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アルケオン  作者: れんP
北米編

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152/182

追放された鎌 ― 冥府を裂く野望

この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。

それは神話でも、空想でもない。

人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――

**守護者アルケオン**と呼ばれる存在だ。


彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。

意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。

だが、生まれた瞬間から強いわけではない。

迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。


これは、

忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が

初めて世界と向き合い、

初めて誰かと並んで歩き出す物語。


戦うことだけが、守ることではない。

それでも――

守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。

 太陽の国メキシコ。


 冥府ミクトラン。


 


 野良の死神たちとの戦いは、ひとまず終息していた。


 


 封印された者。


 浄化された者。


 鎌を落とし、崩れ落ちた黒衣。


 


 霊魂たちは、再び穏やかに漂い始めている。


 


 メルの作り出した理想郷の家は、すでにフェイトの掌の中で小さな影となり、静かに封じられていた。


 


「……これで、ひとまず片付いたかな?」


 


 花火(はなび)が辺りを見渡す。


 


「うん……今のところは……」


 


 レナが答える。


 


 だが。


 


 彩葉(いろは)は、違和感を拭えずにいた。


 


 胸の奥。


 


 ざわつく。


 


 風が止まった。


 


 魂の揺らぎが、ぴたりと止まる。


 


「……」


 


 陽菜(ひな)が銃を握り直す。


 


「来るよ」


 


 


 その瞬間。


 


 地面が軋んだ。


 


 冥府の大地に、亀裂が走る。


 


 そこから、黒い霧が立ち上る。


 


 


 重い。


 


 先ほどの野良死神とは比べものにならない、圧。


 


 


 フェイトの目が細まる。


 


「……この気配は」


 


 


 霧の中から。


 


 ゆっくりと。


 


 ひとつの影が現れた。


 


 


 長い黒衣。


 


 他の死神よりも一回り大きな体躯。


 


 背中には、禍々しい翼のような霊影。


 


 そして――


 


 巨大な鎌。


 


 


 その刃は、血のように赤黒く光っている。


 


 


「……ほう」


 


 低く、深い声。


 


 


「随分とやってくれたものだな」


 


 


 黒衣の奥。


 


 仮面の下で、紅い眼が光る。


 


 


「……あなたが」


 


 彩葉が一歩前へ出る。


 


「この野良の死神たちを操っていた人……?」


 


 


 影は、くつくつと笑った。


 


 


「操る、だと?」


 


 


「違うな」


 


 


 鎌を肩に担ぐ。


 


 


「奴らは、私のために働いていたのだ」


 


 


「私は――」


 


 


 一歩、踏み出す。


 


 その足音だけで、空気が震える。


 


 


「かつて“死神の会”の幹部であった者」


 


 


 フェイトの表情が変わった。


 


「……やはり」


 


 


「追放された身でな」


 


 


 低い笑い。


 


 


「だが」


 


 鎌の刃が、冥府の光を反射する。


 


 


「再び幹部の座に返り咲くためには」


 


 


「力が必要だ」


 


 


「魂だ」


 


 


 周囲の霊魂が震える。


 


 


「このミクトランは、宝の山だった」


 


 


「秩序に縛られ、回収されることなく漂う魂……」


 


 


「それらを刈り取り、力へと変える」


 


 


「そうすれば、私は再び頂点に立てる」


 


 


 鎌の切っ先が、彩葉たちへ向く。


 


 


「部下の死神どもは、私の復帰を信じて動いていた」


 


 


「忠実な駒よ」


 


 


 レナが眉をひそめる。


 


「……そんな理由で、魂を奪ったの?」


 


 


「理由?」


 


 


 元幹部は笑った。


 


 


「力を求めるのに、理由がいるか?」


 


 


 地面が震える。


 


 


 その背後。


 


 再び黒い影が立ち上る。


 


 


 先ほど倒したはずの野良死神たちの残滓が、集まり――


 


 


 歪んだ霊体となって、再構築されていく。


 


 


「……!」


 


 ユキが銃を構える。


 


 


「まだいる……!」


 


 


 元幹部の鎌が、ゆっくりと振り下ろされる。


 


 


「私の名は――」


 


 


 黒い霧が渦を巻く。


 


 


「グリム・レヴナント」


 


 


「追放された死神の会・元幹部」


 


 


「再臨のため、魂を喰らう者」


 


 


 その圧が、一気に解き放たれる。


 


 


 魂たちが悲鳴のように揺れた。


 


 


 彩葉は、歯を食いしばる。


 


 


(これが……本命)


 


 


 フェイトが低く言う。


 


 


「皆、警戒を」


 


「彼は先ほどの野良とは格が違う」


 


 


 グリム・レヴナントが、鎌を構える。


 


 


「さあ、英雄よ」


 


 


「私の再臨の礎となれ」


 


 


 黒い霧が爆ぜた。


 


 


 戦いの幕が――


 


 


 再び、上がろうとしていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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