潮の気配と神域への道
この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。
それは神話でも、空想でもない。
人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――
**守護者**と呼ばれる存在だ。
彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。
意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。
だが、生まれた瞬間から強いわけではない。
迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。
これは、
忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が
初めて世界と向き合い、
初めて誰かと並んで歩き出す物語。
戦うことだけが、守ることではない。
それでも――
守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。
「ん~~、楽しかったな~。色々あったけど」
夜が明け、旅の余韻が残る中で、彩葉は大きく伸びをした。
「ところで彩葉、次はどこに行きます?」
陽菜の問いに、彩葉は一瞬考え込む。
「あ、決めてない……どうしよう」
「そうだなぁ~……」
村正が腕を組んだ、その時だった。
「……ん? 手紙?」
「どうしました? 村正」
村正は、自分の鎧に挟まっていた一枚の紙を取り出し、目を走らせる。
「……猿夢からだ…………」
「なんて書いてあったんです?」
「――『三重県で陰陽師が伊勢神宮の結界を破壊しようと企んでいるらしい。現地に出動中の怪異警官のメンバーとともに解決してほしい』……だそうだ」
空気が、わずかに重くなる。
「……悪い……人……」
影が、ぽつりと呟く。
「アイツらが……」
喰も、眉をひそめた。
「どうする?」
村正の問いに、彩葉は迷わなかった。
「もちろん! 向かうよ!」
その言葉で、進む先は決まった。
――こうして次の目的地が定まると、彩葉たちは異空間移動列車に乗り、三重県へと向かった。
列車を降り、外に出た瞬間。
「ここが……三重県……」
「三重は初めてですね」
陽菜が周囲を見渡す。
「……海の匂い……が……します……」
影が、すうっと息を吸い込んだ。
「ここにも海があるのか~」
喰が感心したように言う。
「確か三重には、海女がおるんじゃったな」
栞の言葉に、影が首を傾げる。
「……海女?……」
「何だそれ?」
「海女とはな、潜水器具を使わず、素潜りで海に潜り、アワビやサザエ、海藻などを採る女性たちのことじゃ」
「……すごい……です……」
影の目が、尊敬の色を帯びる。
「海女を狙う、とても危険な妖怪もおる。それに、苦しい仕事でもある。
それでも続けてきたのが、この地じゃ。……これも歴史というやつじゃろう」
「このご時世でも、人を襲う妖怪がいるのか……」
喰が低く唸る。
「……きけんは……ない……んです……か?」
「もちろん危険はある。じゃが、それに備えるのが人の知恵じゃ。
それに、海産まれの守護者や、優しい妖怪たちの出番でもある」
「……なるほど……」
影は、静かに頷いた。
「さて、他のみんなが先に行ってしまう。急ぐぞ」
「……あ……はい……」
「お前たち~、待ってくれ~!」
喰の声を背に、彩葉たちは足を速める。
やがてバスに乗り込み、目的地へ――。
――伊勢神宮。
神々の気配が色濃く残るその地で、
彩葉たちは、また新たな“異変”と向き合うことになるのだった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
彩葉たちの旅は、**「自分は何者なのか」「何を守り、何を選ぶのか」**という問いを胸に進んできました。
守護者、妖怪、怪異、人間、そして神――
立場も生まれも違う存在たちが交わる中で、彩葉は少しずつ自分の力と役割を知り、仲間と呼べる存在を増やしてきました。
桜菊祭での出来事は、彩葉にとって大きな転機でした。
強大な敵、神の介入、そして神界への誘い。
それでも彩葉は、今いる場所、今そばにいる仲間を選び、前へ進みます。
そして物語は次の舞台――
伊勢神宮と三重の海へ。
そこには、人が守ってきた歴史と、神域を脅かす新たな陰謀が待っています。
影と喰、陽菜、栞、村正、そしてまだ見ぬ存在たち。
彼らとの関係もまた、彩葉を少しずつ変えていくでしょう。
この物語は、まだ旅の途中です。
彩葉が「バッグの守護者」として、どんな答えに辿り着くのか。
そして世界が、彼女に何を託すのか。
その続きを、また一緒に歩んでいただけたら嬉しいです。
――守護者の物語は、まだ終わりません。




