世界に刻まれた理由 ― 守護者の目覚め
この世界には、人の目に見える“異質な存在”がいる。
それは神話でも、空想でもない。
人の想いに触れ、時に人を守り、時に人を遠ざける――
**守護者**と呼ばれる存在だ。
彼らは人と同じ姿をしていながら、人ではない。
意思を持ち、感情を抱き、使命を背負って生きている。
だが、生まれた瞬間から強いわけではない。
迷い、怯え、悩みながら、自分の存在理由を探していく。
これは、
忘れられた物から生まれた、ひとりの守護者が
初めて世界と向き合い、
初めて誰かと並んで歩き出す物語。
戦うことだけが、守ることではない。
それでも――
守りたいと願った瞬間から、物語は始まる。
熱帯の国ブラジル――首都ブラジリア。
戦いは終わった。
断界同盟幹部、チュパウマノスは討たれ。
南米を覆っていた死と恐怖は、静かに霧散していった。
街はまだ完全には元に戻っていない。
だが――
空は青く。
風は優しく。
世界は、確かに息をしていた。
彩葉は、一人。
街の外れに立っていた。
コンクリートの都市の向こう。
広がる草原。
揺れる緑。
そして――
命。
小さな鳥が飛び立つ。
風が草を揺らす。
太陽が世界を照らす。
「……」
彩葉は、胸に手を当てた。
鼓動。
確かに、そこにある。
(私……)
思い出す。
生まれた時のこと。
何も知らなかった自分。
戦い。
出会い。
別れ。
守りたいと思った瞬間。
メモリア・アーカイヴ。
あの力。
相手の記憶を封印する力。
(どうして……)
(私は、この力を持ってるんだろう……)
世界の風が吹く。
その瞬間。
頭の奥に――
声なき声が、響いた気がした。
――記録せよ。
――守れ。
――繋げ。
「……え?」
彩葉は目を見開く。
頭の中に浮かぶ光景。
数えきれない記憶。
笑顔。
涙。
願い。
後悔。
世界の記憶。
「……あ……」
理解した。
自分は――
守護者。
だが、それだけじゃない。
守護者であり。
記録者。
世界の記憶を守り。
奪われるはずだった未来を繋ぎ止める存在。
忘れ去られるはずだった想いを。
消されるはずだった魂を。
消えないようにするための存在。
「……私……」
空を見上げる。
太陽が眩しい。
「私は……」
言葉が、自然と零れる。
「守るために……いるんだ……」
命を。
記憶を。
絆を。
この世界が。
この世界で生きた証が。
消えてしまわないように。
それが――
自分の存在理由。
「……」
彩葉は、少しだけ笑った。
迷いは、もうなかった。
背後から足音。
「彩葉」
アンナだった。
「……うん!」
彩葉は振り返り、笑顔で答えた。
「ありがとう!」
アンナは少し首を傾げる。
「ん、別にいいよ」
そして尋ねる。
「そうだ、次はどうするの?」
彩葉は少し考え――
「あ、ミクトランで野良の死神が不法に魂を回収してるんでしょ?」
「それをなんとかしたいかな」
アンナは頷く。
「ん、だったら、メキシコのメキシコシティに行くといい」
「あそこに、ミクトランの入口があるから」
「うん!ありがとう!」
彩葉は振り向く。
「アビ!メキシコまでお願い!」
「了解なの!」
アビが元気よく答える。
「あは♡噂に聞くエアーライドって技で飛ぶんだね。楽しみ♡」
ラキシアが笑う。
「増えてきたけど大丈夫そう?」
レナが心配そうに聞く。
「問題ないなの」
アビは胸を張る。
「それじゃあみんなで手をつなぐなの」
「うん!」
全員が円になる。
手を取り合う。
「私は幽霊だけど繋ぐ必要あるのかな?」
フェトゥが呟く。
少しの笑いが生まれる。
その中心で。
彩葉は空を見上げた。
(守る)
(全部)
(この世界の記憶を)
そして。
「エアーライド……なの……」
アビの力が発動する。
風が集まる。
重力が消える。
身体が浮く。
空へ。
南米を越え。
次なる地へ――
メキシコ。
死者の国の入口。
ミクトラン。
新たな物語が始まる。
――北米編、開幕。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




