寂を取り戻す。


 だが、鎌の野望が完全に消えたのかは、まだ誰にもわからない。


 ただ今は。


 太陽の国の空が、穏やかに輝いていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます

次回もお楽しみに

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